ドラマは、原作を離れて自由である。
ぼくの小説が戦後六十年経った現在、違う形となり、今を生きる人たちに、戦争の惨たらしさを少しでも伝えられれば、原作者として有難いこと。「火垂るの墓」は、戦時下を懸命に生き、死んでいく、美しい兄妹愛のお話と受けとめられている。だが、実際のぼくは生き残り、さらに、あんなに優しい兄ではなかった。あの時代は、誰もが生きにくかった。男たちは命を懸け、女たちもまた戦っていた。

 ぼくは、戦場は知らない。けれど戦争は空襲で焼け出された者として身にしみて知っている。戦争を知らない世代にぼくが伝えること、戦争は何も生まない、戦争は人間の判断を狂わせる。

 今の若者にとって、国際情勢や国内における問題は、自分たちの頭上をただ通過していく雲のような存在であるらしい。それが直接戦争へと結びついていなくても、どこかで関わり合いを持つ。日本は、少しずつ戦争に近づいている。
 先のことを本気で考えられるのは、これからを生きる若い世代なのだ。
 新聞やテレビなどマスコミで報道されている内容について、鵜呑みにしてはいけない。それが正しいのかどうか、まず疑ってみること。
 さらに、大切なのは言葉。意見が違っても構わない。自分の言葉をつかって、他人と喋りあうこと。それは、国と国とが喋りあうことに繋がるのだ。
「ザ・テレビジョン」No.44号より