放送内容

2016年1月27日 ON AIR

時が止まった少女たち

アメリカ・モンタナ州に住むウィリアムズ一家。
両親は6人の子どもに恵まれ幸せいっぱいに見えるが、
実はこの家族、世界にほとんど症例の無い謎の病と闘い続けている。


ウィリアムズ家6人兄妹の二女であるギャビーは現在11歳。
しかしその姿は、生まれたばかりの末っ子よりも小さな身長61cm、
体重は5kgにも満たない。
彼女の体に何が起こったのか?


"成長しない身体"


2003年、モンタナ州。
ウィリアムズ家に新しい命が宿った。喜びに沸く夫婦。


そして数か月後、二女のギャビーが誕生。
しかし生まれたばかりのギャビーは8分間も呼吸をしていなかった。


すぐに医師たちが検査を開始。
心臓の形成不全、神経の異常などギャビーの体には様々な問題が見つかった。


そして一番の問題は脳にあった。
ギャビーは滑脳症(かつのうしょう)だということが分かったのだ。
滑脳症とは、脳にあるはずのシワが少なくなっている状態。
脳の未発達によるもので、運動機能の低下や知的発達の遅れ、
さらに、てんかんや肺炎などの合併症の危険性もあった。


このままだと成長しても自力での歩行は困難となる。
しかし、手術をすれば改善する部分もある事から、医師はギャビーの体重を
もう少し増やす必要があると両親に説明した。


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ある程度体重が増えた後、手術を行う事になったギャビー。
しかし、何日たっても彼女の体重は増えなかった。


更なる問題の可能性を不安視した医師は、
染色体などの異常がないか検査を行ったが体重が増加しない原因は
まったく分からなかった。


結局、根本的な理由が分からないまま40日後に退院。
この頃になると口からミルクは飲めるようにはなったが、半年たっても
ギャビーの体は大きくならなかった。


"なすすべが無い中、新たな命を授かる"


その後も両親は様々な病院を回ったが、どこも解決策は見つけられなかった。
先に生まれた長女はすくすくと育っていく。
一方でまるで時が止まったかのように変わらないギャビーの姿に
両親はなすすべがなかった。


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そんな中、3人目の子どもを妊娠。
両親は当初不安に苛まれたが、どんな子でもかけがえのない自分たちの子として
愛を持って育てていこうと心に決めた。


こうして2007年、3人目の子どもとなる長男を出産。
ギャビーの様な問題は見当たらず、順調に成長していった。
その後も2人の娘、1人の息子を出産。全員が健康体だった。


"同じ症例の少女の存在を知る"


2013年、ウィリアムズ一家はアメリカのフロリダ州を訪れていた。
それは一人の少女の存在を知ったからだった。


その少女の名前は「ブルック・グリーンバーグ」。
体は少女のように小さいが、実は年齢17歳。
ギャビーと同じく原因不明の時が止まった少女だった。


そしてギャビーと同じようなケースの子を研究している
リチャード・ウォーカー医師がフロリダにいることを知ったウィリアムズ家は
一家でフロリダにやって来たのだった。


医師は事前に預かった血液サンプルなどから原因を追究。
その検査の結果、ギャビーの遺伝子の一部が変形していることが分かった。
しかしそれがギャビーの症例の直接の原因かどうかまでは分からなかった。


"そして現在の家族は..."


そして現在、8人家族というにぎやかな大所帯となったウィリアムズ家。
ギャビーの弟、妹たちは身長、体重共に姉を追い越した。


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目の見えないギャビーに母は付きっ切りで世話をし、
父も1日の勤務時間を10時間に増やし、その代わりに週3日を休日にして
家族との時間に使った。


姉弟たちも喜んでギャビーの世話を手伝っている。
また、妹や弟たちは自分より体が小さいことなど関係なくギャビーを
2番目の姉だと思い接している。


これまではギャビーがどうすれば治るのか、そればかり考えていた両親。
しかし現在は治るかもしれないという奇跡を考えるのではなく、
家族全員で"今を前向きに生きよう"と考え方を変えたという。
誰もがギャビーを思い、支え合う生活。そこには明るい家族の姿があった。


"ブラジルにも時の止まった少女が"


一方ブラジルでは、さらに長い間時が止まった少女がいる。
ブラジル北部の小さな村に暮らすマリア・オウディーティ。
体重17.6kg、身長は76cm。
幼稚園児と変わらない体型の彼女の年齢はなんと34歳。


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ギャビーやブルックの症例を研究しているウォーカー医師によると
彼女の症例はギャビー達とは全く別のものだという。


マリアの成長を止めた原因、それは「先天性甲状腺機能低下症」というものだった。
これは首の前面にある甲状腺の働きが弱く、分泌される甲状腺ホルモンが不足することで
体の成長や知能の発達に問題が生じる疾患。


日本では3000人から5000人に1人の割合で発症すると言われているが
1977年から行われている先天性の代謝異常を発見する検査、
「新生児マススクリーニング」によりこの疾患を早期に発見し、治療することが出来る。


だが、ブラジルの貧しい村で生まれたマリアはこの治療を受けることが出来なかった。
その為、生まれて30年近くも歯や髪の毛が生えることなく、しゃべることはおろか
歩くことすらできなかった。


貧しさでどうすることもできなかったと悔やむマリアの両親。
ところが2011年、マリアの現状をテレビ番組が取り上げたことがきっかけで
番組放送後、マリアを治療したいという医師が現れた。


こうしてホルモン治療が開始された。
すると半年後マリアは歩けるようになり、さらに髪の毛や歯が生えてきた。
身長も治療前より15cmも伸び、体重も5kg増加。


両親は治療することでマリアがどんどん元気になっていく事がこの上ない幸せで
いつかマリアと楽しくおしゃべりすることが夢だという。

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