耳をすませば
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耳をすませば

恋に進路に悩む中学三年生女子のリアルを爽やかに軽やかに奏でるジブリ的青春恋愛映画

名曲「カントリー・ロード」に乗って描き出す夢見がちな少女が大人の階段を上る瞬間

耳をすませば スタジオジブリ最新作「借りぐらしのアリエッティ」がいよいよ7月17日に公開。今回は、アリエッティと同世代の少女・雫が主人公の、現代を生きる女の子のリアルな日常がヴィヴィッドに描かれている傑作「耳をすませば」を放送!

雫は、本が大好きな中学三年生。理解のある両親と仲の良い友達に恵まれた、恋に恋する「フツウ」の女の子だ。ある日、雫はヴァイオリン職人を目指す同級生・聖司と出会い、電撃的に恋に落ちる。しかし、聖司は中学卒業と同時にイタリアに留学しようとしていた。彼への思いを深めるにつれ、改めて自分の将来について真剣に考え始める雫。そして夢を現実にするために、彼女も小さな一歩を踏み出すのだ。

原作は、柊あおいが「りぼん」に連載した少女マンガ。宮崎駿が少女マンガを映画化!? 公開当時はジブリファンならずとも騒然としたが、宮崎が惹かれたのは、現実には起こり得ないような偶然に彩られた、少女マンガだけが持つ圧倒的に前向きな力。その思いは、エンディングで聖司が放つ痛快なほどに“前向きな”一言に集約されていく。一方で、恋や進路に悩む少女・雫の気持ちの揺れを丁寧に描き出すために、宮崎がこだわったのが中学三年生女子のリアルな生活感。たとえば、団地に住んでいる雫の部屋の描写。一部屋をシェアする姉妹が、仕切りに二段ベッドを使うアイディアは、鈴木敏夫プロデューサーの自宅の間取りがモトになっている。他にも、雫の家にうず高く積まれている本や新聞の山、乱雑なキッチン、雫の親友・夕子の家で父親が観ているナイターの描写(解説は江川卓が担当!)にいたるまで。その徹底したリアルさは、モデルになったと言われる東京・多摩地区にある聖蹟桜ヶ丘で「ロケ地マップ」が配布されていることにも象徴される。

耳をすませば もう一つ、注目したいのが名曲「カントリー・ロード」。オープニング、オリビア・ニュートン・ジョンの歌声に乗って描かれるのは、都心のビルの群れと、駅から家路を急ぐ人々。「カントリー・ロード」を自分なりの言葉で訳そうとする雫は、改めてそんな自分の「故郷」について考えることになる。故郷に帰る、と歌うことは、故郷を出ていくということ。そのためには自らの足で歩ける力を身につけなければいけないということ…。明確な将来の夢に向かって街を出ていこうとする聖司との出会いを通して、雫は自分と向き合い大人への一歩を踏み出していく。彼女の小さな成長が「カントリー・ロード」の歌詞の解釈を通してサラリと描かれ、大人をもホロリとさせる。

監督はジブリが誇った名アニメーター・近藤喜文。ジブリ映画史上に残る美しい朝日のシーンなど、透明感あふれる背景を手掛けたのは、黒田聡、男鹿和雄ら。作画監督は「茄子 アンダルシアの夏」の高坂希太郎…と、ジブリの精鋭が大集結。また、雫が書いた物語パートの背景は、「イバラード」の画家・井上直久による描き下ろし。このシーンでは、ジブリ作品で初めて背景とキャラクターがデジタル処理で制作された。その過程は困難の連続で現場の混乱は想像を絶する状態だったはずだが、作品の随所にトトロや「紅の豚」のポルコ・ロッソが登場するなど、スタッフのこの作品への愛情が伝わる仕上がりになっている。

気持ちが洗われるような清々しいエンディングは、信じて努力すれば夢は叶う、そんな気分にさせてくれる。ジブリが誇る青春恋愛映画の傑作だ。

将来の夢を探してまっすぐに進んでいく純粋な少女と少年の恋のメロディ

耳をすませば 雫(本名陽子)は中学三年生の普通の女の子。受験を控えた夏休みも、学校の図書館と市立図書館をハシゴして、ファンタジー小説を片っ端から読破する本の虫。図書館司書の穏やかな父(立花隆)と大学院に通っているサバサバとした母(室井滋)、勉強も家事もできる面倒見のいい大学生の姉・汐(山下容莉枝)の4人家族だ。

最近気になっているのは、雫が借りる本の図書カードに必ずと言っていいほど書いてある「天沢聖司」という名前の正体。また、コーラス部の親友、夕子(佳山麻衣子)に頼まれて「カントリー・ロード」の訳詞に挑んでいるのだが、都心にほど近い新興住宅街の団地育ちの雫には「故郷」の意味がピンと来ず、訳詞は難航中だ。

図書館に向かうために雫が乗った電車に、無愛想なネコが乗ってきた。同じ駅で降りた猫の後をつけていくと、丘の上の住宅街にたたずむ「地球屋」というアンティーク家具屋さんにたどり着く。そこで出会ったのは上品なネコの人形・バロン(露口茂)。気さくな店主の司朗(小林桂樹)からロマンティックな仕掛け時計も見せてもらった雫は、ステキな物語が始まる予感に胸をときめかせる。しかしその直後、第一印象最悪の同級生・聖司(高橋一生)とも再会。雫のウキウキした気持ちは一気に萎んでしまった。

そんな中、夕子にラブレターが届き、クラスメイトの杉村(中島義実)に思いを寄せる夕子は悩む。しかも、当の杉村からそのラブレターの返事を催促された夕子は大ショック。雫は鈍感な杉村を責めるが、逆に杉村から告白されるハメに。彼の思いを受け止めることができない自分に、雫は深く傷つくのだった。

耳をすませば 落ち込んだ気持ちを癒すために雫は「地球屋」に向かうが、その日は閉店。そこに祖父である司朗からヴァイオリン作りを教わっているという聖司が現れ、裏口を開けてくれた。バロンの穏やかな瞳に、気持ちが落ち着いていく雫。元気を取り戻した雫は、勢いで聖司と「カントリー・ロード」をセッションすることに。帰宅した司朗らも加わり、その場はプチ音楽会に。贅沢な時間を過ごした雫だったが、聖司が図書カードの「天沢聖司」その人だと知り、衝撃を受ける。しかし、その運命的な偶然と、ヴァイオリン職人になるために中学卒業後イタリアのクレモーナに留学するという聖司の夢を知り、一気に彼に惹かれていく。

ある日、聖司が雫のクラスにやってきた。イタリア留学に反対していた父親が遂に納得し、中学卒業前に二カ月間イタリアに短期留学して、現地の職人にヴァイオリン作りの才能を見極めてもらうことになったのだという。夢に向かって前進する聖司を祝福する雫。その半面、目の前の高校受験や恋の行方くらいしか考えていなかった自分と聖司の距離に焦りを感じる。

将来、自分はどんな道に進むべきなのか。そのためには今、何をするべきなのか…。未来に向かってひたすら進んでいく聖司にふさわしい自分であるために、雫は自分自身を試してみようと決意。小説家になるという夢に向かって、まずは物語を1つ書いてみることにしたのだ。受験前の大切な時期に、と汐は大反対するが、結局は一家で雫を応援することに。

物語はバロンを主人公にした冒険ファンタジー。構想を固めた雫は、司朗のもとへ。司朗は自分が最初の読者になることを条件に、物語にバロンを登場させることを快諾。自らの中に眠っている原石を磨く作業を大切にするようにと、雫を送り出す。

しかし、いざ、物語を書き始めてみると、雫はその困難さに直面。彼女は自分の中に眠る夢の結晶を探り当てることができるのか? そして聖司との恋の行方は…?

耳をすませば

キャスト

<月島雫>
本名陽子
<天沢聖司>
高橋一生
<月島靖也(雫の父)>
立花隆
<月島朝子(雫の母)>
室井滋
<バロン>
露口茂
<西司朗(地球屋主人)>
小林桂樹
<月島汐>
山下容莉枝
<高坂先生>
高山みなみ
<原田夕子>
佳山麻衣子
<杉村>
中島義実
<絹代>
飯塚雅弓
<ナオ>
千葉舞

スタッフ

<製作総指揮>
徳間康快
<製作>
氏家齊一郎、東海林隆
<原作>
柊あおい(集英社刊)
<脚本・絵コンテ>
宮崎駿
<制作>
山下辰巳、大塚勤
<音楽>
野見祐二
<主題歌>
「カントリー・ロード」
原題 “Take Me Home, Country Roads”
作詞・作曲 Bill Danoff, Taffy Nivert and John Denver
日本語訳詩 鈴木麻実子
補作 宮崎駿
編曲 野見祐二
唄 本名陽子(徳間ジャパンコミュニケーションズ)
<挿入歌>
「カントリー・ロード」
原題 “Take Me Home, Country Roads”
作詞・作曲 Bill Danoff, Taffy Nivert and John Denver
唄 Olivia Newton-John(東芝EMI)
<作画監督>
高坂希太郎
<美術監督>
黒田聡
<特殊効果>
谷藤薫児
<撮影監督>
奥井敦
<音響監督>
浅梨なおこ
<プロデューサー>
鈴木敏夫
<製作プロデューサー>
宮崎駿
<監督>
近藤喜文