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くにくにコラム

Vol.11 祝「ニャーニャーの日」! 国芳と猫

2016/04/19

誰が決めたのかは知りませんが、今週22日は「ニャーニャーの日」ということで、国芳と猫のエピソードをご紹介しましょう。べランメエ言葉をまくし立て、背中に地獄図をデザインしたどてらを愛用していたという歌川国芳。宵越しの金を持たない彼は、画料が入れば弟子たちに分け与え、火事があればどこにでも飛んでいって火消の手伝いをしたというチャキチャキの江戸ッ子絵師でした。そんな彼が生涯愛してやまなかったものが……、そう、猫です。

猫好きだからこそ描ける? 日常的な猫との何気ないスキンシップ
歌川国芳《当世商人日斗計 日九時》
文政4-6(1821-23)年
William Sturgis Bigelow Collection, 11.15955
Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

無類の愛猫家だっただけに、国芳の周囲には常に数匹から十数匹の猫がいました。当時の彼の工房を描いた絵を見ると、国芳は猫を懐に抱いて絵を描き、また、のんきに遊びまわる猫たちを尻目にお弟子さんたちが仕事をしていたのがわかります。猫アレルギーの人がいたら、さぞ大変だったことでしょうね。

国芳にかかれば、「雪だるま」も「猫だるま」に……
歌川国芳《初雪の戯遊》
弘化4-嘉永5(1847-52)年
William Sturgis Bigelow Collection, 11.16077-9
Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

そんな国芳の家には猫専用の仏壇があり、そこには歴代飼い猫たちの戒名を書いた位牌がズラリと並んでいたとのこと。ご丁寧に死んだ猫の過去帳まであったそうですから、これはもうペットの域を超えています。

中央で手ぬぐいをかぶって踊っているのは猫の妖怪「猫又」です
歌川国芳《荷宝蔵壁のむだ書》(黄腰壁)
弘化5(1848)年頃
William Sturgis Bigelow Collection, 11.27004
Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

もちろん国芳は猫の戒名をちゃんとお坊さんにつけてもらっていました。それについては国芳の内弟子だった初代芳宗が興味深いエピソードを伝えています。ある日彼は、師匠の国芳に、可愛がっていた猫が亡くなったのでお寺で戒名をもらい、ついでに死骸を畜生塚に埋めてきてくれるよう頼まれます。しかし芳宗は、途中で猫を隅田川に投げ捨てて、預かった供養料を持って吉原に遊びに行ってしまいました。その後当然ウソはバレ、芳宗は国芳から大目玉をくらったということです。

実は国貞も猫の絵を描いていました
歌川国貞《美人合 春曙》猫と娘
文政期(1818-29)
Nellie Parney Carter Collection-Bequest of Nellie Parney Carter, 34.513
Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

本展では、飼い主と戯れる可愛い猫から妖怪となった猫の絵まで、猫好き国芳ならではの作品を見ることができます。ぜひ、さまざまな猫の表現にも注目して、作品をご覧くださいね。

<プラスワン情報>
4月22日(金)~4月28日(木)までの1週間、「国芳七日間!(クニヨシ・セブンデイズ)」を開催します。この期間に猫がモチーフとなったものを身に着けた方、ご持参の方、毎日入館先着100名様に国芳作品のポストカードをプレゼント! ぜひお早目にご来館ください。※猫グッズは、美術館入口の係員へご提示ください。
https://www.ntv.co.jp/kunikuni/special/sp02.html

木谷節子 プロフィール

アートライター。現在「婦人公論」「SODA」「Bunkamura magazine」などでアート情報を執筆。
アートムックの執筆のほか、最近では美術講座の講師もつとめる。

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