解説・見どころ

 最新作「ハウルの動く城」がベネチア映画祭で早くも賞を受賞するなどますます好調の宮崎駿監督作品。前作「千と千尋の神隠し」が日本興行記録を次々とぬりかえたことも記憶に新しい。その人気は、社会現象にもなり、興収304億円、動員数2500万人の日本新記録を樹立、驚異的ヒットとなった。この超大作が金曜特別ロードショーによる8時から登場!!冒頭では「ハウルの動く城」最新情報もお伝えする!

 ファンタジーは現実世界に有効なのか。
 宮崎監督の長年の命題である。『もののけ姫』を超える新たな作品として、あえて現代日本に舞台を据えた『千と千尋の神隠し』は、現実世界と影響しあうファンタジーを創出しようとする宮崎監督の到達点ともいえるだろう。

 この宮崎版「不思議の国のアリス」ともいうべき世界で千尋が出会うキャラクターたちは、今の日本を象徴する寓意にみちている。
 物語の後半の主要キャラクターであるカオナシは、他人とコミュニケーションをとることができない男。金で人をあやつろうという支配欲と、意中の女性に拒絶されると怒り狂う幼児性を持っている。
『紅の豚』のボルコ・ロッソに代表されるように、宮崎監督はこれまでの作品で一貫して強い人物を描いてきた。『もののけ姫』のアシタカやサンにしても、悩みつつも強さは共通している。しかし、カオナシは、自分ひとりではコミュニケーションを取ることすらできないキャラクターである。宮崎監督がその作品の中ではじめて登場させた「弱者」がカオナシなのだ。映画の中で千尋とカオナシの交流は時間を割いて語られていく。
 情報社会といわれて久しい現代。携帯電話やインターネットで、ますます他人との距離は縮まったかのように見えるが、はたして本当にそうなのだろうか。自己と他者のコミュニケーションは便利になった分、ますます複雑になっている。人を好きになったあまり、ストーカー行為に出ること、耐えられないさみしさ、キレるという言葉に代表される鬱屈した感情の発露、こういった性質はすべての人間が持つ本質である。カオナシは私達誰しもがもつ性質を結晶させた現代日本人そのものなのだ。
『千と千尋の神隠し』に描かれるのは、カオナシによって表現される現代人のコミュニケーションについての宮崎駿の考察と警鐘であり、名前を奪われ、自己喪失の不安の中で次第に「自分が自分になる」というアイデンティティを確立していく千尋同様、私達日本人がもう一度「生きる力」を取り戻すこと、これが複雑な様相を呈する未来に立ち向かうひとつのきっかけなのだ、という宮崎監督のメッセージである。

 声の出演には、これまでのジブリの作品同様、異色かつ豪華な面々が結集。主人公・千尋には柊瑠美。テレビドラマ『すずらん』の主人公を務めた13才の彼女が、等身大の千尋を作り出した。千尋を助ける謎の少年・ハクには入野自由。劇場版『ウルトラマンガイア・超時空の大決戦』やCMなどで注目される12才。「不思議の町」の湯屋を支配する魔女・湯婆婆には夏木マリ。その独特の存在感で怪しげな魅力を放っている。千尋のお父さんには内藤剛志、お母さんには声優初挑戦となる沢口靖子。また湯屋のボイラー室を切りまわす人生経験豊かな釜爺には菅原文太が扮し、作品に厚みを加えている。

 音楽はお馴染みの久石譲。『風の谷のナウシカ』から『もののけ姫』までのすべての宮崎作品音楽を担当し、北野武や大林宣彦監督の映画も数多く担当した彼は、いまや日本を代表する映画音楽の第一人者である。今回は不思議な異世界とそこに登場するキャラクター達を音楽で表現し、新たな境地を開いている。

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