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砂が大好き!? 芝生 の謎
第782回 2005年5月22日


 アウトドアに出るのが気持ちいい季節。この時期、青々としているのが芝生ですよね。そもそも芝生とは、芝草と呼ばれる短い草がたくさん集まってじゅうたんのようになった状態を言います。その芝草の多くはイネ科の植物なのです。

手のひらの芝草・ほふく茎  まずは、身近にある芝生を調査。日本全国に自生している芝草というのは、ノシバという芝草。日本原産の昔からある芝草です。一方、一番馴染みがあり家の庭にもよく植えられているのがコウライシバ。皇居前広場の芝生もコウライシバです。これらの芝草は種子で増えるのではなく、地面すれすれに横に伸びるほふく茎という茎が広がって増えていきます。
 ところが、3年前に植えた矢野家のコウライシバの芝生は、今では枯れてしまって地面が見えているのです。一体、なぜ枯れてしまったのでしょうか?専門家に聞いてみると、なんと芝生の下の土が問題だというのです。矢野さんの庭では毎日子ども達が遊んでいます。そのため芝生の下の土が踏み固められてしまっているというのです。
 実は、芝生を育てるには砂の方が良いのです。例えば、人が踏んでも青々としているゴルフ場のコウライシバも、芝生の下は砂になっています。よくキャディーさんが空いた穴に砂を足しているのを見かけますよね。もともと芝草は、砂地に生える植物だったのです。
 土と砂の違い、それは粒子の大きさです。一般的に、砂は粒子の大きさが0.01mm以上のものを言い、土は粒子の大きさが0.01mm未満のものを言います。土の場合は、普段は細かい粒子がいくつかの団子状になっていてすき間がありますが、踏まれるとギュッと固まって芝草の根が入るすき間がなくなってしまうのです。一方、砂の場合は、もともと粒子が大きいので、踏まれてもすき間はなくなりません。そのため芝生の下を砂にしておけば、人に踏まれる場所であっても、根が張るスペースが確保されるため芝生は枯れないのです。
 しかも驚くべきことに、芝生は適度に踏まれた方が元気になるというのです。それは、芝草は踏まれるとエチレンという植物の成長や発芽を促す植物ホルモンの一種を分泌するため。つまり、適度に踏むことで成長に必要な植物ホルモンが分泌され、密度が高いキレイな芝生が出来るのです。ちなみに、よく公園で芝生に「立ち入り禁止」の看板が立っていることがありますが、その芝生の下は土の場合が多いのです。
 以上のことを踏まえて、矢野家の庭も大工事。芝生が根を張る15cmの深さまで土を掘り起こし、0.5mmの粒子の砂を敷き詰めました。すると青々とした芝生に生まれ変わり、子供たちが遊んでも枯れずに緑色を保ち続けています。

所さんのポイント
ポイント1
踏まれる場所の芝生の下は、土ではなく砂の方が良い!
しかも芝生は踏まれた方が元気になるのだ!


 通常、芝生は夏には緑色をしていますが、冬になるにつれて茶色くなって枯れてしまいます。しかし、サッカーのグラウンド(ピッチ)は1年中緑であることが多いですよね。これはどういうことなのでしょう?  そこでサッカー競技場の芝生を調べてみると、なんと2種類の芝草が出てきたのです。一つは、ほふく茎を持った見慣れた芝草。しかし、もう一つはまっすぐな直立茎をいう根を持った芝草だったのです。
 実は、この直立茎を持った芝草というのは、冬でも青々と生える冬芝と呼ばれる種類の芝草なのです。実はノシバやコウライシバは夏芝と呼ばれる芝草。ベント等の冬芝はほふく茎を持っていない代わりに種子で繁殖する芝草なのです。

所さんのポイント
ポイント2
サッカー競技場の芝生が1年中緑色なのは、夏に元気な夏芝と冬に元気な冬芝の2種類を植えていたからだった!

 なぜ芝刈りをしなくてはならないのでしょう?また、なぜ芝生はあんなに短く切っても、すぐ生えてくるのでしょうか?
 そこで、ウシに芝草とライ麦を食べさせ伸び方を比較してみると、芝草は1週間で元通りに戻りましたが、ライ麦はほとんど伸びずに枯れてしまいました。なぜ芝草だけ復活したのでしょう?
芝草の成長点  その理由は、成長点の位置にありました。成長点とは、通常茎の先端にあり、新しい細胞を作り出す部分。植物はこの成長点より下を切られると、これ以上成長できずに枯れてしまうのです。同じ長さの芝草とライ麦で成長点を調べてみると、ライ麦の成長点は地上からおよそ22センチの所にあり、一方芝草の成長点は地上からおよそ6センチというとても低い所にあったのです。芝草は、成長点が低い所にあるからこそ、刈られても枯れずにまた伸びることができるのです。



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