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 奈良の大仏 建立の科学  #578 (2001/04/22) 

 春、いよいよ観光シーズンの到来!奈良が誇る世界遺産が、東大寺。そしてその主役が、奈良の大仏さまです。

 その奈良の大仏さまの前に現れたのが、奈良時代よりやって来たという謎の人物、矢野麻呂(矢野明仁)です。その矢野麻呂が叫びました、「お顔が違う!」。実は奈良の大仏さまは、腰から下だけが奈良時代のもので、そこから上は度重なる戦乱で消失。顔は江戸時代に作られたものだったのです。

 そこで矢野麻呂が立ち上がります。「奈良時代の大仏さまを再現するぞ!」。果たして矢野麻呂の試みは成功するのでしょうか?

 今から1300年も前に、いったいどうやってあの大きな大仏さまを作ったのでしょう?もともと小さな模型を作りそれを拡大していったらしいのですが、いったいその方法はどんなものだったのでしょうか?残念ながらはっきりとした方法は分かっていないのです。

 矢野麻呂はまず顔の再現に乗り出しました。いったいどうやって拡大したらいいのでしょう?そのヒントは意外なところに有りました。それはコンピューターグラフィックスだったのです。例えばCGでボートを立体的に描く場合、最も簡単な方法は、平面にボートの輪切りの面を作り、それをつなげていきます。すると、立体のボートが出来上がっていきます。「断面を重ねれば立体になる」なら、断面を拡大していけば、そのまま立体も拡大できるはず。そこで矢野麻呂は、大仏さまの頭部を拡大することに挑戦しました。まず、大仏さまの模型を4mmずつの間隔で26個に輪切りにします。そしてそれぞれの断面を1マス1mmの方眼紙に写し取り、それを1マス20mmの方眼紙に20倍に拡大して写し取ります。拡大した方眼紙をダンボールに貼り型どおりに切り抜いて重ねます。4mmの20倍で8cm間隔のダンボールを26枚重ねると、大仏さまの輪郭が浮かび上がってきました。作業から13時間、高さ2.5m、実際の2分の1のサイズになる「奈良の大仏さま」頭部模型は見事完成しました!

所さんのポイント
立体の拡大は、幾重もの断面図を拡大してできる!

 大仏さまは銅像です。矢野麻呂は、奈良時代と同じコシキ炉という炉を使って銅を溶かす事に挑戦です。木炭で火を起こし銅を溶かすものなのですが、矢野麻呂がいくら待っても銅は溶けてくれません。

 それもそのはず、矢野麻呂はふいごで空気を送るのを忘れていたのです。奈良時代には、たたらと呼ばれていた大型の送風装置を使って炉に空気を送り込んでいました。銅は1083℃で溶け始めるのですが、木炭の火は、そのままだと800℃が限界で、あと300℃近く温度を上げなければならなかったのです。大学の相撲部の皆さんにも手伝ってもらい、交代でふいごを踏むこと1時間、ようやく炉の温度は1000度を超え、2時間経過したところで炉の中の銅は全て溶けました。  しかしここでまた問題が。実は大仏さまは銅100%ではなく、合金で出来ていたのです。奈良の大仏さまは、スズが約2%混ぜられている青銅だったのです。銅とスズの合金である青銅は、銅よりも融点が低くて溶けやすく、鋳造に使いやすいという利点がありました。更に強度にも違いがありました。青銅は、純粋な銅よりも強かったのです。純粋な銅は、同じ形の原子だけが並んでいるため原子同士がズレやすく、曲がりやすいんです。一方スズを混ぜた青銅は、銅と銅の原子のすき間にスズの原子が入り込み、原子同士がズレにくく曲がりにくいという訳です。

所さんのポイント
溶けやすく強い青銅は、奈良時代の超合金だった!

大仏の2段目に銅を流し込む  いよいよ矢野麻呂が奈良時代の大仏再現に挑戦です。けれど実物大では500tもの銅が必要となるため、残念ながら実物の40分の1の大きさです。まず原型となる像に土をかぶせて外側の鋳型を作ります。そして一旦型をはずして像の表面を5mmだけ削ります。次に木炭の火を置いて像と型の余分な水分を飛ばします。こうしないと、溶けた金属を流し込む時、水蒸気が爆発を起こす恐れがあるためです。それから「型持ち」と呼ばれるびょうを埋め込んでいきます。これにより型持ちの飛び出た頭の分、像と型とのすき間が保たれます。

 さあ、ここからが本番の鋳込みです。本物の奈良の大仏さまは全体を8段に分けて鋳込みましたが、今回は4段に分けての作業です。1段ずつ型をはめて土で山を作り、像と型との間に熱く溶けた青銅を流し込みます。こうして2段目以降も同様の作業を繰り返すのです。

目がテン!オリジナル大仏  ここまでの作業は見事成功です。でもまだ最後の仕上げの作業が残っていました。実は当時の大仏さまは金のメッキが施されていて、なんと440kgもの金が使われていたというのです。その方法とは、水銀に金が溶ける性質を利用して金の薄い膜を貼り付けるというものです。金1に対して水銀5の割合で混ぜ、金アマルガムという合金を作ります。この金アマルガムを塗り、火であぶると、水銀だけが蒸発して金が残り、薄い金の膜を貼った状態となるのです。ただし水銀は猛毒で、取り扱いは非常に危険なので、絶対にマネをしないで下さい。こうして、ついに高さ37cm、40分の1のサイズの大仏さまの完成です!けれど仏教の世界では、大仏さまというのは座っている像の場合、高さ2.4m以上のものをいい、これはさしずめ小仏さま・・・。でもその立派なお姿には、所さんも大感動でした!


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