2009年3月。ロンドンのO2(オーツー)アリーナにて、マイケル・ジャクソンの約10年ぶりとなるライブ公演の開催が正式に発表された。マイケル本人が「最後のカーテンコールだ」と位置付けた公演は、チケット発売と共に全席完売。ファンが聴きたい曲をやるために、インターネットを使用しライブで聴きたい曲の投票を実施。ロサンゼルスの大規模なスタジオにて、本格的なリハーサルとコンサートで使用する映像の撮影・編集が始まった。
1992年の「Dangerousツアー」以来のマイケルの盟友、ケニー・オルテガ(本作の監督を担当)らをスタッフに迎え、まずは世界中から集められたダンサーのオーディションが開催された。応募したのは、幼いころにマイケルのパフォーマンスを見てダンスを始めたという若きダンサーたち。しかし、5000人のうち、舞台に上がることができるのは11人の精鋭のみだ。
「スタート・サムシング」(WANNA BE STARTIN’ SOMETHIN’)に乗せて、すべてが始まった。リハーサルは、マイケルの指示に従って1曲ずつ入念に進められていく。ステージの中央で歌い、踊りながら、マイケルはバンドが音を出すタイミングや照明の演出などを的確に指示していく。そして、その変化に合わせて、彼自身のパフォーマンスが変わっていく様を、映像は丁寧に描き出していく。
マイケルの声の美しさと歌唱力を際立たせる「ヒューマン・ネイチャー」。ダンサーを使った舞台演出が冴え渡る「今夜はビート・イット」(BEAT IT)。「ブラック・オア・ホワイト」(BLACK OR WHITE)では若いギタリスト、オリアンティのソロパートを彼女の見せ場にすべく、彼女に寄り添い何度もギターソロを繰り返す。「ザ・ウェイ・ユー・メイク・ミー・フィール」(THE WAY YOU MAKE ME FEEL)でも、音楽監督のマイケル・ビアデンが納得するまで、イントロのテンポについて語り合う。バンドメンバーやダンサー、照明担当者や衣装担当者のインタビューを交えながら、マイケルがどうやって完璧なステージを作り上げていくのか、その舞台裏が明らかにされていくのだ。
同時進行で行われるのが、コンサート中にスクリーンで流される映像の撮影だ。「スムーズ・クリミナル」の映像は、リタ・ヘイワース主演の『ギルダ』や、ハンフリー・ボガートの『三つ数えろ』といった往年の名作に、マイケル自身が入り込むというゴージャスな企画。仕上がりは一本の映画を観ているような完成度の高さで、嬉々としてクールなアクションを演じているマイケルが印象的だ。また、「スリラー」では新たな解釈のもとに、3D映像を駆使したミュージック・クリップを制作!ゾンビメイクに身を包んだダンサーたちの撮影風景と、一部完成したクリップ映像、そしてリハーサル中のマイケルのダンスが同時並行で展開される。これまで幾度となく聴いてきたはずの曲の新たな魅力と、知られざるマイケルの素顔に触れられる貴重な“1曲”となっている。
そして、このコンサートで一番の核となる「アース・ソング」のための映像では、森林を破壊する強大な力の存在が、小さな少女の視点で描かれる。そして、その“強大な力”が映像を飛び出してマイケルの背後に迫るという演出が提示され、「4年後までに環境破壊を止める」という彼自身の強い意志が語られるとき。美しい音楽とクールなパフォーマンスとともに、大切なメッセージが観客の心に響き渡るのだ。
そう、このコンサートの根底に流れるのはマイケルの深い愛情。家族への愛、仲間への愛。自然や地球への愛。そして音楽と、エンターテインメントを誰よりも愛したひとりの人間の姿が、そこにある。その愛こそ、彼が“最後”に観客に届けたかったものだ。“THIS IS IT”。彼が全身全霊をかけて紡ぎだしたメッセージを、しっかりと受け止めよう。


2009年6月25日。“キング・オブ・ポップ”マイケル・ジャクソンがこの世を去った。約一ヶ月後にロンドン公演を控えての一報は、最大級の衝撃と共に世界中を駆け巡った。そのロンドン公演「THIS IS IT」のリハーサル風景を綴った映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」は、2週間限定公開のはずが、大好評を受け公開期間が幾度も延長。DVDやブルーレイディスクも爆発的な売り上げを見せ、社会現象となった。その「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」がクリスマスイブの夜、「金曜特別ロードショー マイケル・ジャクソン THIS IS IT 4時間スペシャル」と題してノーカットで地上波初登場! 特別番組とあわせて、マイケル・ジャクソンの魅力のすべてに迫る!
「ヒューマン・ネイチャー」(HUMAN NATURE)ではライブならではのアレンジで圧倒的な歌唱力を“聴かせ”、「ビリー・ジーン」(BILLIE JEAN)では頭の先から足のつま先まで目を離せないダンスをしっかり“魅せ”るなど、自らのすべてを出し切るかのような構成。その一方でオーディションで選ばれた11人のダンサーや若いバンドメンバーにもしっかり「見せ場」を演出。そして、ジャクソン5メドレーで家族への愛を率直に表現し、「アース・ソング」(EARTH SONG)に乗せて彼の地球への愛が語られる終盤。彼にとって「カーテンコール」と位置付けたこのコンサートが、本当に特別な存在だったことがヒシヒシと伝わってくる。