2回目でもおいしい!目がテン!?ライブラリー


なぜ大きい? カバ の口  #566 2001/01/28

 大きな口が特徴の珍獣、カバ。かつてカバは大変な人気で、お菓子メーカーのトレードマークにも使われているほどでした。ところがいまやカバの人気は、すっかり地に落ちているということ。そこで今回、目がテン!ではカバの魅力を徹底的に再検証!あの大きな口はいったい何のためにあるのでしょう?という根本的な疑問を解き明かします。

カバ  矢野リポーターは、長崎の動物園にカバの観察に出かけました。ここはカバを比較的自然に近い状態で飼育している施設。そこでカバの一日に密着してみたところ、カバは昼間、全くといっていいほど陸上には上がって来ず、水中でもっぱら生活していたのでした。。カバは意外や意外、水中での生活が主である動物だったのです。カバの体重は約2t。陸上だけの生活では、カバの短い足で支えるのにはちょっと重過ぎます。そこでカバは厚い皮下脂肪をそなえました。ほぼ同じ体格のサイが2cmの厚さなのに対し、カバは倍の4cm。このたっぷりの皮下脂肪のおかげで、重い体重にもかかわらず、カバは水に浮きやすく、水中で動きやすいのです。さらにカバの鼻と目と耳は一直線上に並び、そこだけ水面から出るようになっています。これはワニの顔などと同じ構造で、水の中に住むのに適した構造なのです。

 そもそもなぜ水中に住むようになったかというと、カバにとって水の中が敵から身を守るのに好都合だったからなのです。カバの天敵のライオンは、水に濡れるのが大嫌い。水中にいればカバは天敵から襲われずに安全なのです。そのためカバは、交尾も子育ても全て水の中で行います。

 しかし、カバが唯一陸に上がる時間があります。それはエサの時間です。カバの住むアフリカの川には水草が少ないためか、なぜだかカバは陸上の草しか食べません。そこでカバは、天敵を避けて、夕方から夜にかけて陸に上がり、時には10kmもの道のりを歩いて草を食べに行きます。そして夜が明ける前に再び安全な水中に戻っていきます。このようなカバの習性は、半夜行性といいます。

所のポイントカバは天敵から身を守るために水中で暮らすことを選んだ!


赤い分泌液  カバは不思議な生態を次々と見せます。まずは赤い汗。正確にはカバには汗腺がないので汗ではないのですが、タオルでふき取るとまるで血の汗をかいているようです。これはカバの皮フを保護するためのものでした。一日のほとんどを水中で過ごすカバには、あまり毛がありません。そのため油分を含んだ分泌液を出して、皮フの乾燥を防いでいたのです。そしてこの分泌液には、血液中に含まれる成分であるヘモグロビンが含まれており、このヘモグロビンの鉄分が酸化することで赤くなっていたのです。

 さらにカバは、まきフンという、ちょっと汚い習性も見せるのです。しっぽで出てきた糞をあたりに撒き散らすというこの行為、実は匂い付けのためでした。カバがエサを求めて移動するのは夕方です。しかし水辺に戻るのは深夜で、あたりはもう真っ暗です。そのためカバは、フンの匂いを頼りに水辺まで戻ってくるのです。さらに水辺で暮らすカバは水に流される尿ではなく、匂いの残りやすい固体のフンで匂い付けをする必要があったのです。
 つまり、赤い汗も、まきフンも、カバが中途半端に水中に適応したがための特徴だったのです。

 いったいカバの大きな口は何のためにあるのでしょう?大きなエサを食べるため、なのでしょうか?そこでスイカを与えてみたところ、ほとんどをこぼしてしまいました。実際カバの口をよく見てみると、入り口は広くても奥は狭く、奥歯からノドにかけての部分は、幅が15cmしかありません。どうやらカバの大きな口は、エサを食べるのには関係ないようです

 では何のためなのでしょう?そこで、ライオンを使ってこんな実験をしてみました。エサの肉の前に、口を大きく開けるカバの模型を置いてみたのです。エサを獲ろうと近づいたライオン、そのとき模型の口がぱくりと開いた!するとライオンは、警戒した様子で思うように近づけない様子です。とうとうライオンはエサの肉をあきらめてしまいました。ライオンは一体何を怖がっていたのでしょうか?そこで今度は模型の牙を取り外し、同じ実験を試みました。するとライオン、初めは少しびっくりしたものの、今度は模型に猛烈アタック!ついに模型を壊してエサの肉をゲットしてしまいました。

 実はカバの大きな口は牙を見せつけるためのものだったのです。牙を持つ動物は、その武器を見せつけることによって敵を威嚇します。食べるのには役に立たないカバの大口も、身を守るためには大きな意味があったのです。

所のポイントカバの大口も、敵から身を守るためのものだった!




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