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 秋のススキで舟を作れ!  #601 (2001/10/07) 

 秋はお月見の季節。そしてお月見にかかせないのが、団子とススキ。もともとはイモとイネがお供えだったのですが、いつしかこの2つに代わっていったそうです。実際ススキはイネ科の植物なのでイネの代わりになっていったのもうなずけます。今回は秋の風物詩、ススキの謎に迫ります。

ススキとおしべとめしべ  矢野左衛門が向かったのは富士山麓。あたり一面にススキが広がっています。みなさん、ススキの花を見たことがありますか?花といっても花びらはなく、おしべとめしべだけなのです。ススキは風に吹かれて受粉する風媒花だったのです。

 それでは人工的に扇風機で、ススキの種子を飛ばしてみましょう。すると強風にしても、飛ばない種子が7割ほど有りました。飛んでいった種子と残った種子の重さをくらべてみたところ、飛んだ種子の方が重かったのです。飛んだ種子は受粉がちゃんと出来、成長した種子なのです。受粉率は低いのですが、ススキは地下でも増えていくので問題は無いのです。

所さんのポイント
ススキの種子は7割が受粉出来ず飛ばない。これが枯れススキのもと!

 ススキ野原に入った矢野左衛門。するとススキの葉で手を切ってしまいました。そこでススキの葉を顕微鏡で見てみると、葉のふちがのこぎりのようにギザギザな透明なものになっていました。さらに調べると葉の表面にも四角いブロック状の透明なものが背骨のように並んでいました。これらは珪酸体(けいさんたい)とよばれるものでガラスの主成分でもあります。ならばススキでガラスは作れないかと矢野左衛門は5キロのススキを持ってガラス工芸品の学校に行きました。ススキを燃やし灰にして、るつぼと呼ばれる容器に入れ、さらに1250℃の火で2時間燃やします。すると何やら茶色いものが容器の底にできました。これがガラスでした。確かにススキからガラスは出来たのです。

 矢野左衛門が街を歩いていると出会ったのが茅葺き(かやぶき)屋根の家。茅葺きの“茅”って、そもそも何なのでしょう?実はこの茅という植物は実際には存在しません。ススキなどイネ科の植物の総称を茅というのです。

 この茅葺き屋根の家の居住性ははたしていいのでしょうか?まず家の中で火をおこしてみました。すると天井に上がった煙は屋根を通り抜けてどんどん外へ出て行きました。どうやら通気性は非常に優れているようです。でもこんなに通気性が良くて雨漏りはしないのでしょうか?そこで矢野左衛門は消防車に来てもらい放水実験を決行!なんとわずか4分間で4トンもの水を降らせました。しかし、水は一滴たりとも漏れません。実はススキの表面には油分が有り水をはじく性質があるのです。さらに茎の中には芯があり水を吸い込みにくいという性質もあったのです。

矢野左衛門とススキ舟  世界では草の舟が使われています。アシで作られた舟が大西洋を横断したこともあり、日本でも神奈川県三浦市ではムギワラの舟が作られているのです。そこで矢野左衛門は考えました。“ススキで舟を作ろう!”早速三浦市の方に協力をあおぎ、ススキの舟作りに取り掛かりました。タケで枠を組みそこにススキをつめるという、意外と単純な作業。すると総重量150キロ、全長4メートルのススキ舟が完成!地元の方々が見守る中、恐る恐る舟を海に浮かべてみたところ、舟は見事に浮きました!ススキの茎にははっ水性が有り、さらに細胞の中には空気が豊富に含まれているので浮くのでした。



所さんのポイント
ススキの舟は、体重約0.1トンの矢野左衛門が乗っても浮いていた!


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