第8章 マリー・アントワネットのセーヴル磁器の食器セット

 

王立セーヴル磁器製作所
《食器セット「日本」より 皿》

マリー・アントワネットは1777年、ヴェルサイユ宮内で開催されていたセーヴル製作所の販売会で、東洋に想を得たこの食器セットを自ら購入した。王妃はこれを母のマリア・テレジアに贈っている。スープ鉢2点とボトル・クーラー2点、皿36枚などから成るこのセットは、極彩色を特徴とする日本の伊万里焼を下敷きにした独特の装飾ゆえに「食器セット〈日本〉」と記録されている。セーヴルの絵付け職人たちは、ヨーロッパの陶磁器に特有の曲線状のフォルムの上に青地を施し、そこにまとまった絵柄を描き、釉薬(うわぐすり)の上から鉄赤色で線描を補って金箔をあしらうという、日本の磁器の技法を援用した。カルトゥーシュ〔巻き紙装飾の縁飾り〕の中に数本の桜の幹や菊を集めて丘のように描いているのは、日本の構図に着想した図柄である。

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