金印映画館
ネイキッド・タンゴ
 
NAKED TANGO

1991年 アメリカ映画
シュガーロック・プロ作品 

8月11日(水) 深夜2:15〜4:10


 監督・脚本 レナード・シュレーダー
 製  作  デビッド・ワイズマン
 テーマ   マニュエル・プイグ
 撮  影  ファン・ルイス・アンチア
 音  楽  トマス・ニューマン
 振  付  カルロス・リバロラ
 衣  裳  ミレナ・カノレロ

 <キャスト>
   マルチダ・メイ
   ヴィンセント・ドノフリオ
   イーサイ・モラレス
   フェルナンド・レイ
   サイプ・リンコブスキー
   パトリシオ・ビッソ


解説・見所
 
 1ヨーロッパからアルゼンチンへ向かう豪華客船の上で、二人の女性の人生が交錯した。
 
19歳のステファニーとアルバ──。
 
夫との偽りに満ちた結婚生活に憤りを感じたステファニーは、海に身を投げたアルバになりすまし、彼女の人生を生きることを決意した。
 
その瞬間、ステファニーの女としての旅が始まる。
 
アルゼンチンで待っていたのは、今までの彼女の生活とは余りに掛け離れた世界だった。
 
妖しげなタンゴ・バーに監禁され、娼婦にまで身を落とし…。
 
だが、それは悲劇と呼ぶにはあまりに美しすぎる愛の始まりだったのである。
 
 「蜘蛛女のキス」の脚本家として知られるレナード・シュレーダーが、同作者の原作者であり、ラテン・アメリカ文学界の旗手であるマニュエル・プイグと共に暖め続けていた愛のテーマが、シュレーダー自らの演出により映画化された。
 
 舞台は1920年代初頭のアルゼンチン。ここでは“タンゴ”は単なる舞踊にとどまらず、男女間の性愛のメタファーにまで昇華される。
 
その創世記から1920年代末に至るまでの間。タンゴは最も高貴なデカダンスな舞踊であり、ダイヤモンドの原石のような純粋さと、危険なまでの官能性を合わせ持っていた。
 
だが、時代の流れはタンゴから、その毒性を抜き取り、様式化した舞踊の一形態に封じ込めてしまった。
 
シュレーダーは、タンゴが“悪魔の踊り”と呼ばれた映画に敢えて立ち返ることにより、タンゴ同様に矮小化される以前のむきだし(ネイキッド)の情熱を描き出していく。
 
その時、あらゆる感情は燃え尽きることを目的とする。
 
ロマンスは甘い余韻を失い、優しすぎる偽善とみなされる。
 
 その象徴が、ヒロイン・ステファニーの心を奪うチョーロという男である。
 
自分自身とタンゴしか愛したことのない孤独な男、その危険な美しさ…。
 
彼はステファニーを他の男の腕に抱かせながらも、自分以外の男と踊ることだけは許さない。
 
彼にとって、タンゴとはセックスを超えた愛の行為なのだ。
 
 ステファニーを演じるのは、カトリーヌ・ドヌーブ以来の大女優と評される、「タラップ」「想い出のマルセイユ」のマチルダ・メイ。
 
輝くような美貌、肉体美、情熱的な黒い瞳。そして、セザール賞最優秀新人賞を受賞した才能で、フランス映画界の注目を一身に集めている。
 
ステファニーが恋に堕ちるタンゴ・ダンサー、チョーロ役にヴィンセント・ドノフリオ。
 
そのストイックな魅力は、大きな話題を呼んだ。
 
この他、ブニュエル作品で有名なフェルナンド・レイ、「ラ・バンバ」のイーサイ・モラレスといった実力派の俳優がドラマを盛り立てている。
 
  冷酷なまでに研ぎ澄まされたブルーと、情熱と官能を表す赤──その圧倒的な色彩にいろどられた濃密な様式美。
 
耽美的な空間の中に揺れ動く男と女…。
 
時に激しく、時に繊細に、「ネイキッド・タンゴ」の幻惑的な魅力は観る者を抗し難い力でひきずり込み、離さない。
 

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物語
 

 1924年、19歳のステファニー(マチルダ・メイ)は、40歳も年の離れた富豪の夫トーレス(フェルナンド・レイ)と共に、ヨーロッパからアルゼンチンへ向かう客船にいた。
 
ある日、デッキにたたずむステファニーの目前で、彼女と同じ年頃の少女が海に身を投げるが、トーレスはそれがステファニーだと誤解する。
 
無邪気な悪戯心から、ステファニーは身を潜めて夫の様子をうかがう。
 
だが、妻の死を悼むどころか、家名を重んじるあまり事件を揉み消そうとするトーレスの姿に失望した彼女は、自殺した少女になりすましたままアルゼンチンの地を踏むことを決意する。
 
少女の名はアルバ。
 
貧しさ故に、ポーランドからアルゼンチンの見知らぬ男のもとへ嫁ぐ途中だった。
 
 アルゼンチンでアルバ(ステファニー)を出迎えたのは、夫となるジーコ(イーサイ・モラレス)だった。
 
陽気でハンサムなジーコに初めは心を許しかけるが、その夜、ジーコは手に入れたダイヤモンドの代価として、イタリア人宝石商に新妻であるアルバを抱かせようとする。
 
抗うアルバ。
 
手にしたナイフは宝石商の胸を貫く。
 
彼にとどめをさしたのは、チョーロ(ヴィンセント・ドノフリオ)という男だった。
 
この事件はジーコらユダヤ人グループと、イタリア人組織との緊張を高めた。
 
チョーロはアルバの身を隠すために、放心状態にある彼女をジーコの経営する妖しげなタンゴ・バーに連れ込む。
 
豊かなブロンドは黒く染められ、神秘的にかたどられた天蓋付きのベッドの足元に、獣のように鎖でつながれ…。
 
踊り子として、娼婦としての新しい生活が始まる。
 
行き場を失った絶望に、もはや彼女には逃げ出す気力も残っていなかった。
 
 仲間の娼婦が、アルバに告げる。
 
「チョーロは自分自身とタンゴしか愛せない男よ」。
 
──彼は抗うアルバにタンゴのすべてを教え込む。
 
タンゴの秘める情熱、悲劇、官能、魔性…。それは、虚飾をはぎ取った危険なまでに純粋な愛の行為にほかならなかった。
 
彼女をジーコに抱かせながらも、他の男と踊ることは禁じるチョーロ。
 
彼は決して彼女を抱こうとはしない。
 
彼の冷酷な魅力の前に、憎しみはいつしか薄れ、背徳の日々の中を堕ちていく自分の姿に、甘美な喜びすら覚え始めるアルバ。
 
そして、彼女は気づく。
 
アルゼンチンに旅立った日の夢見がちな少女も、チョーロの意のままに操られる今の自分も、偽りのない彼女自身であるという事を。
 
 イタリア人組織との抗争が激化した。
 
身の危険を感じたジーコは、チョーロとアルバを組織に売った。
 
追っ手を逃れるうちに離れ離れになる二人。
 
警察に保護されたアルバはステファニーであることが判明し、トーレスのもとに戻される。
 
行方不明の間の記憶を失ったふりをして、何事もなかったようにトーレスとの生活が始まった。
 
アルバからステファニーへ…。
 
平穏な日々の中では、すべては夢だったのだと思われた。
 
そんなある日、ステファニーのもとにタンゴの教師としてチョーロが現われた。
 
繰り出されるステップ──それは、アルバへの愛の告白か…。
 
彼女の心は揺れ動く…。
 


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