放送内容

2015年8月 5日 ON AIR

なぜ隣人は悪魔になったのか

 2006年、イギリス中西部の街、ラドローの一角にリタイヤメントパークという50代以上の人達だけが住む住宅街がある。
この街に夫と2人で暮らしているポーリーンの楽しみはガーデニング。友人達と一緒に始め、仲間と花に囲まれのんびりと1日を過ごしていた。気の合う仲間と何の不満もない生活だったが、ここ数日は家にかかってくる無言電話に頭を悩ませていた。そして誰かに見張られているような気もしていた。ポーリーンは夫と2人で警察に相談、無言電話の発信元を調べてもらうことに...。


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 2か月後、電話会社から電話の詳細が届いた。中を見ると、何と無言電話をかけていたのは、イボンヌという隣の住人だった。イボンヌはポーリーンの1つ年上で、穏やかそうな女性だった。1年前に引っ越してきて、お隣同士すぐに仲良くなり、毎日のように顔を合わせ一緒に出かけていた。そんな彼女がなぜ無言電話をしてきたのか...。それはささいな理由からだった。イボンヌと知り合って半年が経った頃、ポーリーンにガーデニングの趣味ができた。ガーデニング仲間と楽しそうに話すポーリーンを見て、イボンヌは自分だけ取り残されていくような気がした。ポーリーンはガーデニングに夢中で、以前のようにイボンヌと一緒にいる時間も少なくなった。そのため、イボンヌは仲間はずれにされていると勝手に思い込み、無言電話をするようになったのだ。通常、無言電話をする動機は相手の声が聞きたいか、相手を恐怖に陥れたいという場合が多いが、イボンヌの動機にはその両方があった。無言電話の犯人が分かったポーリーンと夫は警察に被害届けを出した。イボンヌには慰謝料としておよそ2万円の罰金が命じられた。しかし、警察の介入によって嫌がらせはさらにエスカレートすることに...。無言電話はやまず、それに加えて執拗な監視。常に見られているという感覚はポーリーンを精神的に追い詰めていった。一方で、イボンヌは他の住民の前ではその心の闇を見せることはなく、ポーリーンに対する異常な行動に気付かなかった。ポーリーン自身も騒ぎを大きくしたくないと思っていたのだが、この嫌がらせが収まる気配はなかった。そして、ついにイボンヌはポーリーンに対して悪態をつくようにまでなった。


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 嫌がらせをされるようになって4年が経つ頃。夫トニーが末期のすい臓ガンであることが発覚。そんなショックに追い打ちをかけるようにイボンヌの嫌がらせは続いた。ポーリーンの家には夫の病気を心配して、息子のジョンが頻繁に訪れるようになった。ジョンはポーリーンからイボンヌの話を聞き、ある行動を開始。イボンヌが悪態をつくのを見計らってカメラで撮影したのだ。実際の映像にはカメラに向かってジョンを罵倒するイボンヌが映っていた!ジョンはこの映像を持ってすぐに被害を訴えたが、警察はイボンヌにポーリーンの一家に近付かないというサインをさせただけだった。そんなことでイボンヌの嫌がらせが収まるわけがなかった。そんな中、2012年に夫は無言電話と悪態に悩まされ続け、この世を去った。ジョンはポーリーンに引っ越しを提案したが、彼女は夫との思い出の残るこの家を離れる気にはなれなかった。そこでジョンはポーリーンとこの家での生活を開始した。


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 そんなある日とんでもない事が起こる。何とイボンヌの飼い犬が、ポーリーンの飼い犬を襲ったのだ!ジョンはイボンヌの愛犬を捕まえ救出はしたものの、その直後にイボンヌが塀を乗り越えて侵入してきたのだ。彼女は愛犬を返せと怒鳴り込んでくるやいなや、手に持っていた大きなハサミでジョンに襲いかかった。ポーリーンはすぐに警察に通報。幸い、怪我人はいなかったが、この事件が原因でイボンヌはリタイヤメントパークから退去を命じられた。それから3年、イボンヌはリタイヤメントパークへの立ち入りを禁止され、ポーリーンに近付くことはできないという。ポーリーンは夫と過ごした家で息子のジョンと穏やかに暮らしている。

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