第9地区

第9地区

これは本当に「映画」なのか…?新時代の幕開けを感じさせる超問題作

独創的すぎる設定と映像で描きだす、胸を打つ愛と友情の人間ドラマ

第9地区 舞台は南アフリカの中心都市、ヨハネスブルグ。その上空に突如として巨大な宇宙船が現れた。乗船していたのは、おびただしい数の栄養失調状態のエイリアンたち。政府は仕方なく「難民」として彼らを地上に住まわせることに。それから28年。彼らの居住地区「第9地区」はスラム化していき、住民との衝突も頻発。しかたなく、エイリアンを管理する民間企業・MNUはエイリアンの強制的な立ち退きを決定。社員のヴィカスは現場の責任者を命じられるが、作業中に謎の液体を浴びてしまい…!

「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンが製作を務めるとはいえ、監督は無名の新人。出演者にもビッグネームはおらず、主演のシャルト・コプリーは本作が長編映画初出演。そして南アフリカを舞台にしたカルトなSFアクション。決して万人受けする「ハリウッド的」ではない作品でありながら、映画は公開と同時に記録的大ヒットを達成。世界中のショーレースをにぎわせ、第82回アカデミー賞でも作品賞、脚色賞、編集賞、視覚効果賞の4部門ノミネートを果たした超話題作が、地上波初登場だ。

第9地区 まず観る者を圧倒するのは、映像のリアルさ。上空には巨大な宇宙船が浮かび、スラム街を気味の悪いエイリアンが跋扈する。一歩間違えばトンデモないことになってしまいかねない状況を、専門家が事件を振り返るドキュメンタリー番組風の作りで客観的に解説。そしてテレビの中継映像や、タイムコードが入ったままの記録フィルム、監視カメラのデータなどを効果的に織り交ぜながら、物語は少しずつ核心に迫っていく。全編に渡って手ぶれ感を敢えて生かしたザラザラとした映像が印象的だ。また、実際に起こった事件の映像や、ヨハネスブルグの市民が「移民=エイリアン」について語った言葉をそのまま使用するなど、この物語が世界のどこかで起きているのではないかと思わせる仕掛けが随所に施されている。

もうひとつ注目すべきなのは、物語の持つドラマ性の高さだ。エイリアン移住計画の「ボス」を命じられた主人公のヴィカスが、突然昇格してちょっと調子に乗っている表情や、謎の液体に「感染」した事実を隠し通そうとする小心者ぶりは、まさにどこにでもいる普通のサラリーマン。しかし彼は、人間でもエイリアンでもない突然変異体になってしまう。戸惑い、傷つきながら、愛する妻ともう一度一緒に暮らしたいという純粋な動機で、エイリアンたちとともに人間に戦いを挑むヴィカス。彼が成長していく姿に、誰もが共感してしまうはず。そして、彼と共に戦う天才エイリアンのクリストファー・ジョンソンのキャラクター設定も秀逸。幼い息子と2人暮らしのクリストファーの息子への無償の愛情と、ヴィカスとの間に芽生える友情。姿は違っても心の根本にある部分は誰でも同じ。そんなエイリアンの描き方から、この作品の影にある人種差別や移民差別などの問題に対する、作り手たちの「答え」が見えてくるようだ。

圧倒的な破壊力を持つエイリアンの武器の造形や、ヘリや車を駆使したアクションシーンも素晴らしい。余韻を感じさせるエンディングまで一気呵成に突き進む、00年代の新たなSF映画の誕生をしっかりと見届けよう!

エイリアンの謎のウイルスに感染した平凡な男の決意と戦いの物語

第9地区 南アフリカ、ヨハネスブルグの上空に、巨大な宇宙船が現れたのは28年前。その宇宙船は攻撃を始めるでもなく、かといって立ち去るわけでもない。しびれを切らした南アフリカ政府は偵察隊を派遣。厳重な装備を身につけて宇宙船に降り立った彼らを待っていたのは、弱り切ったエイリアンの群れだった。宇宙船が故障した様子の彼らを放っておくわけにもいかず、南アフリカ政府は「難民」として彼らを「第9地区」と呼ばれる仮設住宅に住まわせることにした。

言葉も通じないエイリアンの管理を任されたのは、民間企業・MNU(マルチ・ナショナル・ユナイテッド)。しかしMNUはエイリアンの人権にさほど興味を示さず、「第9地区」は次第にスラム化。同じくスラムに住むナイジェリア移民との摩擦も絶えず、また窃盗などの犯罪も横行。その昆虫や甲殻類のような見た目から「エビ」と呼ばれて差別されるようになったエイリアンたちを、これ以上都市部の近くに住まわせておくわけにはいかないと、MNUはエイリアンの強制移住計画を実行に移すことになった。

まるで強制収容所のような新たな住居「第10地区」にエイリアンたちを移住させる計画のリーダーを任されたのは、ヴィカス(シャルト・コプリー)。社長の娘・タニア(ヴァネッサ・ハイウッド)と幸せに暮らす平凡なサラリーマンだ。彼の任務は、「第9地区」のすべての家を訪ねて行って、移住の承認のサインをもらって回ること。真面目なヴィカスにとって、それは危険が伴うものの単純な作業のように思われた。

第9地区 世界が注目する中、MNUの立ち退き通告作業が始まった。なるべく武器を使わずに事を進めるために、彼らの好物であるキャットフードを餌に、一軒一軒エイリアンの家をノックして歩くヴィカス。しかし彼はある家で謎の黒い液体を浴び、怪力のエイリアンに突き飛ばされて手を負傷してしまう。その後。ヴィカスの身体に異変が現れる。彼を襲う突然の吐き気。爪は剥がれ、鼻から黒い液体が鼻血のようにあふれ出す。同僚の目を避けるように帰宅したヴィカスだったが、突然意識を失い、病院に搬送されることに。

そこで判明したのは、ヴィカスが「エイリアン化」しつつあるという驚くべき事実。社長をはじめとするMNUの上層部は、ヴィカスを実験台として徹底的に研究することを決定する。軍事企業であるMNUは押収したエイリアンの武器を研究していたのだが、武器はエイリアンのDNAを持つ者以外は扱えないようにプログラムされており、仕組みもパワーも解明されていない状態。ヴィカスの力を借りれば、すべての武器の使い方が明らかになり、それはつまりMNU社に大きな「利益」をもたらすはずなのだ。自分が人体実験にさらされると知ったヴィカスは、MNUの研究所を脱走。MNUは総力を挙げてヴィカス捜索に当たることに。

人間社会には隠れる場所がないとヴィカスが逃げ込んだのは第9地区のある家。そこにいたクリストファー・ジョンソン(ジェイソン・コープ)と名乗るエイリアンは、ヴィカスが浴びた黒い液体を開発した張本人だった。高度な科学の知識を持つクリストファーなら、上空に浮かぶ宇宙船を再び動かし、ヴィカスを人間に戻すことができるという。宇宙船を動かす鍵をあの黒い液体が握っていると知ったヴィカスは、クリストファーとともにMNUの研究所に忍び込むのだが…!

ヴィカスは愛する妻に再び会うため、クリストファーは大切な息子と故郷に戻るため。勝ち目のない闘いに身を投じる2人。果たして彼らは、本当に大切なものを守ることができるのか?

第9地区

キャスト

<ヴィカス>
シャルト・コプリー(川島得愛)
<クーバス大佐>
デヴィッド・ジェームズ(谷昌樹)
<クリストファー・ジョンソン>
ジェイソン・コープ(斉藤次郎)
<タニア>
ヴァネッサ・ハイウッド(田中晶子)

スタッフ

<監督>
ニール・ブロムカンプ
<脚本>
ニール・ブロムカンプ&テリー・タッチェル
<製作>
ピーター・ジャクソン&キャロリン・カニンガム
<共同製作>
フィリッパ・ボウエン
<製作総指揮>
ビル・ブロック&ケン・カミンズ
<共同製作総指揮>
ポール・ハンソン&エリオット・ファーワーダ
<撮影監督>
トレント・オパロック
<美術監督>
フィリップ・アイヴィ
<編集>
ジュリアン・クラーク
<音楽>
クリントン・ショーター
<音楽監修>
ミッシェル・ベルチャー