睡蓮
 クロード・モネ (Claude Monet, 1840〜1926)
 ※ 油彩・カンヴァス 1914-17年 130×150cm
 ジヴェルニーの水の庭園での成果である《睡蓮》の連作48点による個展が1909年パリのデュラン=リュエル画廊で開催され好評を博したモネだったが、相前後して自らの視力障害や妻や子の死といった不幸に見舞われ、制作活動が数年間中断される。しかし、友人らの励ましをえて1914年には制作を再開する。それはモネ永年の夢であった睡蓮の大装飾画の制作であった。この構想のためにモネは大アトリエを新設、睡蓮の開花時期である春夏には庭園で池の情景をカンヴァスに描きとめ、冬はアトリエにこもって習作を参考に大カンヴァスに向う日々となる。この成果はモネの死後、パリのオランジュリー美術館に設置され、現代の私たちを楽しませてくれる。
 この作品もこうした晩年の一連の創作活動から生まれたもののひとつであろう。水面に映る青空と白い雲のコントラストが印象的だ。《睡蓮》をモチーフにしてはいるが、ここでは水面の反映それ自体がモネの関心であるのが明らかだ。
(解説・東京都美術館 学芸員 河合晴生)