放送内容

2018年8月14日 ON AIR

八王子スーパー殺人事件

1995年7月30日、午後9時17分
東京・八王子市の「スーパーナンペイ」。閉店後の事務所内で、パートの女性と、
アルバイトの女子高校生2人が、何者かに拳銃で頭を撃たれ殺害された。


そして今年7月、犯人が履いていた可能性があるスニーカーが公開された。
サイズは26センチで丸井やパルコを中心に販売された。


さらに現場事務所のシンク脇にあった灰皿に
たばこの吸い殻11本が残されていたことも新たに公表。


事件から23年...重大な未解決事件は動き出すのか?


無抵抗の女性3人を次々襲った日本の犯罪史上類を見ない、残忍な手口
一体誰が...、なぜ彼女たちが標的になったのか...。


いつもと変わらないスーパーの日常


1995年、7月。東京、八王子市。
スーパーナンペイ大和田店は、八王子の住宅街にある、それほど規模の大きくない
スーパーマーケットだった。


アルバイトを含め、従業員は20人ほど。
16歳の前田寛美さんは、バイトの一人だった。


寛美さんは、高校生活の傍ら、ボランティア活動にも積極的。
地元の老人ホームでは、『真面目で誰にでも気配りができる』と評判だった。


もう一人のアルバイト、矢吹恵さんも高校2年生。寛美さんとは、小学校からの幼馴染。
恵さんは子どもが大好きで、夢は保育士になることだった。
友達との予定を目一杯、詰め込んでいた高校2年の夏休み目前。


パート従業員の稲垣則子さんは、事件のあった7月から、働き始めたばかりだった。
稲垣さんは美人と評判の47歳、独身。


接客業には慣れていた稲垣さんは長年、飲食店を経営していた。
その店を1年ほど前にたたんで生活を切り替え、目指したのは介護福祉士。
事件のあった頃は、その資格試験に向けて勉強中でその傍らのパート勤務だった。


スーパーナンペイの営業時間は朝10時から、よる9時まで。
毎朝、店の2階にある事務所を開けるのは、この店舗の責任者である
スーパーナンペイグループの専務。


出勤すると、まず事務所の金庫を開けるのが日課。鍵と、ダイヤルロックでしめられている。
このダイヤルロックの番号を知っているのは専務と、夜間金庫係と呼ばれる
数人の従業員だけ。


事件直前のある日のこと。
稲垣さんは専務から夜間金庫係に任命された。


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稲垣さんの役目は夜シフトの時に、店が終わったら全部のレジのお金を金庫に入れて
鍵をかけておくというものだった。


当日は盆踊り大会の日だった


そして7月30日(日)。あの事件の日。
スーパーナンペイは週末3日間の特売最終日。
日曜とあって、店はかなりの賑わい。夕方にかけ、さらに忙しくなりそうだった。


午後4時40分すぎ。アルバイトの矢吹恵さんがいつも通り、自転車で出勤。
この日は5時から閉店までの「夜番」だった。


その直後...友人の男性の車で稲垣さんも到着。同じ夜番だった。
仕事の後、この男性と食事に行く約束をしていた。


犯行の時刻が近づく...毎週日曜日は専務は休み。
この日の夜番は、恵さんと稲垣さんの2人だけだった。


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そして、2人がいつも通りレジについて間もなく...
1人の買い物客が、店の前で中をうかがうような男を目撃していた。
年齢は50代ぐらいだったという。


店内は忙しさのピークを過ぎ、6時半。
男性社員も退社の時間となり、店内にいる従業員は恵さん、稲垣さんの女性だけになった。


この店内には、防犯カメラが4台取り付けられており
その映像は、2階の事務所にあるモニターで監視できるようになっていたが、
録画出来ないタイプのものだった。


この日は、店の斜め向かいにある「北の原公園」で盆踊り大会が行われていた。
6時半、祭りがスタート。


いつもは静かな住宅街に大勢の人が集まり、大きな音が鳴り響く。
犯人はこの特別な日を、あえて選んだのか...


その頃...この日、バイトはなかった前田寛美さん。
この先の自分のシフトを確認するため、スーパーナンペイに向かってしまった。


駐車場で目撃された男の影


6時50分、店に寛美さんが到着した。
寛美さんは、恵さんのバイトが終わるのを待って、一緒に祭りに行く。
そんな会話を買い物客が耳にしていた。


夜8時。閉店まであと1時間。
客も少なくなり、稲垣さんは早めに自分のレジを締めた。
この店では、引き出しごと、売上金を2階の事務所まで持って行くのが決まり。


2階の事務所に行くには、一度店の外に出て薄暗い駐車場を抜け、外階段を上る。
事務所の鍵は開いたままになっていることが多く、この日も鍵は掛かっていなかった。


夜8時30分頃。
店内では、何も買わずに辺りの様子を伺う男が買い物客に目撃されていた。


またその頃...、スーパーナンペイのすぐ近所に住む常連客が閉店間際に
アイスを買いにやってきた。


この客と稲垣さんとのやりとりが、被害にあった3人に関する最後の目撃証言となった。


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その頃、盆踊り会場は一番の盛り上がりを見せていた。
夜9時。スーパーナンペイは閉店時間を迎え、恵さんも最後のレジを締める。
レシートに記録された時刻は、夜8時59分だった。


そして恵さんも2階の事務所へ。
全ての売上金は金庫に。ダイヤルが回され、ロックされた。


週末の特売最終日で、祭りの夜でもあった日曜。
金庫には売上金526万円が入っていた。


事務所には従業員の個人用ロッカーもあり、簡単な着替えはここで行っていた。
夜9時3分。太鼓の演奏が始まった。威勢のいい音が響き渡る。


ちょうど、その頃...スーパーナンペイの駐車場でこんな怪しい男の目撃証言がある。
その男は車のライトが当たると、顔を隠すような仕草でその場から離れていったという。


そして事件は起こった


そして、盆踊りは終わった。
夜9時15分。犯行時刻2分前。


稲垣さんが、食事に行く約束をしている友人男性に電話をかけた。
電話を切った時刻は、9時15分。これは、通話記録に残されていた。


この男性の家から、スーパーナンペイまでは車で数分の距離。
男性は身支度をすると、すぐに家を出たという。


犯行時刻が迫る。
そして...「パン!パン!」と近くにいた高校生2人が、銃声のような音を聞いた。


音は計5回。
後に銃声とわかった音。近所の住民複数の証言から、犯行時刻が割り出された。


午後9時17分だった。
その、およそ3分後。稲垣さんを迎えにきた男性がスーパーナンペイに到着。


だが、駐車場で待っているはずの彼女の姿が見えない。
2階の事務所の明かりはついている。男性は、いつか出てくるだろうと待った...が、
20分以上たっても現れない。


一緒に行こうと言っていた店までは、歩いても10分程度。
行き違いになったのかと思い、男性はその店へと急いだ。


しかし店に行っても彼女はいない。
異変を感じた男性は、店の女将と一緒にスーパーナンペイに戻ってきた。


彼女からの最後の連絡が事務所兼更衣室からの電話だったこともあり、女将が階段をのぼり事務所へ。
このとき、鍵は...開いていた。


女将はかなり小柄。入口付近にあったカウンターで、すぐには部屋の中がよく見えない。


不思議に思い、男性も事務所へ。
そこには、変わり果てた3人の姿があった!


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不可解な事件...捜査は難航


2人は慌てて事務所を飛び出し、近くの交番へかけこんだ。
稲垣さんが事務所で電話を切ってから、銃声が聞こえるまでたった2分30秒。


3人は、頭を撃ち抜かれていた。2分30秒ほどの間に殺害されたと思われる。
銃弾は全部で5発。恵さんと寛美さんは、向き合うような形で倒れ、
稲垣さんは金庫のそばにもたれかかるように倒れていた。


3人とも至近距離で頭を撃たれ、即死だった。
当時、スーパーナンペイ近くの国道16号線沿いではスーパーやパチンコ店を狙った強盗が
相次いでいた。


しかし、強盗だとすると不可解な点が...現金には全く手がつけられていなかったのだ。


現場で見つかった犯人の足跡は1種類。
つまり、事務所に押し入った犯人は1人だと考えられている。


その足跡は入口から金庫まで、そして金庫から出口まで直線的に続いていた。
金品を狙った強盗であれば、机の中やロッカーの中など金目のものがありそうな場所は、
手当たり次第荒らすはず。


しかしこの犯人は、そばにあった3人の財布などにも手を出さず、逃走していた。
金庫には鍵がさしたままだったが、なぜか銃弾のあとが残っていた。

もしかすると、犯人は3人を殺した後、金を奪おうと思ったのか?
それとも、何かの理由で金を諦め逃走せざるを得なかったのか?
あるいは、金はそもそも狙っていなかったのか?


捜査は難航。
実は3人の殺害方法にも不可解な点があった。


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恵さんと寛美さんは、手首を粘着テープで縛られ、頭を1発ずつ撃たれた状態。
一方稲垣さんは、頭を2発撃たれた状態で手を縛られていない。
3人とも至近距離からの銃撃。


つまり犯人には、無抵抗の3人を確実に殺そうという強い意志があったことが伺われる。
しかも、使われた拳銃は、38口径・回転式と判明。非常に殺傷力が高い拳銃だった。


いつしか未解決事件の代名詞に


犯罪心理学者によれば、衣服の上からではなく
特に頭部などを心の乱れなく撃てる人間は日本には少ないという。
至近距離で確かな狙いで撃つ。


一体、こんな犯行ができるのはどんな人物か...
人を殺すことに慣れている人物か、はたまた、人を殺すことを何とも思わない人物か...
真夏の夜の悪夢だった。


なぜ、彼女たちの将来が...、夢が...
一瞬にして奪われなければならなかったのか?


警察は強盗を装った怨恨を疑い、被害者に関わるほぼ全員を調べた。
調べを行った対象は、3ケタの人数に上ったが、犯人につながらない。


怨恨だとしても、不可解な点がある。
まずは、スーパーで働いていたこと以外、3人に大きな関わりがない。
では、なぜ3人が狙われたのか...3人のうちの誰かを狙ったのか...?


捜査の中で犯人が履いていたと思われる靴がわかった。


2010年の警察の発表で明らかにされた、犯人のものと思われる靴は、
どこにでも売られているようなスニーカー。
足跡からの特定なので、色までは分からないが、
靴のサイズは24.5センチから26センチの範囲に絞られた。


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あらゆる可能性が考えられるまま捜査の月日は流れる。
「スーパーナンペイ事件」はいつしか未解決事件の代名詞になっていった。


そして事件から23年がたった今年7月。
警視庁は、事件当日にスーパーナンペイで最後に買い物をした男女の情報を明らかにした。男性は身長177センチくらい。
女性は髪が肩までのストレートで、白いセダン型の車に乗っていたという。
この男女は、犯人を目撃している可能性があるという。


そしてスニーカーについても新たな事実が。
足跡を詳しく解析し、サイズを26センチと特定。
犯人が履いていたとみられる靴を公開した。
それは、2種類の色違いの靴、合わせて9足。


それらは1990年頃に国内で533足販売され、現在は生産されていないもの。
警視庁は、スニーカーの販売店、パルコや丸井などに一緒に買いに行ったことがある方や
あるいは持っていた人を知っているという方からの情報を広く呼びかけている。


3人が射殺された悲惨な事件。犯人逮捕を心から願う。

【情報提供】

八王子警察署特別捜査本部 042-621-0110

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