放送内容

2018年9月11日 ON AIR

ベビーハルクと呼ばれる少女

アメリカに住むマディソン・ガトリンちゃん。
人は彼女を「ベビーハルク」と呼ぶ。
アメリカンコミックに登場するヒーロー"超人ハルク"と少女を関連づけてそう呼んだ。


可愛らしい顔をしているが、彼女の体は超人ハルクのように、腕と胸が肥大している。
それはある珍しい病との闘いだった。


腕が肥大した赤ちゃん


2014年、ジョニとカイル夫婦は2人目の子どもとしてマディソンを妊娠。
しかし、15週目のエコー検査でのこと。
医師から、お腹の赤ちゃんは見た目に何らかの異変があるかもしれないと告げられた。


あらゆる病気の検査をしたが原因はわからず、両親は不安にかられる毎日。
その一方で赤ちゃんはどんどん成長、お腹は大きくなっていった。
そして37週目の検査の時、緊急の帝王切開手術が行われた。


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こうして生まれたマディソンは3600gの大きな女の子。
そして...その腕は肥大していた。


すぐに専用機でテキサスの子ども病院へ。
診断の結果、血中の鉄分が不足していたが、それ以外は特に悪い所はなかった。


15人もの医師が診断し、3か月が経ってようやく病名が判明した。
マディソンはクローヴス症候群という、非常に珍しい病だった。


クローヴス(CLOVES)症候群とは、遺伝子の突然変異により脂肪細胞の増殖、血管奇形、色素斑、側弯症、手足の肥大など様々な症状が現れ、進行すると骨、皮膚や脂肪組織が
肥大し見た目が大きく変化する。


この病自体が直接生命に影響することはないが、歩行困難など機能障害が生じたり
神経を圧迫して神経麻痺が生じる。


すぐに脂肪組織を切除したかったがマディソンはまだ小さすぎた。
体が手術に耐えられるぐらいまで成長しないと切除はできない。
しかし、その間も脂肪細胞は成長を続ける。


肥大している皮膚の隙間にばい菌が入りやすいため、
母は毎日丁寧に拭き取り、家族はマディソンに愛情を注いだ。
さらにマディソンは圧迫服を着用し、脂肪組織の肥大を抑えた。


こうした懸命のサポートによりマディソンは歩く事ができるようになった。
脳や臓器も全く問題なかった。


母の一言が周囲を変える


しかし人前に出ると、周囲からの好奇の目にさらされた。
マディソンを哀れんだり恐れたりして欲しくなかった母。
だから冗談で、子ども達にこんなことを言った。


母「この子はね、あの超人ハルクの娘なのよ」


母は人気のヒーロー、超人ハルクを娘と重ね合わせたのだ。


すると、それを聞いた子ども達は大興奮!
むしろ尊敬のまなざしでマディソンを受け入れた。


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小さなハルクは辛い治療に耐えた。
細胞の異常増殖を防ぐため患部に針を刺し、溜まったリンパ液を抜き取り、
硬化剤を注入する大変な治療だった。


そして手術が出来るまでに成長したマディソンは、去年5月と今年4月に2度手術を受け、
肥大した組織の切除と、背中の脂肪吸引で600ccものリンパ液を取り除いた。


その費用は合わせて約45万ドル。
日本円にして約5000万円以上もかかったが、父親の会社の保険でほぼまかなわれた。  


現在は腕も胸も細くなっており、洋服を着れば全くわからない。
ただ、正常な組織と異常な組織の境目がわかりにくく、完全に切除することは困難。
切除しても、残りの病変がまた肥大してしまうという。


将来はお医者さんになりたいというマディソン。
人を救う超人ハルクのようなヒーローになりたいそうだ。

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