2019年3月12日放送

沈金作家、山岸一男さん。
石川県輪島の伝統工芸品“輪島塗”。
それを鮮やかに飾るのが“沈金(ちんきん)”という技法です。
「お椀(わん)とかお膳とかお盆に彫って、金箔(きんぱく)、金粉を入れて
まわりの金を取り除けば、模様が残りますから、これが沈金です。」
最も難しいのは直線を彫ること。しかし、あえて定規などは使いません。
「機械的に定規で彫ってしまうと、非常に冷たい、無表情になるんですね。
どうしてもこういう線の表情が出したいとか、フリーハンドでないとでませんでした。」
30年以上前から伝統的な金だけでなく、色漆などを埋め込む技法、
“沈金象嵌(ちんきんぞうがん)”に取り組みました。
それが評価され、2018年、人間国宝に選ばれたのです。
「3回ないし4回は彫ったところに色を埋めますけども、
ひものような線のところに3色入る、さらに、その線が縦横斜めで構成され、
柔らかみというか、深みというのが出てくる気がします。」
伝統の技法をさらに極めた山岸さんが心に思う言葉。それは…

「急いては事を過つ」

急がず堅実に進めよという意味のことわざ。

「型はきちっと教わって身に付けて、
それをより良い形にして、沈金というものを変えて残せたらいいと思います。」