スペシャル

「偽装の夫婦」とステキな仲間たち

『偽装の夫婦』プロデューサーの大平です。 連続ドラマにはスタッフキャスト合わせて延べ100人近くの人が携わっています。 全員は紹介できませんが、ドラマの制作を支えているプロフェッショナルな人々とのおしゃべりをシリーズで紹介したいと思います。

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第5弾は、カメラマン・二之宮行弘さん

“とにかく「芝居」が撮れないと、という意識−−”

プロフィール

二之宮 行弘(53)チーフカメラマン
プロフィール:日本テレビ『ズームイン!!朝!』(1979年・日本テレビ系列)の「ウィッキーさんのワンポイント英会話」コーナー、『あんちゃん』(1982年・日本テレビ系列)のカメラを担当しキャリアをスタート。ファインダーから芝居を見つめて、今年で33年目。チーフ作品に『ホカベン』(2008年・日本テレビ系列)、遊川和彦脚本の『ニセ医者と呼ばれて~沖縄・最後の医介輔』(2010年・読売テレビ日本テレビ系列)、『○○妻』(2015年)がある。株式会社ファーストショット所属。

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(大平)
照明もそうですけどカメラがないとドラマは作れないという基本的なところじゃないですか。二之宮さんはチーフカメラマンとして、カメラの役割っていうのは何だと思ってますか?
(二之宮)
今はカメラの性能がよくなりました。僕たちがやり始めた30年以上も前はちゃんと明かりも当たったところに、役者さんがちゃんと来るというものでした。カメラも動かさずバシッと撮っていました。性能がよくなって、明かりから多少外れていようが今は写ってしまう。それで微妙に役者さんの動きをフォローするのが主流になってきた。僕は嫌いなんですが(笑)。カメラマンの主観みたいなので振りません。さりげなく撮りたいんですよ。特別なワークとかは今は好きじゃないです。何気なく観れて、でも芝居が面白いというのが理想。僕らの先輩たちは画を動かさなかったし、カメラマンの主観は入れないほうがいいというのは鉄則でした。
(大平)
圧倒的にスタジオが多かったですしね。ロケに出て美しい画に拘るより、スタジオでカメラを4台(今は6台)かまえて、じっくり芝居を撮るという感じで。
(二之宮)
『あんちゃん』なんかはまさしくそうですね。神社の境内をスタジオ内に作っているんですもん。だからそのころカメラは大きいのしかないから、カメラをばらしてスタジオにいれて。
(大平)
カメラマンとして心がけていることは?
(二之宮)
構図がいいとかっていうよりはとにかく芝居に合った画がマッチするようにしている。とにかく芝居が撮れないと、という意識ですね。画が綺麗と言われても僕は実は嬉しくなくて。芝居がわかるアングルというのを一番目指しているとこです。
(大平)
二之宮さんはしっかり芝居を見ていますもんね。
(二之宮)
芝居が好きなんですよ。誰よりもかもしれません。(笑)
チーフでついた初めての監督がカット割り(※1)をしない人だったんです。うちの社長に「明日から連ドラだから行け!その人は割らないよ」って言われて。僕はワンカットで押す人かと思ったら一切カット割りをしない人だった。お前やれと。それが27歳くらいでしたかね。相手は佐藤浩市さん、秋吉久美子さん、丹波哲郎さんという、そうそうたる面々。27歳の若造がカメラマンなのに、芝居をつけるんですよ。
ここで動いてくれとか言って。やらないと始まらないんで。

※1 カット割り:脚本にカメラのサイズや構図を指示するために台詞の
行間に線を引くので、カット割り、またはコンテなどと言う。

(大平)
初チーフの経験がまさか今、こうやって生かされるとは思いませんでしたね?
(二之宮)
そうなんですよ、それ以来カット割りをしたことはないんです。自分の頭の中ではありますよ、一個ずつこうやってこうやったらいいというのは。でも監督が割ってきますね。
テレビドラマはどうしても制約された時間の中でカット割りを出されてそれを追っていくという作業しかできないということもあるんですけど、やっているとどこかであれっ?これでいいのかな?って思うこともやはりあるんですよね。そこで自分でもカット割りをしていないとその結論って出てこないんですよね。
(大平)
若いディレクターの中には、コンテ(カット割り)至上主義っていうところもありますね。
(二之宮)
僕はそれがやっぱり好きじゃないっていうか。まあ、まっさらな状態の中で芝居を組んでみんなで意見しながら割っていくというのが一番理想なんですけど、テレビは時間がないし最初にカット割りがあれば音声や照明が準備できる。今やコンテは必需品ではあるのですが、本当はみてみないとわからないでしょ。机上で割ってくる弊害は、そこにあてはめようとする。芝居が違うから別の画にしようかっていう時、頭で割ってくる人はそこが崩れると全部崩れると意識が働いてしまう。たしかにコンテは、スタッフにとっても役者にとっても設計図ですけど、コンテにはハマらないけど、芝居はこうしてみたら面白いということは新鮮だし臨機応変にやることで思ってもみなかった画がとれることもあると思うんですよね。
(大平)
僕がADやっていたころはリハーサルが二日ぐらいありましたもんね。そうしたらカット割りもできますけどね。
(二之宮)
そうそう。自分で割る、根本的な部分でやっぱり自分が頭から考えるってすごく大事なことだなって思うし。
(大平)
カメラマンも。照明マンも。
(二之宮)
そうです、みんなです。
(大平)
連ドラは、監督が複数(今回は4人)のことがほとんどですが、
画の統一感はどうしていましたか?すべての画を見ているのは実は二之宮さんだけですもんね。
(二之宮)
個性の強いディレクターが来てしまうと、わかってくれない人はわかってくれないので難しいのですが、
(大平・二之宮)
まあ、個性が強くないとディレクターにはなれないんですけどね。(笑)
(二之宮)
連ドラをするときのテーマですね。連ドラはディレクターが3人くらいいて回を分担しているんですね。普通に撮る監督と、画のスタイルが変わっている監督がいると大変ですよね。スタジオだとカメラが5、6台あるので現場で直接編集作業なんです。アングルや分担する役者さん6台を全部割り振っているんです。そして各カメラマンたちに指令を出すんです。ディレクターも勿論、拘りがあるので、画にも意見を言ってくるわけで。僕らとしては同じトーンの画にしたいのだけど、要求されると戦うわけですよ。一応わかったとか言っておいて本番になって思ったことをやってみるとか。(笑)トータル的には変わっていないという自信はありますよ。
(大平)
愚問かもしれないけど、このドラマのベストショットって?
(二之宮)
これだっていうのはないんですよ。それでいいと思っています。自分の中で完結してしまうと思うんで。さっきも言ったようにちゃんと芝居が活かされた画なのかということですが、それは難しいところです。最終回のロケは8話以上に良いものにしようと思っています。女優さんはできるだけ綺麗に撮りたい、可愛く撮りたいと思っています。
(大平)
今回は本当に天海さんはじめ、女優さんが綺麗に撮れている。
(二之宮)
一つでもダメなら全部ダメになっていたでしょうね。ある程度のレベルでみんなが力を合わせて、それが集約してワンカットができているなという気がしています。
(大平)
みんなで作ったっていう感はありますね。
(二之宮)
僕もそうですね、非常に。こんな考えさせられた作品はあまりないと思いますよ。
大平
最終回はカメラマンとしてここはというシーンありますか?
(二之宮)
まだ撮っていない二人の本当のラストシーンですね。色々と考えて監督と相談しました。天気にもよるんですけど。かつてはぶつかった経験もある一緒にやってきた大内さん(照明チーフ)の明かりがすごいと思います。彼の照明によって自分の画が活きてきています。
大平
大内さんの明かりと監督と二之宮さんの女優への愛情が、この作品に更なる深みを与えてくれたと思います。
(二之宮)
あの照明じゃないとダメだなっていう、色々と考えさせられたというのがこの作品の僕にとってのいいことだったんですかね。

文責:今井イスパス恵子

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