東京都現代美術館
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フレデリック・バック

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メッセージ

▶フレデリック・バックさん
▶スタジオジブリ・鈴木敏夫プロデューサー
▶スタジオジブリ・高畑勲
▶monky majik

フレデリック・バック


一本の作品が世界を変えることがある。

夢想することがある。
宮崎駿の描いた絵が、そっくりそのまま動いたら、どうなるか。キャラクターも背景も、彼の絵だけで。それを実現しているのが、バックさんのアニメーションだった。
高畑勲と宮崎駿が、バックさんの作品に出会ったのは、いまから25年以上前に遡る。ロサンゼルスで「クラック!」を見たふたりは、帰国するやいなや、興奮して、その魅力について語ってくれたものだ。曰く、物語とテーマ、そして表現が一致していると。特に表現においては、ぼくらが作るセルアニメーションとは、一線を画した作品だった。ぼくらの作るアニメーションでは、背景にキャラクターを馴染ませることは、むずかしい。セル画に描くキャラクターはのっぺりしているし、背景は、緻密に描けば描くほど、キャラクターとは質感の違う絵になる。しかも、多くのスタッフが分業で絵を描く。
時を経て「木を植えた男」が日本へやって来た。それは、バックさんの仕事の頂点ともいうべき作品だった。
その後、Kさんを通じて、バックさんと僕らとの交流が始まったが、バックさんは、作品とその人柄が見事に一致した人物だったことも驚きだった。
バックさんとの出会いのあと、高畑勲は、長編アニメーション「となりの山田くん」で、実際に、背景にキャラクターを馴染ませてみたし、一方、 宮崎駿は、「崖の上のポニョ」で、CGをいっさい捨てて、絵本の挿絵のような背景を採用し、手描きのアニメーション、それも、可能な限り動かしまくるアニメーションにとことん、こだわった。
 一本の作品が世界を変えることがある。アニメーションは進化する。「木を植えた男」以降、世界のアニメーションは、大きく変わった。