放送内容

2017年7月18日 ON AIR

人食いバクテリアの恐怖

人間の体を食い荒らす危険な菌。
それは体内に侵入し、猛スピードで組織を食う。
壊死させ、多臓器不全を引き起こし、あっという間に人間を殺してしまう。
そんな恐ろしい菌が我々のすぐそばにいる...。


" 謎の激痛が足裏を襲う"


2016年、アメリカ・テキサス。
この町に住む、とある男性。朝起きると足裏にかゆみが。


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とりあえず市販の薬を塗り、すぐに治るだろうと思っていた。
しかし数日後、傷が広がった。


男性は、近所の病院へ。
「ウイルス性のイボがつぶれたのもの」という診断だった。
薬を処方され、すぐに良くなると言われ男性は安心したが、
恐ろしい事態は、すぐそこに迫っていた。


数日後、足に激痛が。
傷が増え、出血。さらに最初の傷も広がっていた。


すぐに検査が行われた。
その結果、恐ろしい菌に侵されていることが判明する!!


通称「人食いバクテリア」。劇症型溶血性レンサ球菌感染症。
我々の身のまわりに、ごく普通に存在している菌が原因だった。


子どもの15%~20%が喉などに保菌しているといわれている。
ところが、何らかの原因でこの菌が筋肉や、血液、肺などに侵入すると、
突然、激しく動きはじめ組識を壊してゆく。


感染ルートは「飛沫感染」と「接触感染」の2つ。
男性は仕事前に、ジムに通うことが日課だった。
そのシャワー室で足裏の傷口から、接触感染したのではと考えられた。


傷口から感染した場合、傷口に近い場所からバクテリアが組織を食い荒らし、
場合によっては壊死し、菌は全身に回る。


それを食い止める為に洗浄、場合によっては切断も。
それでも菌のスピードに追い付かず命を落としてしまうことも多いため治療は一刻を争う。


すぐに、傷口付近の洗浄、抗生物質が投与された。


" 菌を除去するために傷口をえぐり取る"


足から人食いバクテリアに感染した男性の足裏の傷は、さらに大きく広がっていた。
洗浄では菌の進行は止まらなかったのだ。


かろうじて壊死はまぬがれていたが、菌が全身に回るのを防ぐため
食い荒らされた傷口付近を削り取る手術が行われた。


その結果、男性の足裏はえぐれ、いくつも穴が。
これ以上菌の進行が進めば次は壊死となる。
そうなれば足首から切断...という可能性もあった。


しかし、その後の検査で、手術で菌を全て取り除けていたことが判明。
菌の進行も止まったと診断された。


切断せずに、助かったことは嬉しい。
だが、バクテリアが食い荒らした部分をえぐり取った足裏の穴は、
このままではふさがらない。運動ができなくなる可能性や歩くこともままならなくなる可能性がある。


そこで医師が変わった治療法を紹介した。
それは、魚の皮で人間の皮膚を再生するというもの。


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ブラジルでは2014年に研究が始まったその治療法は
アメリカでもはじまったばかりだった。


使われるのは「ティラピア」という淡水魚。
ブラジルでは、どこにでもいるメジャーな魚で、日本では「イズミダイ」と呼ばれている。


" 失われた皮膚を再生する「魚」とは"


実際にこの治療を受けた女性、マリア・イネスさんは
2014年に職場のガスコンロが爆発し、全身に重度の火傷を負ってしまった。


皮膚移植が必要だったが高額な医療費を用意できなかったため
イズミダイの皮を使用し治療を進める事に。


まず、イズミダイの皮をはぎ、余分な部分をそいで、切り落とす。
その後、さまざまな薬品で殺菌、洗浄し生理食塩水で再び皮を保湿。
皮をまっすぐにしたあとは直接傷に貼って上からガーゼや包帯をまくだけ。


マリアさんは、約2週間に1度魚の皮を取り替え、治療を続けた。
するとイズミダイの皮の下で初々しいピンク色に再生した。


ブラジルで成功を収めたこの治療を、アメリカが治験として導入。
人食いバクテリアで足の裏の肉を失った男性に試されることになったのだ。


あれから、約1年。仰天スタッフは、男性のもとを訪ねた。
男性が治療を開始したのは4か月前。
仰天スタッフは、「匿名で」との条件で
取材を受けてくれた男性の家を訪ねた。


感染したのは左足。普通に歩くことができている。


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傷跡を見せてもらうと、なんと足裏の穴が消えている!
わずか4か月で、驚きの回復!


3月18日に治療をはじめると10日後、膜がはり始め、
約1か月後には傷がほとんど塞がり、つい2週間前、治療を終えた。


感染前の生活に戻ることが出来た男性はこの治療法に出会えて
本当によかったと語っている。


アメリカでは、シャワー室やプールでの感染が多く見られる「人食いバクテリア」。
足裏の傷などは、十分に気をつけたい。

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