放送内容

2018年5月 1日 ON AIR

日本の若者が危険 命を奪う食べ物

20代のとある男性、体のだるさを覚えていた。
そんな状態が1週間ほど治らず...心配になり、病院へ。


すると...肝機能が低下しているという診断が。
ちなみにこの男性はひと月ぐらい前に東南アジアへ行っていた。


このような患者を診た医師によると、
東南アジアへの渡航歴があること、そして肝臓に症状があるということで、
あるウイルス感染を疑ったという。


検査の結果、この患者はあるウイルスへの陽性反応を示していた。
それはA型肝炎ウイルス。
感染すると2~7週間の潜伏期間を経て、肝炎を起こす。


発熱やだるさ、腹痛...といった風邪のような症状が現れることが多い。
そして、水や食べ物を通して経口感染することから、旅行中に口にした水や生野菜、
フルーツなどから感染した可能性が高い。


なによりA型肝炎の場合、薬や治療法は特にない。
肝臓に負担をかけないよう、安静が第一。この患者は、1週間で退院した。
しかし、A型肝炎は時に命に関わることがあるので、注意が必要だという。


実際にアメリカで事件が起きた!


原因がわからないA型肝炎の集団感染


2003年10月、アメリカ・ペンシルベニア州。
オハイオ川に面したのどかな町、モナカ。


日曜日、あるメキシコ料理チェーン店は、ランチを楽しむ人々でにぎわっていた。
その中にリッチ・ミラーとリンダ夫婦の姿もあった。


その3週間後、夫が高熱を出し倒れた!しかも、顔が黄色に...。黄疸だった。
数日経つとさらに異変が。劇症肝炎を起こしていた。


肝炎を発症してから短い期間で高度の肝機能障害を起こし、
肝性脳炎とよばれる意識障害を起こした状態。こうなるとおよそ半数が命を落とす。


実は2週間ほど前から、この地域で同じような症状の患者が増えていた。
調べると、みなA型肝炎を発症していた。


CDC・アメリカ疾病予防管理センターは調査を始めていた。


すると、患者のほとんどが同じ場所で食事をしていたことが判明する。
それはあの夫婦も食事をしていたレストラン。


そしてとんでもない食材が原因だったのだが・・
倒れた人たちが同じメニューを注文したわけではなく、共通する食材がない。
従業員からもウイルスは見つからない。調査は難航した。


原因は意外なものだった


実は、ほとんどの患者が口にしていたが、つい忘れていたモノがあった。それは...
「サルサ」だった。


「サルサ」とはスペイン語でソースのこと。
そう、頼んだメニューは違っても、必ずついてくるサルサ。


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そのサルサ自体は、他の店でも使っていたが、それらの店では感染者が出ていなかったので
調査の対象になっていなかった。

しかし、この店ではサルサの中にメキシコ産のワケギを刻んでいれていたのだ。
そのワケギから、A型肝炎ウイルスが発見された。


感染者660名の大惨事に


これにより感染者660名、最終的な死者4人をだす大惨事となった。


劇症肝炎を発症してしまったあの夫は、
絶体絶命の中、奇跡的に適合する肝臓が見つかり、移植手術が行われた。
その結果、リッチは一命を取りとめた。


その後、レストランの経営会社は、全米に展開していたチェーン100店を全て閉鎖して
国内のレストラン事業から撤退。
患者たちには、賠償金が支払われることになった。


現在リッチは、元気に暮らしている。
手術の痕もよく見なければ分からないほど薄くなっていた。


しかし今も毎日免疫抑制剤など10数種類の薬を
飲み続けている。
ちょっとした風邪でも命に関わることもあるのだ。


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レストランでのたった一回の食事が夫婦の人生を大きくかえてしまった。
日本では、50歳以下のほとんどの人がA型肝炎の抗体を持っていない。
大感染となる恐れもあるので注意したい。

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