放送内容

2016年12月21日 ON AIR

ユーチェク家のクリスマス

もしも、子どもが重い病に冒されたら...
もしも、その治療費が収入をはるかに超えるものだったら...
でも治療をしなければ、死が...!


子どもの命を救うため、家族は終わりのない貧困生活を選んだ。
そして、クリスマス・イブに本当の奇跡が起きた。


"娘にかかる医療費は月200万円"


1989年8月、アメリカ・ミネソタ州。
カーペット販売会社で働く、ジム・ユーチェク。
その妻のアンは今月出産を控えていた。


夫婦はすでに5人の子どもに恵まれていた。
ジムが大学生のときに学生結婚をした2人。
たくさんの子どもに囲まれる生活に憧れていたため、
決して楽な生活ではなかったが、家族7人とても幸せだった。


ところが、6人目の子どもとなる娘は生まれてまもなく呼吸困難に陥っていた。
さらにその後の検査で免疫の異常や呼吸機能の障害、心臓の異常も確認された。


「ヌーナン症候群」という先天性の遺伝子疾患だった。
心疾患や血液疾患、発達の遅れなど、症状は多岐に渡り、人によって異なる。


低身長、胸部変形など、身体的な特徴がでる場合が多い。
心臓や呼吸器の症状が悪化すれば...命の危険もある。
医師からの宣告にショックを受ける両親。


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レベッカと名付けられた生まれたばかりの妹に会おうとしても
幼い兄弟たちは感染症を危惧され、面会すら許されなかった。
アンは子どもたちを親に預け、病院へ通った。


免疫力の低いレベッカは、同時にいくつもの感染症にかかっていた。
また、血中の血小板が少ないなど、予断を許さない状況が続いた。
集中治療室での24時間治療。


そして、衝撃的なことを告げられる。
レベッカの治療にかかる費用は月に1万4000ドル。日本円でおよそ200万円。
それに加え、手術をすれば、その都度数百万円がかかってくるという。


"娘のために月900ドルで生活することに"


ジムは会社の保険に加入していたがそれだけでは医療費はまかなえない。
もともとたくさんの子どもを抱え、ギリギリの生活。
どうしたらいいのか...夫婦は途方に暮れた。


両親に借りようにもそんな大金、誰も持ち合わせていない。
しかも、いつまで払い続けるか...先が読めない。
とはいえ、治療しなければ娘は死んでしまう。


夫婦は藁にもすがる思いでソーシャルワーカーに相談すると、
メディケイドという制度への加入を薦められた。
メディケイドとは、国と州が合同で運営している、低所得者向けの
公的医療保険制度。


もし加入すれば月々たった数ドルで、医療費のほとんどをカバーすることができる
夢のような制度だった。(※州や個人の状況によって内容は変わります)


しかし、それには1つ条件があった。
ユーチェク家の場合、それは月収を900ドルに抑えるということ。


ユーチェク家は家のローンだけでも月800ドル。
つまり、残りの100ドルで家族8人が生活していかないといけない。


そんな中、レベッカの症状は悪化していく。
心臓には穴があき、肺に続く動脈が狭くなり、血流が滞っているのが発見された。
このままでは、娘の命が危ない。救うためには、メディケイドに加入するより他はなかった。


ジムは、職場の給料を900ドルに下げてもらい、メディケイドに加入した。
毎月残るお金は、ローンをひいてたった100ドル。
もはや生活は成り立たなかった。


フードスタンプという低所得者向けの食品用の金券を利用したり、
ジムの会社の人たちの協力などでどうにかやりくりしていく毎日。


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一方、レベッカの容体は一進一退だった。
いくら手術をしても、すぐにまた別の症状が発生する。
レベッカの、そして家族の闘いはいつまで続くのか。


"クリスマスに奇跡が起こる"


レベッカが生まれて4か月。
冬を迎えると、この町の気温は氷点下にもなる。
依然レベッカの容体はよくなかった。


世間はクリスマス一色。しかし、レベッカは小さな体で病と闘っていた。
ジムは教会で娘の回復を祈り、兄弟たちもサンタにプレゼントではなくレベッカが
元気になるようお願いした。
家族の願いはただひとつ。レベッカが元気になること。


12月24日、町は華やかな雰囲気に包まれていた。
ユーチェク家のクリスマス。それは病院でレベッカと一緒に。
チキンも、ケーキもないが、家族8人で過ごす初めてのクリスマスだった。


家に戻ると、家の前にゴミ袋が置かれていた。
最初は嫌がらせと思ったが、開けてみるとキレイにラッピングされたプレゼントが。
プレゼントには、それぞれに家族の名前がついていた。


さらに一緒に入っていたクリスマスカードには、あるメッセージが。


メッセージ「あなたたちは愛されている。サンタより」


それは一家の闘いを知っていたサンタクロースからのプレゼントだった。
そんな時、電話が鳴り、ユーチェク家にとって最高のプレゼントが届く。
なんとレベッカが自発呼吸を始め、容体が安定したという病院からの連絡だった。


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そして、レベッカはついに退院するまでに回復した。


こうして家族8人が揃ったユーチェク家。
クリスマスの出来事は、その後一家の運命を大きく変えることになる。


レベッカが退院したことで月々かかっていた治療費がかからなくなった。
また、レベッカの病状がある基金に認められ、収入を抑えなくても医療費の手当を
受けられるようにもなった。
定期的に通院しながらも、家族に囲まれながらレベッカは成長した。


"父が一大決心!なんと医師に"


ところが、このストーリーはここで終わらない。
実はレベッカの退院後、ジムは不景気で仕事を解雇されてしまっていた。
とりあえず、新聞配達で生計を立てていたジム。


一方レベッカには交代で看護師がつき、24時間体制の看護。
また、町の人も協力してサポートするように。


周囲の援助があればあるほど、ジムは自分の存在意義を見つけることができなくなった。
やがてジムは引きこもるようになり、自問自答する。


何度も手術を乗り越えてきた娘...。
幼い娘が一生懸命に生きているというのに、自分は何を...。


そしてジムはある決断をする...!
ジムは勉学に励むようになり、大学に入学すると
その6年後にはなんと医師になったのだ。


あのクリスマスの晩にサンタからもらった幸せ。
今度は医師になって自分が、他の人に幸せを繋ぎたい。
クリスマスの感謝を、決して忘れないように。


クリスマスの奇跡から、すでに27年。
現在のユーチェク家にはなんと子どもが12人もいた。
実はアンはあの後、困っている人を助けたいと5人兄弟を養子にとった。
さらに、末っ子のマッケンリーを迎え入れ、子どもは12人。14人家族となったのだ。


そしてレベッカは27歳になり、すっかり大人の女性に。


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17歳までチューブで直接、胃に栄養を送っていたが、
今ではチューブは外れ、現在の好物は母の手作りミートローフだという。
現在はヌーナン症候群の支援団体で、講演などを行っている。


あのクリスマスの奇跡は、たくさんの人の幸せへとつながっている。

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