甘さ倍増
トウモロコシ
第891回 2007年7月15日
日本の夏を代表する野菜「
トウモロコシ
」。今、トウモロコシは地球温暖化対策に有効なバイオ燃料の原料としても注目を浴びています。そこで今回の目がテンは、美味しい夏野菜トウモロコシを科学します。
実は、トウモロコシを世界で一番輸入している国は日本なのです。その量は年間約1600万トンで国民1人あたりおよそ130kgにもなります。しかし、トウモロコシは食べられるだけではなく、主に家畜飼料や、デンプンの「コーンスターチ」として利用されています。
さて、早速矢野さんはトウモロコシの産地を訪ねてみました。
朝4時
に畑に行ってみると、なんとすでに
収穫が行われていました
。どの農家も手作業での収穫を早朝から始めるそうで、
6時には終了
してしまいました。
一体何故こんなに早く終わるのでしょう?
トウモロコシはこの後集荷場へと運ばれ、巨大な装置の中に入れられて9.5度に冷やされました。するとすぐ保冷車に積み込まれ、朝の7時に千葉を出発して9時には東京近郊のスーパーに並んでいたのです。つまり開店時間に間に合うように朝早く収穫していたのかと思いきや、
実はもっと深い理由があった
のです。
早朝に畑でもぎたてのトウモロコシと、夕方にとったトウモロコシを食べ比べ
てみた矢野さんは
朝食べたとれたてのほうが甘いと感じた
のです。
そこで、町行く人に、朝夕にとれた2種類のトウモロコシを試食してもらったところ、
30人中29人が朝とったトウモロコシが甘いと答えました
。実際に糖度を測定しても朝の方が高かったのです。その秘密は、
トウモロコシが実を成長させるメカニズム
にありました。日中、
気温が高くなると、実を成長させるために呼吸が活発になります
。この時、
実に含まれる糖分がエネルギーとして使われてしまいます
。しかし、
夜になり気温が下がり呼吸が減少すると、日中に葉で作られた糖分が実に送り込まれ蓄えられていく
のです。だから、朝が一番甘いのです。
トウモロコシは、糖分を実に蓄えた一番甘い状態で出荷するため、早朝に収穫されていたのだった!
しかし、朝どりのトウモロコシを買ったからと言って安心はできません。実はトウモロコシはもがれた後も生きて呼吸をするため、熱が発生し温度が上がってしまいます。その時エネルギー源として糖分を使ってしまうため甘みはどんどん落ちていきます。ですから
買ったらすぐ調理をすることが美味しく食べる基本
なのです。
ところで
トウモロコシの粒は何粒
あるのでしょうか?そこで粒を取り外し一粒ずつシートに置き、数えてみました。するとそばで見ていた農家の方が「毛と粒の数は全く同じだ」と言うのです。そこで毛を切って一緒に数えてみると、
毛の数と粒の数は598で完全に一致
したのです。若いトウモロコシを剥いてみると、全ての毛と粒は繋がっていました。実は
トウモロコシの毛は
、将来実が付く下の方に生えている
雌しべ
なのです。そして、上の方にある稲穂のような
雄しべから降ってくる大量の花粉
が毛の先端部分に付着し、そこから
花粉管を伸ばし、受精が完了して実ができます
。だからトウモロコシは毛の数だけ粒が出来るのです。
ちなみにこの毛を切ってみると、毛はどんどん伸びなんと
24時間で5.5センチも伸びた
のです。トウモロコシは雌しべである毛を切られると花粉がキャッチ出来なくなるので、
なんとか受粉しようとして、切られても切られても伸びてくる
のです。
さて、家庭でトウモロコシを食べるとき、定番は
茹でる
という調理法ですが、気になるのは
茹で時間
ですよね。そこで
主婦の方6人にいつもと同じように茹でてもらい、その時間をチェック
しました。結果は一番早い人で5分45秒、一番遅い人が9分50秒、
平均で約8分
でした。同じことを、
トウモロコシ農家の主婦の方3人
にやってもらうと、
全員が約3分
と、一般の方より短い茹で時間でした。そこで、一般の主婦の皆さんに茹で時間3分のトウモロコシを試食してもらったところ、3分でも火が通っていて、甘いと言うのです。
糖度を比較
してみても確かに
3分の方が高かった
のです。実は
茹で時間が長いほど糖分が水に溶け出してしまう
のです。そして火が通る最短の時間が3分だったというわけなのです。
トウモロコシは茹で時間が長いほど糖分が水に溶け出してしまうので、もっとも美味しい茹で時間は3分なのだ!!
ポップコーンを作るのは、その名も
「ポップコーン」という品種
のトウモロコシを使います。しかし、これでは物足りないという矢野さんは、食べ応えのある
巨大ポップコーン作りに挑戦
してみました。
「ジャイアントコーン」
という貴重な品種のトウモロコシを入手し、早速作ってみると、弾ける音はしたのですが、ただ焦げて皮が割れただけで失敗してしまいました。実は、
外側が硬いデンプンで覆われている種類しかポップコーンにはならない
のです。加熱することにより中では水分が蒸発、圧力が強くなり、そして
硬いデンプンが圧力に耐えられなくなると破裂
してポップコーンになります。一方
ジャイアントコーンは部分的に柔らかいデンプンがあるため水分が逃げ破裂しなかった
のです。そこで秘密兵器の
ポン菓子機
が登場。この機械は圧力釜を使って膨らんだお菓子を作る機械。これにジャイアントコーンを入れれば外から高い圧力がかけられるので硬いデンプンがなくても圧力は逃げません。ポン菓子機からものすごい音と勢いで出てきたジャイアントポップコーン。
スタジオで試食した所さんは微妙な反応ではありましたが巨大ポップコーン作りは一応、成功でした。