
1624年頃 油彩・カンヴァス 70cm × 62cm
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17世紀オランダを代表する肖像画家として名高いフランス・ハルスは、即興性の高い筆致でオランダの市民社会を代表するような人々の姿を多く描いた。荒々しいまでの筆さばきは時に古典主義的典雅の対極にあり、また、いささか品格を疑わせるような人物の描写も古典主義からの距離を感じさせる。けれども、このような外見的特質をもって、ハルスを学識とは無縁の職人的画家であり、その作品を単に市井の人々を写実的に描いたものと見なすことは誤りであることを本作品は教えてくれる。ここに描かれるような派手な服装をまとった道化の半身像は、カラヴァッジョに影響を受けたユトレヒトの画家たちが得意にした主題であった。これは肖像画ではなく、むしろ、風俗画的人物像であり、あるいは、聴覚の寓意的表現だったかもしれない。とすれば、ハルスがしばしば描いた酔っ払いも単なる写実的肖像画ではない可能性が示唆されていることになる。とはいえ、この画家の作品を前にすると、絵画における主題の重要性はつい忘れてしまいがちである。本作品に見られる道化のおどけたような一瞬の表情、乱れた髪や赤い飾りのついた派手な衣装、楽器をもつ陰影に富んだ右手、そして、リュート中央のバラ窓のような装飾などは、確かにマネやクールベに啓示を与えたハルスの驚くべき近代性を実感させるに違いない。
作品解説:国立西洋美術館 シニア・キュレイター 幸福 輝