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日々頼もしい成長を遂げる子どもの記録を残していきたいという親の気持ちは、どの時代も変わらぬものでしょう。現代では、カメラや携帯電話、スマートフォン、そしてビデオカメラで近しい子どもの成長を記録していくことが当然のこととなっています。それでは、写真機が発明される以前はどのように記録されていたのでしょうか。
その手段として、まず肖像画が挙げられます。しかし、かつての西洋では、子どもの肖像画は王侯貴族や富裕市民にのみ限られた特権でした。画家が子どもの姿を記録するのは17世紀のルーベンスやレンブラントの時代になってから。18世紀の啓蒙主義や、19世紀の産業革命と市民階級の発展を受けて、ようやく自分の子どもの姿を克明に記録するようになったのです。
本展に出展される「子ども」や「家族」を描いた作品の多くは、注文を受けて報酬と引き換えに描かれた肖像画ではありません。これらの作品、つまり画家が大切に手元に残しておいた作品は、画家によって愛すべき子どもの成長が記録されてきたものといえるでしょう。
今日においては、写真機の発明によって対象をそっくりそのまま保存できるようになりましたが、本展では、実際に成長を記録されてきた「描かれた側=モデル」の想いも紹介しながら、絵画でしか表現できない肌の質感や表情、そして何よりも「描く側=画家」の想う心が込められた、素晴らしい肖像画の数々をご覧いただけます。