「火の七日間」と呼ばれる大戦争で、文明社会が滅びてから1000年。人々は少し吸い込んだだけで身体に害を及ぼす「瘴気(しょうき)」を発する植物が生息する森「腐海(ふかい)」と、そこに住まう巨大な蟲たちに怯えながら、暮らしていた。
海からの風により腐海から守られている小国・風の谷の王女・ナウシカ(島本須美)は、蟲たちと心を通わせることができる不思議な少女。今日も彼女は小型の「メーヴェ」に乗って腐海を散策中、王蟲(オーム)に襲われそうになっていた旅人のユパ(納谷悟朗)を助けたところだった。
その夜、風の谷に大国・トルメキアの巨大な輸送船が墜落する。工房都市国家であるペジテの捕虜を乗せたその船は、腐海の蟲に襲われ操縦不能になったのだ。ペジテの王女であるラステル(富永みーな)から、積み荷を燃やすよう言われるナウシカ。翌日明らかになったその「積み荷」とは、「火の七日間」で世界中を焼きつくした巨大な人型兵器「巨神兵」。ユパによれば、ペジテの地下深くで発見された「巨神兵」をトルメキアが略奪したのだという。
墜落事故を知ったトルメキアから派遣されてきたのは、王女・クシャナ(榊原良子)と側近のクロトワ(家弓家正)に率いられた大軍。彼らに父王であるジル(辻村真人)を殺されたナウシカは逆上するが、ユパになだめられ、彼らの人質になることに。
「巨神兵」の本国への輸送を諦めたクシャナは、ひとまずナウシカを連れてペジテへ向かうことに。しかしその道中、ペジテのガンシップがトルメキアの船団に襲いかかった! 燃え盛る船からクシャナとともに脱出したナウシカは、落下した仲間たちを助けるために腐海の奥へ。仲間と共に不時着した湖に現れた王蟲から、彼らを襲ったペジテの青年・アスベル(松田洋治)がまだ腐海をさまよっていることを知らされ、ナウシカはアスベルの救出に向かった。
腐海の蟲たちは、人間から手出しをしなければ攻撃してくることはないが、手を出したが最後、腐海の果てまで追ってくる性質だった。その掟を忘れて次々蟲に向かって発砲し、追いつめられたアスベルを、ギリギリのところで救い出すナウシカ。しかし2人は勢い余って地面に墜落。そこに流砂が起こり、ナウシカとアスベルは腐海の地下の空洞へと吸い込まれていく。
目を覚ましたナウシカは、地下の空気が地上より清浄なことに驚いていた。腐海の植物は汚染された空気や水を自らに取り込み、美しい結晶に変えていたのだ。その森を守るために、蟲は戦っている…。腐海が生まれた理由を知り、ナウシカは深く心を動かされる。
そして、ナウシカとアスベルはペジテに向かうが、ペジテは蟲に襲われ壊滅的な被害を受けていた。ペジテに侵略してきたトルメキア軍を倒すために、ペジテの市長は自らの手で街を蟲に襲わせたのだった。市長はペジテ市再興のために巨神兵を取り戻そうと、次なる作戦を発動させていた。ペジテに続き、王蟲の群れに風の谷を襲わせるというのだ。このままでは風の谷の住民が、トルメキア軍ともども犠牲になってしまう! ナウシカを助けに来たユパとミト(永井一郎)の手を借り、ナウシカは王蟲の群れを追った。
同じ頃、蜂起した風の谷の住民たちとトルメキア軍は、谷からほど近い酸の海のほとりで対峙していた。そこに王蟲の大群が向かっているとの情報が入り、クシャナは巨神兵を使って王蟲を焼き払おうとするのだが…。
怒りのために目を真っ赤にした王蟲の群れは、我を忘れて風の谷に押し寄せようとしていた。平和な谷を、愛する人々を守るために、自らの身を挺して蟲たちを止めようとするナウシカ。その思いは、王蟲に届くのか?


ちょっと落ち込んだり、むしゃくしゃしたり、自分を嫌いになってしまいそうな時。観るだけで元気になったり前向きな気持ちになったりできる作品が、誰にだってあるはずだ。今回、劇場公開当時のフィルムの風合いを再現した新マスターバージョンで初登場となる「風の谷のナウシカ」も、そんな作品のひとつ。宮崎駿が月刊「アニメージュ」に連載中の原作をもとに、自ら脚本・監督を手掛けた、劇場長編アニメ第2作だ。
本作の魅力は枚挙にいとまがないが、中でも突出しているのは、やはりヒロインである風の谷の王女・ナウシカと、原作コミックではナウシカと並び立つヒロインとして成長を見せる大国・トルメキアの王女・クシャナのキャラクターだ。平和な風の谷の王家のひとり娘で、みんなから愛されて真っ直ぐ育ったナウシカ。彼女は蟲も人間も等しく傷つかずに生きていける未来を目指して、ただひたすらに理想に向かっていくことができる強さを持っている。人を射抜くような彼女の強い眼差しは、私欲にまみれた大人たちはもちろんのこと、怒りに我を忘れた蟲たちさえをも、圧倒する。勇敢で誠実で聡明。そんなナウシカが生まれ育った風の谷を離れ、数々の冒険を通して哀しい現実を知り、それでもなお、自らの理想を胸に前に進もうとする姿は、誰もの胸に希望を宿す力を持っている。