作品解説 《大工ヨセフ》
2008年12月26日(金)

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール (1593年−1652年)
《大工ヨセフ》
1642年頃 油彩・カンヴァス 137㎝ × 102㎝
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光源は幼子キリストが持つ蝋燭ただ一つ。輝く炎は、若々しいキリストの顔を清冽に照らし出しながら、幼子の左手を透かして見るものに届けられる。一方、大工仕事に精を出す養父ヨセフの手元をほのかに照らしつつ、額には年齢と労苦を刻み込んだ皺を浮かび上がらせる。ほぞ穴が穿たれた角材は十字架を連想させ、幼子の将来がすでに暗示されており、キリストに向けられた、慈愛に満ちながら、どこか不安げなヨセフの視線も、運命の予兆に緊迫感を加えている。画家が活動した17世紀前半のロレーヌ地方では、聖ヨセフへの信仰は、殊に活発となっていたが、そのための図像への需要が、この類希な才能と出会った時、見るものの視線を括り付けて止まない名作をもたらすことになったのである。
現在では17世紀フランスを代表する画家の一人に数えられるジョルジュ・ド・ラ・トゥールが見出され、再評価されたのは20世紀になってからのことである。本作品も、1938年に発見され、イギリス人パーシー・ムーア・ターナーの所蔵となっていた。彼によってルーヴル美術館に寄贈されたのは1948年、彼の友人で作品発見の翌年に亡くなった、ルーヴル美術館絵画部門の学芸員ポール・ジャモに対する追悼記念として贈られたのである。
作品解説:京都市美術館 学芸員 中谷 至宏


