放送内容

2018年7月31日 ON AIR

光を取り戻した未来の手術

2004年、仰天ニュースはある女性を紹介した。


イギリスに住むジュディス。彼女は、光を失っていた。
何度角膜移植をしても、眼が見えるようにならなかったのだ。


そんな時、当時開発されたばかりのある特別な手術を受けたことで、
なんと視力が、1.0まで回復!


当時の新聞記事には『人生に新たな光を見いだした』と、奇跡の手術として報じられた。


あれから14年、女性の視力をとりもどした奇跡の手術は進化を遂げ
日本でも行われていた。


夢を叶えた男性に...難病が襲いかかる


仰天スタッフは、その奇跡の手術を受けた、東京に住む男性を訪ねた。
健二郎さん、65才。現在、妻と2人で暮らしている。


今から37年前、念願だった居酒屋を開業。
人と話すのも、料理を作るのも好きな健二郎さんの生きがいとも言える場所だった。


異変が起きたのは、およそ10年前のこと。
風邪の症状を感じ、開店前、買い置きしていた市販の風邪薬を飲んだ。


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店に来てくれるお客さんのため、多少の体の不調くらいでは休むことはなかった。
しかし、翌日も熱は下がらず、朝起きた時から目が痛む。


さらに口の中にも違和感が。
口の中には、ぶどうのような血マメがいくつもでき、裂けていた。


その後、妻と一緒に病院へ行ったが、医師の診断は風邪。
しばらく、様子を見ることに。


しかし3日後、健二郎さんの体の様子が急変した...。
なんと全身に発疹や血が混じった水ぶくれができていた。
直ちに救急搬送...そして後日判明した病名は「スティーブンス・ジョンソン症候群」だった。
「スティーブンス・ジョンソン症候群」は、薬やウイルスに対して体の免疫機能が過剰に反応しておこるとされる激しいアレルギー症状。
高熱、発疹、水ぶくれや粘膜の炎症といった激しい症状が、全身に短期間に現れる。
特に皮膚が剥がれた面積が10%以上になると、中毒性表皮壊死症(TEN)と診断され、
命の危険性もある。


健二郎さんも、これに該当。
全身は火傷のようにただれ、39度の高熱で意識不明の重体に。
医師から、命が助かる確率は20%ほどと言われた。


命は助かったが視力を失った


1か月後、奇跡的に意識が戻ったが、目は強い炎症を起こして瞼の癒着が始まり、
角膜がおかされた。


通常、眼球の先端部分にはカメラのレンズのような水晶体があり、
角膜から入った光は水晶体から硝子体を通って目の奥にある網膜に届く。
健二郎さんはこの角膜が大きく傷ついたのだ。


そして発症から2か月後には、両目は光を感じる程度の状態に。
そこからは生活が一変。1cmの段差さえも、目が見えないため越えられない。


家の中では、目が見えていた時のことを思い出しながら、ゆっくりと移動。
何をするにも時間がかかる。


唯一生きがいとも言える店は、妻が代わりに厨房に立ち、生活を支えた。
健二郎さんもカウンターに座りお客を迎えたが、なんとかもう1度店に立ちたい...
その一心で、角膜移植手術を受けた。


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角膜移植は、角膜が傷ついたりして、光を通すレンズの役割を果たせない場合、
正常な角膜を移植し、機能を取り戻す手術。


移植に使用される角膜は、アイバンクを通じて亡くなった人、
もしくは脳死判定を受けた人から提供される。


しかし、角膜移植を何度受けても健二郎さんの目に光が戻る事はなかった。
そして視力を失って4年後、
医師から、今の一般的な角膜移植では視力が戻る事はないという診断が告げられた。


それは、希望を失う言葉だった...。
しかし、担当医は言葉を続けた。これまでとは違う新しい手術方法があるのだという。


視力を失った健二郎さんがたどり着いたのは、世界で数人しかできない奇跡の手術だった。


患者の「歯」を使う奇跡の手術


その手術を受けるため向かったのは大阪。
近畿大学医学部の福田昌彦医師によると、その特別な手術とは、
歯を根元から取り、それにレンズを組み合わせて、目に移植させるという手術だった。


「歯根部利用人工角膜手術」と呼ばれるもので、
福田医師は14年前に仰天ニュースが紹介したあのイギリス女性の手術を実際に執刀した、
リウ医師からその技術を学んでいた。


その手術は、まずコンタクトレンズに使う有機ガラスをネジのような形のレンズにする。
そしてこのレンズを固定するために使うのが...患者自身の「歯」。


歯茎ごと抜いた「犬歯」を5ミリの板状に削り、中央部にドリルで穴をあけ、
人工レンズを固定する。


出来上がった土台のついたレンズは、いったん眼の下の筋肉に移植。
これは「犬歯」とレンズに新しい肉の組織を形成させるため。 
およそ3か月、この状態でなじませる。


また、この手術は両目に行うと左右の焦点が合わなくなるため、片方の目にしか行われない。
健二郎さんの場合は2度目の手術で肉の組織がついた人工レンズを右の眼球に入れ、
最後に口の中の粘膜をとり、乾かないように眼の表面をカバー。
レンズ部分だけ穴を開ければ、手術は終了。


2011年12月、健二郎さんは福田医師の手術を受け無事、成功した。
現在はメガネをかけた状態で、右目の視力は1.0にまで回復した。


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一方で左目は、スティーブンス・ジョンソン症候群の後遺症で、
たびたび目の癒着が起きるため何度も角膜移植を行なっている。


明るさの調整はできないが、サングラスをすれば外出もできるようになった。
健二郎さんは現在、店の厨房に立っている。見事に復活を遂げたのだ。


この手術は保険適用外のため、現在200万円ほどかかるという。
歯以外の素材を使い、手術時間が短くなればもっと安くなる可能性がある。
今後の研究に期待が集まっている。

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