刑事鬼貫八郎(15) 『愛の軌跡』 |
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![]() 都内の廃屋で伊吹忠生(天宮良)という編集プロダクション社長の他殺死体が見つかった。42歳の伊吹は独身。会社が設立された10年前から経理を担当してきた中島雅子(あめくみちこ)の話によると、会社の業績はこの2、3年ずっと安定していた。解剖で胃の中から未消化の鰻が検出されたことから、捜査陣は伊吹のサイフにあった鰻屋のレシートを元に足取りを追い、同時に人間関係の調査を開始した。 鬼貫(大地康雄)は、伊吹が事件前に電話をした2人の人物を調べた。1人は、プロダクションの取り引き先の出版社企画室長・鏑木博文(河原崎建三)、もう1人は、伊吹が以前契約していた生命保険会社の外務員・新関さつき(川上麻衣子)。このうちさつきは、伊吹とは全く仕事だけの付き合いだったと話し、事件当時は、同僚と酒を飲んでいたとアリバイを主張した。だが、自殺未遂を起こした雅子が、伊吹の内妻だったことがきっかけで、伊吹とさつきが関係していたことが判らかになった。 そんな中、鬼貫は、さつきが1年前に遭遇した痴漢騒ぎに注目した。これは、さつきが電車内で木原二郎(平田満)という男から痴漢行為を受けたとして訴えた事件。この木原が鏑木と同じ出版社の企画室勤務だったのだ。木原は、騒ぎの後、一貫して無実を主張したが、会社や家族のためを考え示談に応諾。だが、この騒ぎがライバル会社に漏れて報道されたことから、木原は退職を余儀なくされ、家庭も崩壊していた。 鬼貫の聴取を受けた鏑木は、伊吹から電話を受けた後、海外に行ったと事件とは無関係だと主張し、木原の件に関しては言葉を濁した。だが、鏑木は、木原が失脚したことで企画室長に就任。伊吹が鏑木と太いパイプを持っていたことから、伊吹がさつきを使って痴漢騒ぎをでっち上げた可能性が出てきた。 問題の木原は、出版社を辞めた後、タクシーの運転手をしていた。鬼貫は、さつきが謎の車に轢き逃げされそうになったことから、木原への疑いを強める。だが、鬼貫が会った木原は、吹っ切れた表情で、全ては過去のこと、と事件への関与を否定。業務中だった木原のアリバイは、タコメーターが証明していた。 まもなく、タクシー営業所近くの喫茶店で偶然さつきを見つけ話をしていた鬼貫は、そこに現れた木原に気付いた。鬼貫がいることを意識してか、棒立ちで見つめ合うだけの木原とさつき。さつきは仕事で立ち寄ったというのだが、思わぬ場所での思わぬ遭遇を目の当たりにした鬼貫は言葉がなかった。 しばらくして、商店街の防犯カメラの映像から、さつきを車で襲おうとした犯人が、鏑木と判明。鬼貫の追及に対し、鏑木は、木原を失脚させる工作を伊吹に頼んだことは認めつつも、伊吹殺しは否認した。そして、犯人がさつきだと言い張る鏑木は、伊吹が殺される前、“無実の罪を着せられた木原を職場復帰させろ”との内容の匿名の手紙を受け取ったことを明かした。 鏑木が真犯人だとの空気が捜査陣内で強まる中、例の喫茶店を訪ねた鬼貫は、木原とさつきの意外な関係を知って――。
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