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神秘の樹氷 蔵王 の科学  #565 2001/01/21

 スキー、スノーボードシーズン真っ盛り!日本を代表する、スキー場の一つが、山形県と宮城県にまたがる蔵王です。しかし蔵王で有名なのはスキー場だけではありません。ここは日本で唯一、樹氷という不思議な現象が見られる所なのです。いったい樹氷とはどんなものなのでしょうか?そしてここでしか出来ないわけとは?フロリダ以来の登場となる冒険家・インディ矢野・ジョーンズが樹氷を探す冒険に出ました。

雪の結晶  インディ矢野はきびしい冬山を登り続けます。すると、突然周りが真っ白になるホワイトアウトという現象に襲われました。立ちすくむインディ矢野。この現象には、蔵王の、パウダースノーが大きな役割を果たしていました。蔵王の雪を拡大してみると六角の板状になっています。一般的な、ぼた雪の結晶といえば六角形に角の生えた、六花型と呼ばれるモノ。パウダースノーとぼた雪とで同じ体積分の重さを測ってみると、ぼた雪は88.6g、それに対しパウダースノーは45.8gと、パウダースノーの重さはぼた雪の約半分。さらに、ぼた雪は握ると固まるのに、パウダースノーは握っても固まらずにサラサラと崩れてしまいます。パウダースノーとは、軽くて水分の少ない雪のことだったのです。日本海側にできた雪雲が山に当たって不純物と水分を多く含んだぼた雪を降らせてしまうため、その後に降る蔵王の雪は水分の少ないパウダースノーとなるのです。そして蔵王の気温が、日本海沿岸部の豪雪地帯よりも低いことも、パウダースノーが降り積もる要因となっています。

 しかしパウダースノーだけがホワイトアウトの原因ではありません。風。が軽く細かいパウダースノーを巻き上げることで視界をすべて真っ白におおい尽くすのです。

 蔵王のもうひとつの有名なものが、お釜と呼ばれる、山の上に有る火口湖。五色沼ともよばれ、緑色を中心として様々な色に、湖面が変化するといわれています。これはこの湖の水質に秘密がありました。お釜は約300年前の噴火による噴火口に水が溜まったもので、イオウ分が非常に多いのが特徴です。そのため水のPHは3.5!これはレモンと同じくらいの酸性度です。そのためお釜にはほとんどの生物が棲むことが出来ません。しかし単細胞生物のケイ藻類で、酸性に順応したものだけ生きています。このケイ藻類の緑とイオウ分の白が混ざり合うことできれいなエメラルドグリーンとなります。それが太陽の光の角度によって様々な色に見えるというわけです。

 インディ矢野も、樹氷探索を中止して、お釜を見に出かけました。圧雪車で進むこと2時間、さらに雪深い山道を歩きで1時間・・・やっとの事で山のてっぺんに辿り着いたインディ矢野でしたが、なんとこの時期お釜は、雪におおわれて真っ白!!その美しいエメラルドグリーンを見ることは出来ませんでした。

所のポイントお釜とは、レモンと同じ酸性度の水を持つ湖だった!


樹氷  我々の真の目的はあくまで樹氷!インディ矢野一行は、再び樹氷原へ。しかし日没のため、この日は断念。そして翌日、なんとスタッフの想像を絶する猛吹雪が発生!山形新幹線も開業以来初めて雪でストップするという事態になってしまい、この日もロケ中止!翌日、やっと天候が回復したものの、スケジュールのために残念ながらリタイアした矢野さんに代わり、スタッフが樹氷を求めて道なき道を進みました。そしてついに樹氷原にたどり着きました。高さ3mほどの樹氷がおよそ数千本!けれどこの樹氷、なんだか形が変です。樹氷には一定の方向にエビの尻尾と呼ばれるモノがついているのが特徴なのですが、そのエビの尻尾が見当たりません!さらに裏へ回ると、驚くことに樹氷の半分が崩れてしまっています。これはどういうことだ!!実は昨日の大雪と吹雪が原因で、樹氷がみんな壊れてしまったのでした。う〜ん残念。

 ところで、どうして樹氷は蔵王でしか出来ないのでしょう?それには3つの条件が有ったのです。一定方向の風と、低い気温と、木。蔵王に吹く風は、シベリアからの北西風です。この風が、樹氷原を挟むように立っている地蔵岳と三宝荒神山の間を抜けるために、一定方向の強い風になります。そしてパウダースノーを降らせる低い気温と、冬でも葉をつけてこの地域に生えている常緑針葉樹オオシラビソ(アオモリトドマツ)がそろい、樹氷が完成するというわけです。しかしそれだけでは樹氷は完成しません。そこには、零度でも凍らない水、過冷却水滴が必要だったのです。この過冷却とは、0℃以下になっても水が凍らない状態をいいます。水は、何にもさわらずに静かに冷やされれば氷点下以下になっても凍ることはないのですが、そこにショックを与えると、瞬時に凍りついてしまうのです。これと同じ状態が、樹氷でも起きていました。空気中の過冷却状態の水分が、木に当たって凍りつき、そこに雪が積もって長く伸び、エビの尻尾となるのです。

 このエビの尻尾があきらめられないスタッフは、人工樹氷作りに挑戦しました。マイナス10℃の低温実験室にオオシラビソをセッティング。扇風機で風を起こし水分を送ります。さらにふるいでパウダースノーを降らせて作業は延々5時間・・・ここまでやって、ようやくエビの尻尾らしきものができた樹氷の赤ちゃんが出来た程度でした。大自然の力は偉大です。

 なお全国の皆さんは、インディ矢野ジョーンズのようなマネをしなくても、天候さえよければ、誰でもリフトで樹氷を見に行くことが出来ます。ご安心ください。

所のポイント樹氷が出来るためには、0℃以下でも水が凍らない、過冷却が必要だった!




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