■ 洛東遺芳館 (らくとういほうかん)
  10月2日放送


柏原家の商家としての歩みは、1645年、扇子や小間物の行商から始まります。その後木綿や漆器などにも商売を広げ、江戸に多くの店を持つ「江戸店(えどだな)持ち商人」として巨大な富を築きました。明治時代、柏原家は東京へ移住しましたが、残された町家の文化を多くの人々に伝えるべく、昭和49年から洛東遺芳館として定期的に公開しています。
520坪もの敷地に、36室もの部屋を構える広大な空間。収納性に優れた箱階段が商家の面影を偲ばせますが、全体的には大寺院のような荘厳さが漂います。2つの坪庭や雪見障子の茶室など日本ならではの文化が全て取り入れられた、なんともぜいたくな町家です。
10月1日(金)から11月3日(水)まで、「婚礼調度と秋景画展」と題し柏原家に伝わる3000点もの収蔵品が特別公開されます。希望する方には、家屋の内部も案内して下さるということです。



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江戸時代、木綿の商いで富を築いた柏原家。

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その旧宅として知られる洛東遺芳館が、特別公開されています。

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廻り廊下の奥には、都随一という広大な空間が広がります。
240年もの風雪に耐え、さまざまな歴史を刻んできました。

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べんがら塗りの天井が生み出す心地よい緊張感が、
訪れる者の背筋を正します。

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華やかさとは異なる、上質な佇まい。
それが、商家としての誇りなのです。

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この町家に受け継がれる、3000点もの収蔵品。

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中でも、那波家から贈られた婚礼調度品は
当時の遺風を今に伝える逸品です。

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対の貝殻を選び合うきらびやかな貝合わせには
永遠の絆を願う、家族の想いが込められています。

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時の流れに身を委ね、四季の移ろいに心を寄せる暮らし。

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清しい風はまもなく、紅色に染まります。



洛東遺芳館の魅力は、なんといってもその広さ!初めて伺った時はなかなか構造が掴めず、館長さんに設計図を見ながら説明していただきました。広い縁側から広い中庭を眺めていると、自分自身の心も大きくなったような気がしてくるから不思議です。
部屋の中央に構える箱階段は、2階にある主人の間に続いています。表からは分からないように壁や襖で隠すことができ、忍者屋敷のような複雑な構造になっています。
撮影の際には、非公開の台所を拝見することができました。あまりの広さに驚き、しばらくボーッと立ち尽くしてしまいました。その素晴らしさをお伝えできないのが残念ですが、強いて言えば「千と千尋の神隠し」の銭湯のような世界が目の前に現れたカンジです。
展示室に飾られた所蔵品はどれも見事な保存状態で、一日中観賞していても飽きることはありません。これほどの数を揃えるのはさぞかし大変だったろうと思いきや、そのほとんどは贈答品として贈られたものなんだとか。個人的には、合わせ貝の彩色の美しさに思いきり魅了されました。


「 EVENING DEW 」
作曲者:Christina Braga
演奏者:Christina Braga