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今ブーム! 陶芸 の科学
第771回 2005年3月6日


 数年前から陶芸がブームになっています。そして春は、実は陶磁器の売れ行きが1年を通じて一番高い時期。そこで今回と次回の2回にわたって陶磁器をテーマに取り上げます。今回は陶器編。新キャラ・矢野大路魯山人(やのおおじろさんじん)が陶芸にチャレンジします。

 そもそも陶磁器とは、粘土を主原料とし、これに珪石や長石を混ぜて焼いた物のこと。珪石は器の骨格の役目をしており、長石は焼いたときに融けて、土と珪石をつなぐ接着剤の役目をしています。ですので、長石や珪石を入れないで粘土だけで作ると、骨格も接着剤も無い状態なので、手でも簡単に割れてしまうのです。

 矢野大路魯山人は、まずは陶器作りに挑戦。陶器作りには、陶土という粘土に珪石と長石が混ざったものを使います。まず陶土をしっかり練り、中に入っている空気を出します。次にロクロを使い、この陶土を作りたい物の形に成型していきます。その後、一週間乾燥させてから窯で焼くのですが、矢野大路はとても待てないと、すぐ窯で焼くことにしました。
 2日後、900度で焼いた窯の中を見てみると、なんと置いたはずの器が粉々に割れていたのです。実はこれは、水蒸気爆発によるもの。陶土の中にある水分が熱せられて水蒸気に変化し、急に膨張しようして壁面を破壊してしまったのです。最初に陶土をよく練って空気をなくしたのも、空気に含まれている水分が水蒸気爆発を起こさないようにという理由からなのです。

 そこで気を取り直し、もう一度ちゃんと乾燥させてから窯で焼くと、今度は上手に焼きあがりました。しかし、その焼きあがった陶器でお茶を飲んでみると、なんと水漏れしたのです。実はまだこの段階では素焼きと呼ばれる状態で、陶器は未完成なのです。素焼きの状態では、粘土の粒子が焼き固まっただけで長石は融けていないため、すき間があり水漏れしてしまうのです。
釉薬(ゆうやく)  この後に先程より高温の1200度以上で焼く本焼きという過程があります。ここで登場するのが釉薬(ゆうやく)という液体。これを塗って再び焼けば陶器は完成するというのですが、この釉薬とは何物なのでしょう?
 実は、釉薬とは長石と珪石に石灰と水を加えたもの。先ほどの素焼きとは、この釉薬を塗りやすくするための工程でもあったのです。いざ釉薬を塗り1200度で12時間焼くと、なんと器の表面がつるつるになっていて、お茶などを入れても水分が染み込まなくなったのです。その理由は、釉薬の中の長石と珪石が溶けてガラス化したから。普段は1600度でないと融けない珪石も、石灰のお陰で融点が下がり融けたのです。

所さんのポイント
ポイント1
陶器作りは、900度で素焼きをして釉薬を塗り、さらに1200度の高温で本焼きし、釉薬をガラス化すれば完成!

 さらに陶器の色付けも釉薬で行うと聞き、矢野大路は真っ赤な釉薬を塗って窯で焼いたところ、なんと焼きあがりは黒い色になっていました。しかも、同じ赤い釉薬でも、青白い色になる場合もあるのです。一体、どういうことでしょう?
 実は、その赤い釉薬には金属の鉄が混ぜられています。この赤い釉薬を塗って、窯の中に空気が十分にある状態で焼くと、鉄の入った釉薬は酸化して赤から黒に変化します。これを酸化焼成といいます。一方、窯の蓋を閉じ酸素の量を少なくすると、逆に鉄は酸素を奪われて赤から青白く変化するのです。これを還元焼成と言います。
 このように陶器の色は、金属の種類と窯の中の酸素の量を変えることで、なんと80種類以上もの色が出せるのです。

 さらに陶器には、もう一つの高等な技があるというのです。それはアカマツの薪を使いこの火と器を近付け、その灰を器の表面にくっつけるという技。そうして作った陶器を窯から出してみると、なんと灰がくっついた部分も、まるで釉薬を塗ったように表面がつるつるしてガラス化しているのです。一体、どういうことでしょう?
灰かぶりの模様  実は、アカマツの灰を分析してみると、珪石と長石と石灰が含まれており、まさに釉薬の成分と同じだったのです。さらに灰には、鉄など色を出す金属まで含まれているので、灰がかかった所とそうでない所では、色の濃淡が出て計算では作れない独特の光沢と色を生み出していたのです。これを灰かぶりと言って、陶器独特の焼き方なのです。

所さんのポイント
ポイント2
陶器は、釉薬の種類とこれを酸化させるか還元させるか、さらには灰かぶりの模様など、様々な要素が組み合わさってデザインが決まるのだ!




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