みどころ HIGHLIGHTS

見どころ1

質・量を誇るボストン美術館の浮世絵コレクションより、

初の大規模な国芳・国貞展!

ボストン美術館はヨーロッパ、アメリカ、アジアなど世界各国の美術作品を所蔵する美術館ですが、なかでも日本美術コレクションは、国外では世界一として知られています。
江戸から明治期にかけて、多くの日本美術が海外へと渡りました。当時、日本では西洋志向になっていった一方、来日した外国人にとって日本美術は新しい芸術であったのです。動物学者のエドワード・モース(1838-1925)、東洋美術史家で哲学者のアーネスト・フェノロサ(1853-1908)、医者のウィリアム・ビゲロー(1850-1926)に代表されるアメリカ人と岡倉天心の功績により、ボストン美術館の浮世絵コレクションは質、量ともに世界有数を誇るものとなりました。これらは近年までほとんど一般公開されることはありませんでした。そのため保存状態がよく、まるで摺りたてのような鮮やかさを保っています。
本展は、同館の14,000枚を超える国芳、国貞の浮世絵から厳選された名品をご紹介するもので、1876年のボストン美術館開館以来初の大規模な国芳・国貞展となります。これらの作品は一度貸し出されると美術館の規定により5年間は公開されなくなるため、大変貴重な機会です。

見どころ2

究極の江戸ポップカルチャー、浮世絵

浮世絵は幕末に至り、表現も多様化して様々な展開をみせました。絵師や版元は、消費者の飽くなき欲求に応じるべく、手を変え、品を変えて、その欲望に応えたのです。だからこそ浮世絵は、時を経てより創造性に満ちた表現を手にしたといえるでしょう。
本展では幕末の歌川派の人気浮世絵師、国芳と国貞の兄弟弟子による名品の数々を同一テーマで比較展示することによって、彼らが消費者に対し、いかにして創意工夫を凝らしてきたかを知ることができます。さらに身近な感覚をもって理解するために、江戸と現代をつなぐよう、当時の最大の娯楽のひとつ、歌舞伎の演目になぞらえて各章タイトルを構成し現代的でポップなルビをふっています。例えば、一幕目の一「髑髏彫物伊達男[スカル&タトゥー・クールガイ]」や、二幕目の六「今様江戸女子姿[エドガールズ・コレクション]」などです。コンサートでお気に入りのアイドルに熱狂するように、最新の流行に身を包む雑誌のモデルに憧れるように、江戸のポップカルチャーであった浮世絵をご鑑賞ください。

見どころ3

「俺たち」の国芳、「わたし」の国貞

浮世絵は江戸の人々が求めた悦楽[エンターテインメント]を凝縮したメディアであり、現代に置き換えるならば、雑誌やポスター、ブロマイドといえるでしょう。そこには物語世界で活躍するヒーローや、憧れの歌舞伎役者たちが描かれています。
国芳ファンは、漢[おとこ]に憧れ、ヒーローたちの活躍する物語の世界にのめり込む江戸っ子ヤンキー層。個人より仲間に重きを置き、コミュニティを大切にする「俺たち」です。義理・人情を優先する彼らに、理想の男の姿を見せてくれるのが“俺たちの国芳”。
一方、国貞の作品の中核は、江戸文化のメインストリーム―歌舞伎を取り上げたものであり、そこに登場するキラキラと輝く男女に憧れる女性たちが思い浮かびます。国貞の描く世界は女性が各々に憧れ、夢見る世界でもあり、いわば“わたしの国貞”なのです。

見どころ4

多様な色彩表現

浮世絵師たちの工夫・趣向のひとつ「色彩表現」においても、本展では多様な作品をご覧いただけます。
色を摺り重ねる技術の発展により、精巧で豪華な多色摺りの錦絵が誕生し、浮世絵は最盛期を迎えました。色別に彫られた版木をもとに一枚一枚を摺り、色を重ねていくため、その技術の高さがうかがえます。本展ではこれら錦絵のなかで1 点、特異な「藍摺」と呼ばれる作品もご紹介します。「藍摺」とは、当時西洋から輸入された化学顔料「ベロ藍」(プルシャンブルー)の濃淡と、ほんの少しの紅などで表された作品です。今までになかった鮮やかな青の世界に、江戸の人々は魅了されました。
また、豪華さを演出するために、無地背景に雲母粉を用いた「雲母摺[きらずり]」と呼ばれる作品も注目です。現在でも、そのキラキラとした輝きが残されています。