悲願の物語

山梨学院大学〜雑草軍団の挑戦〜[3]

そして、運命の68回大会を迎える。その年度の駅伝シーズンは順風満帆だった。
先ず、駅伝シーズンの到来を告げる出雲くにびきロードリレーでは念願の初優勝。
しかも、箱根駅伝2連覇中の大東大を破っての優勝ということで、箱根にも期待を持たせる内容だ。
続いての全日本大学駅伝も準優勝と、着実に優勝争いをするチームは出来上がっていた。
後は箱根での結果のみ。オツオリとイセナは今年4年生、最後の箱根駅伝。ここで何とか優勝をつかみたいところだ。

快晴の中、スタートの号砲が鳴らされる。1区は1年生の井幡、重圧の中好走、区間新記録を樹立した早大武井から遅れること1分5秒差の5位で2区へとタスキを繋ぐ。

2区は4年連続のオツオリ、今年も区間賞ならば4年連続2区区間賞という、前人未到の快挙達成がかかっている。スタートから10kmまでは順調に4人をかわし2位に浮上。しかし、そこで信じられないシーンを目の当たりにする。オツオリが抜かれたのだ。
オツオリを抜いたのは順大本川、並ぶ間もなくあっという間にオツオリを抜き去っていった。本川はそのまま1位の早大も抜き、8人抜きの快挙で1位へ浮上。まさに沢木マジック、恩師の采配に舌を巻く上田。しかし、ここで負けるわけにはいかない。オツオリもそこから何とか粘り、早大を抜いて2位でイセナへ望みを託す。オツオリの4年連続区間賞の夢はついえた。

3区イセナはこれまで、箱根ではさしたる成績を残してはいない。しかし、最後の箱根で、今までのオツオリの活躍を上回るような働きを見せる。中盤でトップ順大を鮮やかに抜き去ると、そのままの勢いでゴールまで駆け抜けた。記録は1時間3分45秒。区間新記録の快走だった。

この快走で勢いのついた山梨学院大学は、4区、5区と1位を守り抜き、遂に1番でゴールテープを切る。念願の往路初優勝である。これで総合優勝も見えてきた。
しかし、油断はできない。大東大の6区には区間記録保持者島崎が控える。まだまだ余裕をもてるほどの差ではないのだ。

そして翌日、往路のスタートが切られる。6区は箱根初出場の広瀬。大東大島崎に注目が集まる中、広瀬が周囲をあっといわせる快走を見せる。区間記録保持者を向こうに回し、2秒差の区間賞獲得。ここで2位に3分以上の差をつけた。

7区、8区と1位でつなぎ、しかも8区下山は4年生で初出場ながら、こちらも区間賞という走り。2位以下を再び突き放す。

9区比嘉も無事にタスキを渡し、10区はキャプテンの野溝、万感こみ上げる中一度もピンチを迎えることなく走りぬけ念願の初優勝のゴールへ。

そこには監督・チームメイトが待ち受ける。アンカーの野溝は涙を流しながらゴール。遂に上田の挑戦は優勝という一つ目のゴールに到達した。創部7年目、箱根駅伝出場6回目での総合初優勝の快挙である。監督の指導力、学校の協力を惜しまぬ姿勢、そしてもちろん選手たちの努力が実を結んだ結果だった。その日は選手・関係者みんなが喜びに浸った。

しかし、その直後上田は勝ったにもかかわらず、頭を丸めた。それは、勝ったからこそする、自分への戒めだった。上田の座右の銘にこういう言葉がある「驕るなよ丸い月夜もただ一夜」。満月はただ一夜しかなくあとは欠けていくだけ、現状に満足せずに努力を続けろ。その言葉通りに、その後も山梨学院大は2度の優勝と3度の準優勝という、現状に満足しない活躍を見せ、新世代の伝統校としてこれからも箱根路を沸かせてくれる事だろう。