放送内容

2018年5月15日 ON AIR

人生を変えた眉の上の傷

イギリスの主婦、ドナ・コーデンさん。
ごく普通に、穏やかに暮らしていた彼女だったが、ある些細なことがきっかけで
とんでもない姿に!いったい何があったのか?


眉毛の上を切り、感染症を発症


2017年1月、イギリス中部の町リーズ。
45歳の主婦、ドナ・コーデンは4年前夫を亡くし、2人の子どもと暮らしていた。


ある日、お茶を入れようとキッチンへ。
その時派手に顔をぶつけ、眉毛の上を切ってしまった。


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とりあえず止血はできたが、ホームドクターに連絡し傷を数針縫った。
この時はまだ些細な出来事と思っていた。


翌朝...目を覚ますとひどい頭痛が。
そして、顔が火照ったように熱く感じた。


目の周りは、アザの様に黒ずみ始めていた...
もしかしたら骨にヒビでも入っているかもしれない。
そう考えた彼女は、整形外科へ。しかし、骨には異常はなかった。


さらに翌日。
頭だけでなく、痛みは体中にひろがり、手足に震えまで起きるようになった。
顔は大きくはれ上がり、意識が朦朧とする。
ドナはすぐに総合病院に搬送された。


そして血液検査で、恐ろしい感染症だと分かった!
劇症型溶血性レンサ球菌、通称人食いバクテリア感染症に感染したのだ。


顔半分を失い、再建手術を受ける


体内に侵入した「溶血性レンサ球菌」が、つぎつぎと細胞を壊死させてゆく症状。
実はこの菌、我々の身近にごく普通に存在している。


子どもの咽頭炎や、"とびひ"の原因としてありふれた細菌だが、
この菌が筋肉や血液に侵入して激しく動きだすと、体の細胞を壊していくことがある。


一刻も早い抗生物質での治療が必要だったのだが、整形外科医はこの症状に気付かなかった。
ドナの場合、いつ感染したのかは不明だが、額の傷から菌が侵入したと考えられる。


治療にはペニシリンなどの抗生物質が有効だが、
壊死してしまったところはもう回復する事はなく、拡大を防ぐためにも切除するしかない。


ドナはこの2日目の段階で、抗生物質の投与が必要な状態だったが、
感染症に詳しくない外科医は、それを見抜けなかった。


3日目には、顔左半分の広い範囲に壊死が広がってしまっていた。
このままでは、全身に菌が広がってしまう。
それを防ぐために眉の辺りから口元まで、顔の筋肉が露出するほど深く取り除かれた。


これにより...なんとか命は取り留めたが、ドナは顔の半分を失ってしまった。
そんな彼女に医師は再建手術を勧めた。


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他の場所から皮膚を取ってきて、顔に移植する再建手術。
ドナの場合、皮膚組織の深くまで取り除いたため、移植するのも血管を含む皮下組織が
必要となる。


そこで彼女の太ももの組織を切り取り、失われた顔半分へ移植された。
細い血管をつなぐ難しい手術は11時間にも及ぶものとなった。


適合せず壊死する部分もあるため、大きめに移植する必要があった。


その手術から1年3か月。
見た目を修復する手術を受け、顔のふくらみはずいぶん小さくなっていた。


移植に使われた太ももの傷も大きい。
医師によると何度か手術をすれば、見た目もかなり回復するという。
このあと少なくとも2回の手術が予定されている。


日本で人食いバクテリアによる感染症は去年なんと500件以上報告されている。
ケガをした後などに耐え難い痛みが出たり、発熱や強いだるさなどの症状があったら、
早く病院へ。

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