世界まる見え!テレビ特捜部
07/11/05 OA
命がけ 氷の道を行く男達
インド北部ヒマラヤ山脈の奥地、
標高7000メートル級の山々に囲まれた「ラダック」。
チベット最後の秘境とも言われる、この地を流れるのが
インダス川の源流、ザンスカール川。
この川は、冬になると凍り、なんと人々が行き来する道になるのである。
人々はこの道を、チベット語で『氷の河・チャダル』と呼ぶ。


チャダルを歩くことができるのは、1月から3月までの、わずか2か月間。
しかも、急に氷が割れたり、雪崩が起こることさえある、非常に危険な道なのだ。
だが彼らは、この道を使わなければ生活できない。
病気を治すにも、塩など生活必需品を手に入れるにも、
ラダック地方の首都・レーにいかねばならないのだが、
このチャダルが、首都・レーに繋がる唯一の道なのである。
そう、冬はマイナス30度にもなる、閉ざされたこの地の
ライフラインがチャダルなのだ。


さらに彼らは冬の間、このチャダルを使って、ある荷物を運ぶと言う、
危険な仕事をこなすことで、収入を得ている。
その仕事とは、夏に切り出した木材を運搬すること。
そう、ザンスカール最大の街パドゥムから、リンシェまで
危険な氷の川の道を歩き続け、人の力だけで、
大きな木材を50キロもの距離を運ぶのだ。
ちなみに、どの木材を誰が運ぶかを決めるのはくじで、
どんなに長くても大きくても関係なく、1本の運搬代金は、およそ500円。
この額で砂糖と米、一袋づつが手に入るという。


こうして、出発したキャラバン。
「氷の河・チャダル」は一見、しっかり凍っているように見えるが、
気温がたった1℃あがるだけで、氷が解け、道が途切れてしまう。
そのため時には、木材をいかだ代わりにして水の上を進んだり、
冷たい氷で足を慣らして川に入らなければならないのだ。


そして、なんとか50キロ先のリンシェの町へ木材を届けることが出来た。
だが、これで終わりではない。
この先はなんと、子どもたちがこの旅に参加するのだ。
それは、首都・レーに移動して、冬の間も勉強をするため。
実は、子どもたちは、地元の学校でチベット語はもちろん、
ウルドゥー語や英語まで勉強しているが、
それを教えてくれる教師は、5月か6月に来て、気候のよい2、3ヶ月しかいない。
そのため、冬の間、子どもたちが授業を受けるには、
遠く離れたレーの街にある学校に行かなければならないのだ。


「氷の河・チャダル」を、90キロ近く歩く、幼い子ども達。
子どもを伴うことで、チャダルの旅はより一層危険になる。
先頭を歩くのは最年少の子どもで、
キャラバン全体がそのスピードにあわせて歩く。
足下の氷が割れると、大人たちは体力を守るため、
子どもたちを背負って行かなければならない。


こうして、リンシェ出発から4日目。
厳しい道のりの末、ラダックの首都レーの街に到着した。
子どもたちはこの地にある学校に、春が来るまで通い、
大人たちは運んできた品物を売って、現金を得るのである。


幻の道チャダルは、そこに住む人々の生活を、
いまだ支え続けているのだ。


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