2回目でもおいしい!目がテン!?ライブラリー


九州の珍魚 ムツゴロウ  #555 2000/11/05

 有明海は、福岡を初めとする九州4県にまたがる広大な干潟。その干満差7メートルは日本一を誇ります。そして有明海といえばムツゴロウ。かつてムツゴロウを有明海以外の干潟に放したことがあるのですが、何と死んでしまったのです。ムツゴロウは有明海にしか棲めない魚だったんです!そしてあの、陸上で見せる不思議な生態とは?今回は不思議な魚・ムツゴロウと有明海を科学します。

 矢野さんが野生のムツゴロウを捕まえたい!とまた無謀な挑戦を始めます。早速ガタスキーに乗って、干潟の上を走ります。すると潟の上を悠然と歩き、しかもさっと巣の中に入ってしまうムツゴロウ。しかしなぜムツゴロウは陸上で行きられるのでしょう?

 そこで、陸上でも生きられる魚3大巨頭のウナギ、ドジョウ、ムツゴロウの、どの魚が陸上でより長く生きられるか競争しました。我慢できなくって水に飛び込んだら負け、というレースです。すると何と、ムツゴロウが一番早く水に飛び込んでしまいました。その記録は20分。何度試しても結果は同じでした。実はムツゴロウには、ウナギと同じ皮フ呼吸の機能があるのです。しかしなぜムツゴロウはウナギに負けてしまったのでしょう。皮フ呼吸では空気中の酸素を一度水に溶かして吸収するので、体が乾燥すると呼吸ができません。ウナギは、あの独特のヌメリが水分を保つ働きを持っているのですが、ムツゴロウにはヌメリをあまり持っていないので、皮フが乾燥しやすかったのです。その代わり、ムツゴロウには、時々体をコテっと転がすことで、水分を補給していたのです。

所のポイントムツゴロウは皮フ呼吸により、陸上で生きていける!


 矢野さん今度はムツゴロウ釣りに挑戦です。ムツゴロウの歯を見ると、なかなかに鋭い歯をしているんです。これは肉食に違いない!矢野さんは早速ゴカイを付けて釣りに挑戦しましたが、全然釣れません。

 よく見るとまたもやムツゴロウに不思議なしぐさが。口で潟の土をゴシゴシとひっかき、更に口をモグモグとしているのです。実はムツゴロウは泥の中の単細胞生物、ケイ藻類を食べていたのです。ムツゴロウの鋭い歯は、泥の中のケイ藻類をかき入れるための道具だったのです。

ムツゴロウの歯  陸上でばかり見るムツゴロウ。何と潮が満ちてきたら、あわただしく海水から逃げるように自分の穴の中へ入っていくではありませんか。もしかするとムツゴロウは泳げない?そこで、水の中にムツゴロウを入れて見ました。水に入れてからしばらくの間、ムツゴロウは、水中でじっとしたまま動きません。待つこと30分、ついにムツゴロウが泳ぎ出しました。しっかりエラ呼吸をして、なかなか器用に泳ぎます。ムツゴロウは、干潟の出ている3時間だけエサをとるために動き回り、それ以外は巣穴の中でじっとしているという、もともとあまり動かない生き物だったのです

 しかしいったいなぜムツゴロウは有明海にしか棲めないのでしょう?その秘密はその泥と、そして日本一を誇る干満差にありました。魚住りえアナウンサーが、日本の主な干潟の泥をかき集めました。すると他の干潟の泥に比べ、有明海の泥の粒は、驚くほど小さいものだったのです。今からおよそ9万年前、阿蘇山の噴火のときに降り積もった火山灰が原料のこの泥は、シルトと呼ばれ、直径約0.02〜0.002mmの大変小さい粒でした。ムツゴロウは、皮フ呼吸を効率的に行なうために、皮フが大変薄くできています。ウナギの皮フの厚さが2mmなのに対し、ムツゴロウはたったの0.2mm。そのため有明海の干潟以外では泥の粒の大きく、皮フを傷つけてしまって生きていけないのでした。また、有明海の干満は、その差が7mと日本一です。そのため大量の海水が常に入れ替わり、東京湾の2倍の酸素量が溶け込んでいます。この豊富で新鮮な海水が、ムツゴロウだけでなく有明海の豊かな生態系を維持しているのです。

所のポイントムツゴロウは、泥の粒が細かい、有明海でしか生きられない!


他のムツゴロウに威嚇  ムツゴロウは実はなわばり意識の強い魚。ムツゴロウは、自分の巣穴の半径1mの円の中で生活しています。この縄張りに他の生き物が侵入すると、背ビレを広げ体当たりをして威嚇します。そこで矢野さんは、カゴと鏡を用意しました。鏡を見て敵だと思って威嚇している所を。かごが落ちて捕まえる、という算段です。巣穴の側に鏡を置くと、ムツゴロウが反応しました。鏡に体当たりをした瞬間に思いっきりカゴのつっかえ棒を引いたのですが、なんと鏡がつっかえてムツゴロウに逃げられてしまいました。矢野さん、今回も失敗でした。



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