ハリケーンが近づきつつあるニューオーリンズの病院。入院中の老女・デイジー(ケイト・ブランシェット)は、死を前にして自分の大切な過去を娘のキャロライン(ジュリア・オーモンド)に語り始める。デイジーに言われるままに古びた日記を手に取るキャロライン。そこには想像を絶する運命を背負って生まれた、1人の男の生涯が綴られていた。
第一次大戦が終わり、平和な日々が戻ってきたニューオーリンズで1人の赤ん坊が産まれた。しかし出産後、母親は死亡。肌はガサガサ、目は白内障の80歳の老人のような赤ん坊を男手ひとつで育てる自信はないと、父親のトーマス(ジェイソン・フレミング)は老人養護施設に彼を捨てて去っていく。施設で働くクイニー(タラジ・P・ヘンソン)は子に恵まれず悩んでいたこともあり、その赤ん坊をベンジャミンと名付けて大切に育てることに。
人生経験豊富な老人たちに囲まれて育ったベンジャミン(ブラッド・ピット)は、年々髪の毛が増えシワが減り、少しずつ若返っていく。そして老人たちからシェイクスピアなどの文学やピアノの基礎、人生を楽しむための様々なコツを教わって精神的にも成長していった。そんなある日、施設の入居者に面会するために1人の少女がやってくる。子ども特有の勘でベンジャミンが「少年」であることを見抜いたその少女・デイジー(エル・ファニング)は、ベンジャミンに初めてできた同年代の友人であり初恋の相手だった。
少年から青年に成長したベンジャミンは、ある時、マイク船長(ジャレッド・ハリス)に誘われるままに彼の船で働くことに。初めての労働と初めてできた仲間たち。興奮気味のベンジャミンに、マイク船長は初めての女性経験をプレゼントする。その夜、通りがかりの紳士と一緒に初めての飲酒も体験するベンジャミン。その紳士こそ、彼を捨てた実の父、トーマスだった。亡き妻との誓いを破って息子を捨てた罪に苦しみ続けていたトーマスは、その後も時々ベンジャミンと酒を酌み交わす仲になった。
海の男として世界中を航海するうちに、様々な経験をして大人になっていくベンジャミン。彼は航海の途中で出会った美女・エリザベス(ティルダ・スウィントン)と運命的に恋に落ちるのだが、彼女は人妻で、しかも夫は英国人のスパイ。刹那的に始まった恋は、太平洋戦争の始まりと同時に突然終わりを迎える。そしてベンジャミンたちも戦争に駆り出されるのだが…。
戦場で大切な仲間たちと働く場所を失い、久しぶりに家に戻ったベンジャミンはデイジーと再会。バレエ・ダンサーを目指していた少女は、NYの舞台で活躍する美しい女性へと成長を遂げていた。すっかり見た目も自分と釣り合う男性に「成長」したベンジャミンにデイジーは心をときめかせるが、2人の気持ちは微妙にすれ違ってしまう。一方、死期が近いことを知ったトーマスは、ベンジャミンに自分が実の父親であることを告白。自らが経営する工場を遺産として受け取ってもらいたいと提案するが、ベンジャミンはそれを固辞。これまで通り友人としてトーマスと過ごし、彼の最期の日々をともに過ごすのだった。
そして40代を迎え、遂に結ばれるベンジャミンとデイジー。将来のプランも約束もないまま、そこにある愛と幸せだけを受け止める穏やかな生活が始まった。しかしベンジャミンが日々若返っていく一方で、確実に老いていくデイジー。2人の愛の生活は、その結晶ともいえる娘の誕生を機に再び形を変えていくことに…。
決して止まることなく過ぎていく時間。ベンジャミンの身体はどんどん幼くなっていき、反対に精神には老いが襲いかかる。数奇な運命に翻弄されたベンジャミンとデイジーが辿りついた、本当の愛の形とは?


80歳の身体で生まれ、年齢を重ねるごとに肉体が若返っていく特異な体質の男。彼はひとつひとつの出会いを大切に噛みしめて生きていくが、愛する人たちと共に年老いていくことだけは叶わなかった…。逆回転の時計の針のような運命を背負った男の生涯をブラッド・ピットが演じきった超大作「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」が地上波初登場。
原作は「グレート・ギャツビー」などのF・スコット・フィッツジェラルドによる短編小説。2011年、話題作「ツリー・オブ・ライフ」やアカデミー賞最有力候補との呼び声も高い「マネーボール」に主演したブラッド・ピットが、これまでも「セブン」「ファイト・クラブ」でタッグを組んだ映像の魔術師デビッド・フィンチャーと再タッグ。ミュージックビデオ出身で観る者の度肝を抜くスタイリッシュな映像が得意なフィンチャーが、CGを駆使して作り上げた映像をものすごくシンプルに見せるという新技を披露。全体の仕上がりとしてはまるで「風と共に去りぬ」など往年のハリウッド大作のような重厚な印象を与えている。