住みなれた街を離れ、片田舎に引っ越すことになった千尋(柊瑠美)。新しい環境への希望などまるで持てず、引っ越しの車の中でもふて腐れた表情だ。そんな彼女が乗った車は舗装された道を離れて林の中に入り込み、古びたトンネルにたどり着く。好奇心旺盛なお父さん(内藤剛志)とお母さん(沢口靖子)は、迷わずトンネルの中へ。千尋も仕方なく彼らに着いていくが、トンネルの先には青々とした草原と人気のないゴーストタウンが広がっていた。
街を歩いていくと、ある店先に美味しそうな食事が並んでいる。躊躇することなくその食事を口にするお父さんとお母さん。彼らの姿に不安を覚えその場を離れた千尋は、美しい少年・ハク(入野自由)から、日暮れ前にこの場所を立ち去るように言われる。大急ぎで両親のもとに戻るも、時すでに遅し。2人はブタに姿を変えられ、千尋は一人ぼっちになってしまった。
途方に暮れていた千尋は、巨大な湯屋「油屋」へ。そこは日本中の神々が息抜きのために集う、神様のためのお風呂屋さんだった。ハクの助言を受けて「油屋」のボイラー室へ向かった千尋を待ち受けていたのは、6本の腕で薬草を調合する釜爺(菅原文太)。ハクから教えられた通り「ここで働かせてください」と声を張り上げる千尋を、釜爺は追い返そうとする。しかし彼女の不器用な一途さに打たれ、油屋の女主人・湯婆婆(夏木マリ)に判断を任せることに。
油屋で働く威勢の良い少女・リン(玉井夕海)に連れられて、湯婆婆の部屋に向かう千尋。圧倒的な個性と魔力で町を仕切っている湯婆婆は、千尋が油屋で働くのと引き換えに彼女の名前を奪い、「千」という新しい名前を与える。湯婆婆に名前を奪われるということは、“自分”を失うこと。しかし、もし本当に自分を見失ってしまったら、決して元の世界には帰れないのだ。千尋は生まれて初めての強い決意を胸に、油屋で働くことに。
ドジだが一生懸命な千尋は、釜爺やリン、ハクに助けられながら少しずつ油屋の仕事を覚えていく。そんな千尋に惹かれるように油屋に侵入していた謎の存在がいた。彼の名前はカオナシ。他者とコミュニケーションする方法を知らないカオナシは、千尋に気に入られようと彼女にプレゼントを送るが、ことごとく拒否されてしまう。自分の欲望を持て余したカオナシは、金をばら撒いて油屋で働く人々を支配下に置くことに成功。しかし、それでも千尋が手に入らないと知ると、今度は油屋のすべてを飲み込もうと暴走し始める。
同じ頃。湯婆婆による密命を受けて白い竜に姿を変えたハクが、瀕死の重傷を負って油屋に逃げ帰ってくる。ハクは湯婆婆の双子の妹、銭婆(夏木マリ)の大切なものを盗んだせいで、死の呪いをかけられていた。千尋は彼を助けたい一心で、銭婆の元へ謝りにいくことに。
しかし千尋には、その前に救わなければならないモノがいた。欲望のままに巨大化し、自分でも自分が制御できなくなったカオナシだ。千尋は真っ正面からカオナシと向き合い、彼が飲み込んだすべてを吐き出させることに成功。そして千尋とカオナシは、釜爺とリンの助けを得て、銭婆の家に向かう列車に乗った。
行ったが最後、戻ることができるかどうかわからない旅。しかし、生きるための目標を手に入れた千尋は、もう後ろを振り返ることなどなかった。ハクにかけられた呪いを解き、彼女自身も両親と共に元の世界に戻るために。強く真っすぐな決意をもって静かな大冒険に挑む、千尋に訪れる結末とは…?




1月の金曜ロードショーは「人気キャラクター月間」。第一弾を飾るのは、主人公と彼女を取り巻く人々から、画面の隅にしか映らないようなチョイ役まで、ジブリらしい個性豊かなキャラクターが集結した「千と千尋の神隠し」。アメリカアカデミー賞やベルリン国際映画祭など海外でも大絶賛された、宮崎駿監督による後味爽快なファンタジーだ。
そして圧倒的な存在感なのが、ブラックホールのように空虚な瞳を持つカオナシ。異常なほどに控えめな性格が一転、欲望に駆られて巨大化していく様は本当に不気味で、背筋が凍るほど。そんなカオナシの本当の恐ろしさは、彼のように不器用で自分勝手な部分を誰もが心のどこかに持っているということに他ならない。