第500回日本テレビ放送番組審議会は、『家売るオンナ』に関しての合評を行いました。(リポート提出2名)
大石静脚本のこのドラマは、「私に売れない家はありません!」が口癖の北川景子演じるスーパー営業ウーマンが、様々な問題を抱える客に対し、家を紹介しながら、生き方を提案していくドラマです。

  • 主人公のスーパー販売能力は『水戸黄門』の印籠みたいな役割を果たしていて、強引に売っていくところにスッキリする感覚を覚える人も多いのではないかと思った。ただ、主人公が客のところに行く時のファッションが気になった。きちんとしたビジネススタイルから出る色気でアピールするのも手ではないかと思う。
  • 脚本家の大石さんは、世間の常識や社会通念に対して噛みつく毒のある作品を書くタイプなので、そういう毒が、今後どう盛られていくのかが楽しみの一つだと思う。
  • 衣食住、性、お金などをテーマにしているものは大事だと思っているので見るが、インテリアや不動産を取り扱う時は適当なことが多いのに、今回は不動産の物件をよく探していて上手だと思った。
  • イモトが演じるダメな女性が上手い。今後、どんどん成長していくのだろうと思うが、若い視聴者に「一生懸命やることはステキなことだ」というメッセージを送っているのではないかと思った。
  • ガムテープをぐるぐる巻きにするシーンがあったが、あれはパワハラではないかと思う。テレビを見る若い人が、ああいう風にやってもいいと思ってしまうと、行き過ぎな感じがする。
  • 世の中がパワハラと言われることで縛られすぎて、言いたいことも言えなくなって来ているので、コメディの世界でやる痛快感があるのではないかと思った。一番気になったのは枇杷の木を挿し木にしたというシーンで、挿し木はあんな状態では出来ないこともあり、ああいうシーンで嘘があると残念だと思う。
  • 本来、営業は女性が一番得意な分野ではないかと思っているが、主人公の営業では女性の良さがあまり出て来ていないので、もう少しうまく出せばいいと思った。
  • 「パワハラが人を育てることがある」と主人公が断言したが、これこそ、脚本家の大石さんが言いたいことではなかったかと思う。 みんなが触らずじまいのことにあえて挑戦しているところが、今後どうなっていくのか楽しみだと思う。
  • 家を売る、買うのは一組の人間たちの関係を売買することで、家の数だけ物語が生まれる。不動産業という特殊な社会にある、一般社会とは異なったやり方や、生き方、考え方をもう少し見たいが、マンガ的な描写はやりすぎないで欲しいと思う。
  • 決して綺麗ごとの家を売る話ではないところが、流石だと思った。脚本がよく練られていて、つまらない常識を気持ちよく突破してくれる作りになっているところが、素敵なドラマだと思った。

この御意見を受けて、日本テレビ側は次のように答えました。

「現代社会にある問題を、明るく、楽しく、コメディという世界の中で描きたいと思って始めたが、コメディのふりをして、裏には人生の哲学が隠されている。今後も、脚本の意図を組んだ演出や、細部へのこだわりを忘れずに制作していきたい。」