刑事鬼貫八郎(16) 『死のある風景』 |
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![]() 都内のアパートで桑原義典(藤井びん)という医療機器メーカーの営業マンの刺殺死体が見つかった。捜査陣は、桑原にギャンブルで作った多額の借金があったことから、そこに重点を置いて聞き込みを進める。だが、鬼貫(大地康雄)は、桑原がファイルしていた交通死亡事故の新聞の切り抜きに注目して、捜査に乗り出した。 2ヶ月程前に起きたこの事故は、離婚後、女手一つで子供を育てていた石山智子(渡辺典子)という食堂の店員がひき逃げされたというもの。事故を担当した所轄は、逃げた運転手がすぐに出頭してきたことから、事件性はないものとして処理していた。事故後、緊急手術を行った外科医・鳥居幸子(川島なお美)は、搬送されてきた智子の内臓がひどく損傷していたため、助かる見込みは最初から微妙だったという。 ところが、桑原が所持していた名刺から、智子が担ぎ込まれた病院の事務長・岡田孝治(半海一晃)が個人的に桑原に金を貸していたことが判明。まもなく、援助交際をしていたことをネタに、岡田が桑原に強請られていたことが明らかになった。 さっそく岡田の事情聴取を行った鬼貫は、思わぬ人物の名前を耳にした。強請りに耐えかねた岡田は、桑原に別のターゲットを教えていたのだ。そのターゲットとは、鳥居幸子の夫で、有名大学で助教授をしている鳥居達彦(益岡徹)。 岡田は、鳥居が幸子以外の女とホテルから出てくるのを目撃し、この話を桑原にしたらしいのだ。鳥居は、離婚を前提に幸子とは3ヶ月も前から別居中。まもなく、その女性が智子だと認めた鳥居は、離婚後、再婚するつもりだったと明かし、強請りをかけてきた桑原を追い払ったと答えた。 そんな中、智子が事故に遭った当日、幸子が住む目黒方面に行きその帰りにどこかで飲んだことが分かった。もし、なかなか進まない離婚に業を煮やした智子が幸子に会ったとすると、幸子は夫の不倫相手と知りながら智子の手術をしたことになり、微妙な問題が絡んでくる。幸子が瀕死の智子をわざと見殺しにしたのかどうか、という問題は別にして、この事実を掴んだ桑原が、鳥居夫婦のどちらかを強請って殺された可能性が極めて高い。 まもなく、智子の墓に熊のヌイグルミが置いてあったと知った鬼貫は、ある可能性を考え、幸子に重点を置いて捜査を進めた。だが、鬼貫の聴取に対し、幸子は、桑原が殺された当時、愛知県の豊橋で開かれた学会に出席するため、長野県の上諏訪から飯田線に乗っていた、とアリバイを主張して――。
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