過去放送内容


脳の不思議SP パート7

ゲスト:ハイキングウォーキング 藤井隆 三浦奈保子 安めぐみ (50音順)

 違いに苦しんだ女性

次回予告
違いに苦しんだ女性/バンジョーを弾きながら脳手術














泉流星さんは生まれつき人とは少し違っていた。彼女の半生は苦悩の連続だった。3歳の頃に字を覚え、4歳でもう小学1年生レベルの本を読むようになった泉さんだったが、幼稚園に入園し、初めて外の世界へ出ると混乱した。男女の区別という考え方を全く理解できず、自分は他の子供たちと何かが違うと感じた。そしてその違和感は小学生になって次第に強くなった。関西で生まれ育ったのに、一人標準語で話していたため、周りからは浮いている存在に見られた。大人に対してはさらに堅苦しい敬語を使う。

その違和感の原因は、実は彼女の脳の機能の偏りにあった。「アスペルガー症候群」。発達障害の一種で、脳機能の偏りであることは確かだが、未だ正確には解明されていない。
アスペルガー症候群のあらわれ方は人それぞれ。実際、彼女は、場の雰囲気を読んだり、全体の状況をつかむことができず、言われたこと以外は何をしたらいいか分からなかった。
相手が嫌がっていてもその事に気付かず、自分は「世の中」のルールが分からない…そう思い、たくさんの本から理解しようとした。読書量の多さで得た知識のおかげで、勉強は特に問題なかったが、耳から聴くことは苦手で、相手の調子や話のペースに合わせることがうまくできなかった。

やがて中学生になり、受験勉強が始まると、アスペルガー症候群の特性のため、新たな困難が立ちはだかった。泉さんはたくさんのな色が使われている参考書がダメだった。カラフルになっていると注意が散漫になり、どこが大事な部分なのか分からなくなるのだった。そこで、白黒で印刷された参考書を探し出した。そして全てのページを繰り返し見ることで、写真に撮るようにくっきりと画像として記憶した。高校には無事合格、2年生の時にはアメリカ留学も経験し、東京の大学へ進んだ。卒業後は地元関西で、流通・小売業関係の会社に就職。だが、またここでもアスペルガー症候群の特性のため苦労する。

配属されたおもちゃ売り場では、お釣りを間違えることはしょっちゅうで、電卓を使った簡単な伝票計算もこなせない。実はその原因は環境にあった。強い蛍光灯の光の中で一日中働くと、ぼーっとなってしまい、冷静でいられなくなるのだ。また、聴覚が敏感な故、売り場の騒音が注意力を散漫にしてしまう。さらに接客でも苦労した。人の雰囲気がうまくつかめない泉さんは、客に声をかけるタイミングが全くわからず、また、丁寧に対応しているつもりでも、客には不愛想で誠意がないように映っていた。同時に複数のことをこなすのが苦手な特性のため、電話をしながらメモととることもうまくできない。これ以上周囲に迷惑はかけられないと、2年半勤めた職場を辞めた。

その後、知人から紹介された男性と交際を始め結婚。夫の住む地方都市に移り住んだが、新婚生活は彼女にとって大変なものだった。元々片付けや掃除が苦手な上に、夫の寝息やイビキがどうしようもなく気になって、ゆっくり眠ることができなかった。家の中に自分以外の人間がいるという新しい状況に、なかなか慣れることができなかった。夫に不満があったわけではないが、不安がつい口に出てしまう。泉さんは夫のことを知ろうと努力し、雑誌から夫の趣味についてたくさん知識を仕入れたが、肝心の夫という人間については分からないままだった。やがて人の感情が読むことが難しい彼女は、はっきり分かる形で愛情を示して欲しくなり、夫にいろんな確認をし始めた。夫は優しく応えていたが、やがてケンカの絶えない日々に…。泉さん自身、この状況を改善するため、「夫婦関係」や「心理学」の本を必死に読んだ。そして出た結論…それは、自分には言葉にされない人の気持ちは分かりづらいので、なるべく具体的な言葉で確認し合おう、というもの。夫はできるだけの協力を約束し、彼女自身も夫への感謝は普段から意識して言葉や態度で表わすようにし、苦手な片付けもスケジュール表作るなど工夫して頑張った。

そんなある日、泉さんは一冊の本に出会った。そこに書いてあるあらゆることが自分に当てはまる…。そこで専門医を訪ね診察を受けると、「高機能自閉症・アスペルガー症候群寄りと言える」ということだった。自分は人とは少し違った脳を持っていることを知り、ある意味安心したという泉さん。これまでずっと感じてきた周囲との違和感の理由が分かったからだった。本人は「アスペルガー症候群」に関して、「見た感じと中身の気持ちが一致しないことが多く、外見でなかなか判断できない人が多い。なので、見た感じでこの人は多分こうだろうと普通の人たちの感覚を押し付けないで、是非とも直接声をかけてその人自身を知る努力をして欲しい」と言う。現在、泉さんは自身の経験を元に、本を書いたり、翻訳の仕事をするなど、直接人と関わる事が苦手という自分の特性に合わせた形で社会との関わり日々を過ごしている。
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