2018年1月2日放送

“吊るし焼きエビ“を作る、宮本三希子さん。
熊本県芦北町。
この地方では、名産の吊るし焼きエビで作るお雑煮が、正月の食卓を彩ります。
「うたせ船っていう帆掛け船なんですけど、
その船の漁でとれる天然のアシアカエビを使って、お雑煮のだしを作ります。」
アシアカエビは10尾ずつ串に刺していきます。
「エビは焼くと、どうしても曲がる性質なんですけど、腹合わせに刺すことによって曲がらないんです。」
松の木を薪に使い、およそ2時間焼き上げます。
肝心なのは、その火加減。
「あまり火を強くしすぎると、エビの頬の所が焦げてヒビがはいってしまいます。だから日によって焼く時間は違います。
バーナーとかで焼くと、早く表面だけは焼けるんです。
でも伝統のこの焼き方は、じっくり焼くことで内側からうまみが出てくると思います。」
焼き上がりからさらに2週間乾燥させ、うまみを引きだします。
「稲わらを使って編み上げてそれを吊るす。“あー正月が来るな”って感じですね。
古くは、島津藩では、エビがたくさんかかっている家ほど、格があると言われたそうです。」
この地で最後の作り手となった宮本さんが共感する言葉。

「我々は何かを得ることによって生活しているが、人生は与えることによって豊かになる」

ドイツの哲学者 アルベルト・シュヴァイツァーの言葉です。

「いまはもう私しか焼けませんので、食べておいしかったって言っていただくことが一番うれしいですね。」