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なぜウマい アジ の干物
第779回 2005年5月1日


 開きの干物が実においしい魚、アジ。これから旬を迎えます。またアジ釣りの季節でもあり、30センチ越えの大物も釣れるといいます。そこで、2度めの登場になる謎の釣り名(迷?)人、矢野方弘樹が、大物アジ釣りに挑戦しました。

 アジは、イワシ、サバ、サンマと並んで大衆魚と呼ばれています。この大衆魚の共通点は、大きな魚に食べられてしまう弱い存在なので、子孫を絶やさないために大量に産卵することと、季節に合わせて群れで回遊することです。また背の色は、カモメなど鳥から見つかりにくいように海面のように青黒く、一方、腹の色は下から襲ってくる大きな魚に見つかりにくいように銀色をしています。

 さあ、矢野方弘樹が東京湾の入り口・走水沖で大物アジ釣りに挑戦!しかし、矢野さんの海釣りの歴史を振り返ってみると、魚を釣り上げた回数は未だにゼロ。ところが船に酔う確率は100%と情けなくなるような状況なのです。
 矢野方が釣り糸をたらすこと3時間…やはり、なかなか釣れません。また同じ結果に終わるのかと思った瞬間、アジがヒット!なんと釣り上げたアジは堂々たる大物、その大きさ40センチだったのです。
 しかし、佐藤アナがお店で買ってきたアジと矢野方が海で釣ってきたアジは、同じマアジなのに色や体型が違ったのです。一体、どういうことなのでしょう?
キアジとクロアジ  実は、佐藤さんが買ってきたのはクロアジと言って、体の色が黒みがかっていて体型は流線型をしています。一方、矢野方が海で釣ったのはキアジと言って、体全体が黄色がかっていて、よりふっくらしています
 さらに両者は生態も違い、クロアジは日本沿岸を回遊しますが、キアジは一生、回遊せずに、瀬と言われる海底が小高くなって盛り上がった場所で暮らしています。つまりマアジは、同じ種なのに棲息域が異なるタイプが存在する珍しい魚で、一般的には元々定着して暮らしていたマアジが、回遊するようになったと考えられているのです。

所さんのポイント
ポイント1
同じマアジにも、回遊するクロアジと回遊しないキアジの2種類がいた!大物はキアジの方。

 アジといえば開きの干物。しかし、なぜアジは干物にすると美味しいのでしょう?干物とは、魚肉から塩水で水分を抜き、さらに2〜3時間天日で干して水分を少なくしたもの。そうして水分を少なくすることで、うま味成分のアミノ酸を濃縮し美味しくしているのと、腐りやすかった魚の保存性を良くしているのです。
 しかし最近では、室内で干物を作る機械干しが普及しています。そこでスタジオで所さんに試食して頂いたところ、機械干しよりも天日干しの方が美味しいと言うのです。機械干しと天日干しの大きな違いと言えば、太陽光。一説によると、この太陽光の中の紫外線が、干物をおいしくしているのではというのです。
 そこで、こんな実験。街の日焼けマシーンを使って、片方には紫外線を当て、もう片方には紫外線を当てずにアジの干物を2種類作り、老若男女に試食してもらいました。すると、「紫外線を当てたアジの方が美味しい」という意見が多かったのです。紫外線にどのような干物を美味しくする効果があるかは、実は未だわかっていませんが、日夜研究がすすめられています。

 なぜアジは缶詰になっていないのでしょう?同じ回遊性で赤身の魚であるサバやイワシやサンマは、缶詰になっていますよね。一般に、回遊性の魚は長く泳ぐために、赤色タンパクという成分が多く身が赤くなります。そしてこの中に、うま味成分であるイノシン酸を引き立てるヒスチジンという成分が多く含まれており、うま味を多く含む分、赤身魚は缶詰にも多く使われるのです。
絶句する所さん  そこで回遊性で身が赤いアジも缶詰にすると美味しいはずということで、目がテン特製アジの水煮缶詰を作ってもらいました。そして、所さんに試食してもらうと、なんと「ここ何年間のうちで、一番まずい!」と絶句したのです。一体、なぜでしょう?
 実は、アジは大衆魚の中でも一番赤い身の部分が少なく、ヒスチジンの量もかなり少ないのです。さらに脂分も白身魚のように少なく、水煮にすると生臭さが鼻についてしまうのです。元々定着魚だったアジは赤身の回遊魚でありながら、むしろ白身魚に近い魚だったのです。

所さんのポイント
ポイント2
アジは赤身魚に見えながら、実は白身魚に近い魚。よって缶詰よりも干物の方が向いているのだ!




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