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即席めん に4つの秘密
第860回 2006年12月10日


 いつでも手軽に食べられるおいしいカップラーメン。今回は、日本で生まれた世界的大発明のカップラーメンを科学します。

 昭和33年、東京タワーが完成し、長嶋茂雄がプロ野球界にデビューしたその年に、世界の食文化を変えることになる大発明品インスタントラーメンが誕生しました。これにより、ラーメンが簡単に食べられるようになりました。13年後インスタントラーメンはさらに進化をし、お湯を入れればいつでもどこでも気軽に食べられる画期的な食べ物、カップラーメンが誕生したのです。カップラーメンは瞬く間に世界中に普及し、日本では現在年間33億食も食べられています。さらに昨年には、カップラーメンは地球を飛び出し宇宙食にもなりました。カップラーメンは人類の技術を日本人の知恵で詰め込んだ奇跡の食品なのです。
カップラーメンの断面 (中間保持構造)  そんなカップラーメンの秘密を探るため、矢野さんが大阪にあるインスタントラーメン発明記念館を訪ねました。そこで矢野さんは、カップラーメンの断面が見られる模型を発見。なんと麺が容器の真ん中に浮いているのです。
 一体どういうことなのでしょう?実はこれ、中間保持構造といい、麺がカップの底から浮いていることで輸送の時の振動から守られ、壊れにくくなるための工夫なのです。また、カップを開けたときに、具が近くなって美味しそうに見える効果もあるのです。さらによく見ると、麺は上にいけばいくほど密度が高くなっています。これは疎密めん塊構造(そみつめんかいこうぞう)といいますが、この構造にはどんな秘密が隠されているのか実験してみました。上部の密度が高く下はスカスカの疎密めん塊構造の麺と、密度が高く均一の麺それぞれにお湯を注ぎます。3分後、疎密めん塊構造の麺はほぐれていましたが、詰まっている方はガチガチで、食べてみると芯が残っていました。実はカップラーメンを開発する時、最大の問題は、麺の密度が高いと中心部までお湯の熱が伝わらないという事だったのです。そこで上の麺の密度を上げ、下の密度を下げることでお湯が対流をおこしやすくなり、まんべんなく熱が行き渡るようになったのです。さらにこの容器には保温性と断熱性を高めるために空気がたくさん含まれているという工夫もなされています。

所さんのポイント
ポイント1
カップラーメンの疎密めん塊構造とは、上の麺の密度は上げ、下の麺の密度を下げることでお湯が対流して熱が行き渡る画期的な発明だった!

 さて、お湯をかけるだけで食べられるカップラーメンの麺は、現在日清の会長である安藤百福さんが、10年の試行錯誤の末生みだしたものなのです。安藤さんは麺を天日干ししたり火であぶったり、燻製や塩漬けにしたりなど、ありとあらゆる手段を試しては失敗を繰り返していました。そんなある時、奥さんが天ぷらを揚げているのを見て閃き、麺を油で揚げるのを試したところこれが大成功!こうして、お湯だけで戻り、長期保存がきく麺が出来上がったのです。油で揚げる前の麺の断面の顕微鏡写真をみると、中は詰まっていますが、油で揚げた麺の断面は、水分が飛びそこに穴が空いているのが見えます。この穴にお湯が入ると麺が戻るのです。しかし、一度にたくさんの麺を揚げると、密集してくっつき麺全体がうまく揚がらないという新たな問題が発生しました。そこで、安藤さんは麺に隙間を作るために縮れさせることを思いつきました。麺に隙間が出来ていればくっつかずに均等に揚げられるというわけです。だからほとんどのカップラーメンの麺は縮れているのです。

 ところで、カップラーメンのもうひとつの主役といえばですよね。カップラーメンに入っている具は、形は小さいけれど、全部食材は本物です。でも、なぜこの具はお湯をかけただけで食べられるのでしょうか?安藤さんが目を付けたのは1950年代にイタリアで軍の携行食のために開発されたというフリーズドライという当時話題の新技術でした。カップラーメンに入っている牛肉でフリーズドライの工程を見てみると、まず具を氷点下30度の冷凍庫に入れ凍らせます。次に真空冷凍乾燥機に入れ、真空状態でおよそ1週間乾燥させます。すると牛肉の水分は凍ったままの状態で気化し、ほとんどの水分が抜け、そこが空洞になります。ここにお湯をかけると空洞にお湯がしみ込み元の状態に戻るのです。さらにフリーズドライは栄養価が変わらずお湯をかければ見た目も元に戻るので、まさにカップラーメンにうってつけの加工技術だったのです。
フリーズドライ肉じゃが  では、どんな食べ物でもフリーズドライにできるのでしょうか?そこで佐藤アナが工場に色々な食材を持ち込み、フリーズドライにしてもらいました。所さんがまず試食したのは、しゃぶしゃぶの白菜と牛肉ですが、見事にお湯で元に戻り大成功でした。肉じゃがやプリンも成功、お寿司はいまいちという評価でした。しかし、みたらし団子は固いままで大失敗でした。実は練り物は、すりつぶされる際に組織が壊れていて、お湯で元に戻らないので、フリーズドライには向いていないのです。
 さて、なぜカップラーメンの待ち時間は3分なのでしょうか?専門家に伺うと、1分で戻る麺を作ることも可能ですが、その分伸びるのも早くなり、食べている間に麺が伸びてしまうのだそうです。3分で戻る麺は、ゆっくりお湯を吸収するので食べている間に麺が伸びすぎることはありません。さらに、カップラーメンは3分以内に美味しく食べられるのが大きな魅力だそうです。ならば、人は何分までならちゃんと待っていられるのでしょうか?それを確かめるためにこんな実験をしてみました。脳波計を使って、集中力が下がり始めた時に出てくるシータ波が現れるまでの時間を計り、人が物事に集中できる限界を調べます。事前に実験の内容は知らせず3人の一般の方に集まってもらいました。まず3人に脳波計をつけ、目を閉じてもらい脳波を安定させます。そして脳波が安定してきたところで、「眼をあけてしばらくそのままでじーっとしていてください。」とだけ指示をして、部屋に1人放置します。この状態のままいつ集中力が切れ、シータ波が観測されるかをチェックします。すると、1分経過しても変化はありませんでしたが、2分を経過した頃からシータ波が少し出たり消えたりし始めました。そして3分を経過すると、3人の集中力は途切れ指示が守れなくなってしまいました。つまり、カップラーメンの3分という待ち時間は、人間心理にかなった時間設定だったのです。

所さんのポイント
ポイント2
カップラーメンの待ち時間が3分なのは、人間の集中できる限界の時間に設定されているからなのだ!




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