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なぜ甘い?旬果物 ナシ
第798回 2005年9月18日


 実りの秋!秋に旬を迎える果物はたくさんありますが、特に人気があるのがナシですよね。しかし、日本人にとってすごく馴染みの深いナシですが、外国人に見せてみると反応は今ひとつ。それもそのはず、欧米人にとってナシと言えばひょうたん型をした西洋ナシのことで、日本のナシは世界的には珍しい種類のナシだったのです。そこで今回は、身近な果物ナシの知られざる魅力を追究しました。

 「幸水」や「豊水」や「二十世紀」など、日本のナシにはいろんな種類がありますよね。そんな日本のナシのルーツはどこにあるのでしょうか?
ヤマナシ  そこで矢野さんが、ナシというからには山梨県にあるかもしれないと向かったところ、なんと本当に日本のナシの原種と言われるナシが存在するというのです。その名も「ヤマナシ」。山梨県には、このヤマナシの木が多かったから山梨と名がついたという説もあるほど。
 いざ案内されてヤマナシを見てみると、ヤマナシは普通のナシよりも小ぶり。さらに実の中にはツブツブがたくさん詰まっていて、とても硬かったのです。このツブツブは私達が普段食べているナシでも見られ、ナシ特有のシャリシャリとした食感を生み出しているもの。果たしてこれは何なのでしょう?
 実はこれは石細胞といって、ナシの果肉の細胞にリグニンという物質などが蓄積して、細胞の壁が厚くなったもの。この石細胞は、まだ実が熟す前には種子のまわりに多くあり、果肉を堅くすることで大切な種子を守っているのです。そして実が熟すと、石細胞は果実全体に散らばります。それが、ナシ独特のザラザラの食感を生んでいたのです。ちなみに日本のナシは、この石細胞が多いため、英語でサンドペアー(砂のナシ)と呼ばれています。

所さんのポイント
ポイント1
ナシにはその名も石細胞という、種子を守るための硬い細胞があり、これがナシ独特のシャリシャリという食感を生んでいた!

 もう一つナシの特徴と言えば、皮の表面に小さなブツブツが沢山ついていること。同じバラ科のリンゴはツルツルしているのに、一体、このブツブツは何なのでしょうか?
 実は、この皮の表面のブツブツは果点コルクが抜けた跡。コルクといえば思い浮かぶのはワインの栓ですよね。そもそもコルクとは、コルクガシという木の、コルク層という樹皮の部分から採取されます。このコルク層は、乾燥した気候でも木の中の水分を逃がさずに保つ役目をしているのです。しかし、そんなコルクがなぜナシにあるのでしょうか?
果点コルク説明  そもそもナシの実は、まだ熟していない頃、皮の表面にある気孔という穴で呼吸しています。しかし果実が成長し大きくなると、皮の表面も広がるので気孔は壊れてしまうのです。その時、この壊れた気孔の部分から、中の水分が出るのを防ぐのが先ほどの果点コルクの役目。内側からコルクでフタをして、水分を中に溜め込めるようにしているのです。水分の流出を防ぐという点では、まさにワインのコルク栓と同じ。ちなみにリンゴの場合は、クチクラ層というワックスの層を発達させることで、みずみずしさを保っているのです。

所さんのポイント
ポイント2
ナシの皮の表面にあるブツブツは、果点コルクの抜けた跡。
果点コルクが外に水分が逃がさないため、ナシはみずみずしいのだ!


 実は、お隣の韓国の人もナシは大好き。なんと1人当たりの消費量は日本の4倍もあるのだそうです。驚くことに、1年中使えるようにナシを冷凍までしているほど。その理由は、焼肉のタレなど韓国料理では調味料としてナシが使われているからなのです。さらに取材した韓国料理のお店では、すりおろしたナシに肉を一晩漬け込んでいました。しかし、何故そんなにナシを調味料に使うのでしょう?
 そこでこんな実験。ナシに漬け込んだ肉、リンゴに漬け込んだ肉、何にもしていない肉の3種類を用意し、それを同じように焼いて食べ比べをしてもらいました。すると、なんと20人中17人がナシに漬け込んだ肉が一番軟らかいと答えたのです。
 実際に、食物の硬さを計る機械で調べてみると、確かにナシに漬け込んでいた肉が一番軟らかくなっていました。実はその理由は、ナシに含まれているタンパク質分解酵素のおかげ。ナシは、果実の中に病害虫が侵入してこないようにタンパク質分解酵素を持っています。そのナシのタンパク質分解酵素が、肉のタンパク質を溶かすことで軟らかくなったのです。さらにナシには、殺菌効果もあり、こういった理由で韓国料理によく利用されていたのです。



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