出張DASH村

長崎県南島原市

島原半島は、約430万年前の海底火山の噴火から始まり、その後の火山活動で成長し、ほぼ中心にそびえる普賢岳(1,359m)から、なだらかな斜面で形成される地形。
→火山砕屑物が長年かけて形成した水はけの良いなだらかな斜面が広がり、その斜面にそって石垣の段々畑が作られている。

石垣について

  • 火山活動により出来た島原半島は、石がそこら中で手に入った為、昔から石垣の技術が発達していた。
  • 天草・島原の乱で人は減り、一時、土地が乱れるも残った人々が街を復興させようと新たに整備し、整った圃場が増えた。

お世話になった方

綾部誠さん

中学卒業とともに農業の道に進んだが、幼い頃に父を亡くしているので、教えてくれる人がおらず、周りの農家さんの見よう見まねで農業を学んだ。
そして、まだ珍しかったアスパラガスにいち早く目をつけ、栽培し始めた。
元々、南島原市は粘土質で固い土壌なので、アスパラガスの栽培に向かない場所だったが、それを手で耕す事で土壌をやわらかく保ち、アスパラガスの産地にした。
その地道な努力から、収量日本一にもなり、近隣のアスパラ農家さんの師匠的存在に。

綾部諏和子さん

誠さんの奥さん。
お二人で26棟のハウスを所有しているが、諏和子さんはその半分を担当している。
ハウスを分ける事でお互いライバル関係を築き、いいアスパラ作りを目指している。

宮本禎司さん

JA島原雲仙でアスパラの販売を担当。3Lのアスパラガスから王様アスパラを認定している。

アスパラガス

  • アスパラガスの名は、「たくさん分かれる」とか「激しく裂ける」というギリシャ語が由来するほど、根に蓄えた養分で若い芽を何本も伸ばす。この伸びた若い芽を食べる。
  • 1度株を作ってしまえば、何年でも収穫できる。
    →収穫量は8~10年目あたりでピークを迎え、その後、徐々に衰えていくが、30~40年採り続けられる株もある。
  • 年月を経て、株が充実するほど、収穫できる日数も収穫量も増える。
    →3年目:15~20日/4年目:30~40日程度/5年目:60~90日程度
  • 暑い日になると1日で10cm以上も伸びるので、朝夕の2回収穫することもある。
  • ヨーロッパ諸国でも、春を告げる野菜として親しまれている。
    →グリーンアスパラガスではなく、ほとんどがホワイトアスパラガス。
    →日本の桜前線のように、ヨーロッパではホワイトアスパラガス前線がある。
    4月のスペインに始まり、フランス・ベルギー・オランダ・ドイツと北上する。
    →同じ面積の収量を比べると、日本が断トツ一位。

アスパラガスの栄養分

  • 紀元前200年頃には、ギリシャやローマで栽培されていて、食用の他に薬としても利用されていたほど、栄養豊富。
  • 他の野菜に比べタンパク質が多い。
    →特に、タンパク質を構成するアミノ酸の中で「アスパラギン酸」が豊富。
    →新陳代謝を高め、疲労回復や滋養強壮に役に立つと言われる。
    →アスパラギン酸は、体を元気にしてくれる成分として、栄養ドリンクにも使われている。
  • 穂先には、「ルチン」が多く含まれる。
    →血管を強くして、血圧を下げる働きがあるので、生活習慣病の予防効果が期待される。

アスパラガスの日本史

  • 江戸時代後期、オランダから長崎の出島に伝わる。
    →当時は、「オランダキジカクシ」「マツバウド」などと呼ばれ、観賞用として飾られていた。
  • 明治時代初期、北海道の開拓にともない、輸出の缶詰用にホワイトアスパラガスが作られ始めた。
    そして、70年代以降、栄養価の高い緑黄色野菜としてグリーンアスパラガスの人気が上昇、栽培量が増えた。

アスパラガスの栽培形態「露地栽培」

  • 5~6月の春芽だけを収穫。その後、立茎して株を養成する。
    →北海道など北の産地が多い。
    ハウス半促成栽培
  • ハウスで気温を高めて栽培。
    →春と夏に収穫する「二季どり」、春・夏・秋の3シーズン採り続ける「長期どり」がある。
    →九州など南の産地に多い。

王様アスパラ

南島原市で収穫され、直径3cm以上・重さ50g以上の極太サイズのアスパラガス。
→一般的なものは、Lサイズでも18~33g(およそ直径1cm)だが、王様アスパラは、1本80gの特大サイズもある。

太いものは、固くて大味という印象があるが、穂先から根元まで柔らかく、甘くてジューシー。
→アスパラガスは、太くても細くても繊維の数は同じだが、太いアスパラガスは、その分、繊維1本1本にたっぷり水分や栄養を含んでいる。

出荷時期も2月から4月上旬までの極めて限られた時期の限定品。
→この時期のアスパラガスは、冬にたっぷりと蓄えた糖分だけで、芽を出すので、甘い。
→糖度は、7~8度と、いちご並み。

根っこ自体も、養分をたっぷりと溜めてるので、甘い!
→サトウキビの10分の1程度のショ糖を含む。
→かじってみると、確かに甘いが、色々な成分が含まれているので、苦味がある複雑な味がする。

化粧箱に入れられ1箱3000円以上で売られているものもある。

長崎県のアスパラガスが太い訳

理由その1
日当り抜群:年間日照時間は2,200時間

  • 半島の中心にある普賢岳から四方を囲む海に向かってなだらかな斜面なので、日陰にならない。
  • 太陽も海に沈むので、山間部より日照時間が長い。
    →結果、光合成し養分を溜め込む時期が、長崎県は他の産地よりも長い。
    長崎:5月~11月→7ヶ月間、光合成できる
    他産地:6月~10月→5ヶ月間、光合成できる

理由その2
島原半島は、火山岩を基盤にした土壌なので、ミネラルが豊富で肥沃。

  • 火山の恩恵を受けた土壌はミネラル(主に、鉄分、マグネシウム、アルミニウムなど)が豊富。
  • 吸収根からも養分を吸収するので、その分、溜め込まれる。

長崎県のアスパラガスの生長サイクル

  • 12月~2月下旬:休眠期
    栄養分を根に蓄えながら、土の中で春を待つ。
    →この期間の根は、栄養分が満タンな状態なので糖度が高い。
  • 2月下旬~4月中旬:萌芽期
    気温が10度以上になると、若茎が地面から伸びてくる。
    →これをアスパラガスとして収穫
  • 4月中旬~10月中旬:株の養成期
    収穫をストップし、丈夫な芽を生長させ、地上部を茂らせ、光合成を促進。
    栄養分をたっぷりと生成する。
  • 11月中旬~12月中旬:栄養分の転流期
    気温が下がると、地上部の茎葉に蓄積されていた養分が、一気に地下の貯蔵根へ流れる。
    →地上部が黄色くなったら、栄養分が根に行き切った合図なので、地面際から刈り取る。

収穫

収穫の目安は、28cm。
→30cmを超えると、穂先が開き始め、茎葉を生長させようと栄養を使うので、味が落ちてしまう。

ハサミで切るときに、断面が潰れたり、傷ができたりするので、2回に分けて切る。
→1回目は斜めに切り、2回目は回しながら丁寧に切る。

 

選果

収穫されたアスパラガスは、選果場に集められて、重さを元に8段階に選別される。
その中で、一番重い3Lになったものだけが、王様アスパラになる権利が与えられるが、さらにその中から、一本一本目で確認し、判別される。

判別ポイント

  • 傷はないか?
  • 曲がっていないか?
  • 形は整っているか?

→一つでも該当してしまうと、王様アスパラになる事はできない。

調理

長崎皿うどん

[下ごしらえ]
アスパラ:ピーラーで根元の皮を剥き、2分茹でてから、3等分に。
豚肉:ひと口大に切り、塩・こしょうをする。
いか:飾り包丁を入れて2cm幅、4cm長さに切る。
むきえび:背ワタを取る。
かまぼこ:4cm長さの短冊切りに。
キャベツ:ザク切り。
玉ねぎ:くし形切り。
しいたけ:薄切り。
たけのこ:薄切り。
もやし:ひげ根を取る。

  1. 島原素麺を半分にして、揚げる。
  2. 十分に熱したフライパンに油を入れ、豚肉を炒める。肉の色が変わったら、野菜を加えて炒め、えび・いか、かまぼこ、だし汁を加えて煮立てる。
  3. 砂糖・醤油・酒・塩を加えて味を調え、水溶き片栗粉でとろみをつけて、茹でたうずらの卵を加える。
  4. 器に1.を盛り、あんをかける。

王様アスパラ丸ごとメンチカツ

  1. アスパラの根元付近3cm分とタマネギをみじん切り。
  2. ボウルに合いひき肉、タマネギ、溶き卵、塩、黒コショウを入れて、よく混ぜ合わせる。
  3. アスパラに小麦粉をふるい、スライスチーズを巻く。
  4. その上からアスパラとチーズを覆うように具材を固める。
  5. 薄力粉、溶き卵、パン粉の順に衣をつけ、170℃の油で5~6分揚げる。

アスパラガスの柳川風

  1. アスパラは、笹がきに、三つ葉は、葉をむしり、軸を1.5cm長さに切る。
    生椎茸は、軸を切り取り、薄切りに。
  2. 鍋にだし汁を入れて火にかけ、酒・みりん・薄口醤油を加え、一煮立ちさせる。
  3. 煮汁の中に2cm幅に切った豚バラ肉を入れ、火を通す。
  4. 笹がきにしたアスパラと生椎茸の薄切りを入れ、沸騰したら溶き卵を加え、半熟程度になったら火を止める。
  5. 粉山椒を添えたら、出来上がり。

アスパラ出汁の味噌汁

  1. アスパラガスの皮や除いた根元部分を水につけて沸騰させる。
    ※皮には香り成分が含まれるので、これを集めて茹でる。
  2. ここに味噌を加えれば、出汁を取らなくても、美味しい味噌汁になる。嫌な青臭さはなく、まるであさり汁のよう。
  3. ある程度、沸騰させたら、皮や根元部分を取り除く。
  4. アスパラ・一口大に切った豆腐・2cm幅に切った油揚げを鍋に入れる。
  5. みそを溶き入れてサッと煮たら、出来上がり。