世界まる見え!テレビ特捜部
11/08/08 OA
エンジン停止!上空12000メートル死のフライト

1983年7月23日。この日、当時の最新鋭ハイテク機ボーイング767型機が<モントリオール>
から<エドモントン>へと向かっていた。デビュー間もない機体を任されたのは、
機長「ボブ・ピアソン」と副操縦士の「モーリス・クィンタル」。

順調だったフライト・・・しかし、突然、コックピット内に、燃料圧の異常を知らせるアラーム音
が鳴り響く。これを、危険と判断した機長ピアソンは、目的地エドモントン行きを諦め、
近くにある<ウィニペグ空港>への緊急着陸を決断。ところが、間もなく左のエンジンが停止。
そして、右のエンジンも停止。更に、飛行機の現在位置を確認できるモニターの電源まで
落ちてしまった。しかも、管制塔のレーダーからも飛行機の位置が消えてしまう。
どこを飛んでいるか誰も分からないまま巨大な飛行機は刻一刻とただ落ちていく。

管制塔ではベテラン管制官「ロン」が今では使われなくなった旧式のレーダーで航空機の
位置を確認。ベテランの経験がなせるアイディアだった。現在位置はウィニペグまで、
後104キロ。目指していたウィニペグ空港まで、とても届く距離ではない。

この絶体絶命の事態に、19キロ先にある現在閉鎖中の元空軍の飛行場、「ギムリー空港」
に着陸することを決断。だが、このままでは、高度が高すぎる。この緊急事態に
ベテラン機長ピアソンは、機体の小さな飛行機などで使われる手法『スリップ』を決行。
スリップを使えば、急激に高度と速度を下げることが出来る。しかし、それを巨大なジェット機
で行おうというのは、あまりにも無謀なチャレンジ。一瞬でも操作を誤れば、制御不能に陥り
墜落は免れない。旅客機は、着陸態勢に。滑走路に接地した途端、前輪が破損し、機首
をこすりながら突き進む。なんとか機体は停止。なんと1人の犠牲者も出すことなく、
着陸に成功したのだ。
翌日、事故の原因究明のための現場検証が行われた。原因は驚くべき、人為的ミスによる
ものだった。導入されたばかりのボーイング767は、エアカナダでは初めて、キログラムでの
燃料計を搭載した機体だったのだが、地上係員は、それまでの習慣に従い、ポンド単位で
給油をしてしまったのだ。それでは、満タンにしても半分程度しか、燃料が積まれていない
ことになる。

あまりにもおそまつな単純ミスが引き起こした重大な事故。
現在では世界各国の航空会社が、この事故を教訓にしている。


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