第9章 王妃の私的な離宮:トリアノン

フランソワ・デュモン
《マリー・アントワネット》

象牙の上に描かれたこの細密画は、フランソワ・デュモンの署名がみとめられ、1792年のアレクサンドル・クシャルスキによる肖像画に基づいている。王政復古期に金枠付きの鼈甲(べっこう)の小箱に取りつけられ、刻印が示すように1809 年から1819年の間に制作された。箱の裏側には「王妃の毛髪」と記銘があり、花綱が描かれた縁飾りに嵌(は)め込まれた小さな三つ編みが、王妃自身のものであることを裏付けている。
この王妃の形見は、アングレーム公爵夫人から、革命裁判でマリー・アントワネットおよびマダム・エリザベトの弁護を行った弁護士ショヴォー=ラガルド(1756-1841)に贈られたとされている。

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